よくわかる!借入金の基本 | よくわかる!キャッシュフロー計算

よくわかる!借入金の基本

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よくわかる!借入金の基本

お金

できれば借金したくない。無借金経営がよいと考える経営者の方は多いのではないでしょうか。一方で、たとえば、大型の設備投資をするときなど借入がどうしても必要な場合もあります。

経営についてまわる資金調達の問題。その資金調達を考えるときに欠かせない選択肢が、金融機関からの借入です。金融機関から借入するときに、知っておきたい基本についてわかりやすく解説します。

1.なぜ借入が必要か

「できれば借入はしたくない」
そう考える経営者は多いことでしょう。

しかし、事業を大きくしようと考えたときに、手持ちのお金だけでは、使える資金に限界があります。事業を行う際には、商品の仕入れや材料の仕入れなどにお金が必要です。

商品をお客様に販売して、代金を受領し、手元に残ったお金だけで仕入れをしていたのでは、仕入資金に限界があり、売上を大きく伸ばすことは難しくなります。

また、設備投資をすれば、もっと売上が上がることが見込める。そんなこともあるでしょう。そのようなときに、使える手持ちの資金があればいいのですが、なかなかそうもいかない場合がほとんどです。

「設備投資をしたところで、すぐに売上が上がるとも限らないのだから、貯金が貯まるまで、設備投資は我慢しよう」

そんな考え方もあります。考え方としては堅実で立派です。ただし見方を変えると、設備投資をすれば得られたであろう売上を、貯金が貯まるまで先延ばしにするということになります。

少し大きな機械であると、貯金できるまで何年も待たなければなりません。ずっと好景気が続けばいいですが、不景気の時もあります。いつまでたっても貯金できないかもしれません。

もし、お金を借りることができるとすればどうでしょうか。

借りたお金を元手に仕入量を増やすこともできるでしょう。設備投資して、生産キャパを拡大することもできるでしょう。借りたお金を事業資金として使い、販売数量を増やすことが可能になるのです。

事業を行っていると、ずっと好景気が続くとは限りません。思ったようにうまくいかない時もあるでしょう。自己資金だけでの事業を行い、手元の貯金を取り崩してしまっている場合は、手元にもうお金がありません。

業績推移

借入の場合は、決められた分だけ返済し、事態を好転させるための手を打つことができます。

つまり、企業にとってお金を借りるということは、「お金」と「時間」の両方を借りるということなのです。

2.「直接金融」と「間接金融」

会社の資金調達にはいくつかの方法があります。大きくは、「直接金融」と「間接金融」の2種類にわかれます。この2つの違いは、調達するお金の持ち主の違いです。

「直接金融」とは、会社がお金の持ち主から直接調達する方法です。具体的には株式や債券などを指します。

一方の「間接金融」とは、金融機関を通じて、第三者のお金を調達する方法です。具体的には、銀行から借入することを指します。会社にとっては、銀行を通じて、預金者のお金を借りることになります。

「直接金融」と「間接金融」も会社から見ると、資金調達という意味では同じです。ただし、国内企業の99.7%を占める中小企業にとって、一般的であるのは「間接金融」の方です。

なぜなら、お金の持ち主にとっては、「直接金融」はその会社に直接に投資することになり、投資した会社が倒産した場合、お金が返ってこないリスクがあるからです。

よって、「直接金融」での資金調達が可能であるのは、上場企業や、信用力のある大企業が中心です。

「間接金融」では、金融機関が預金者から集めたお金を会社に貸します。万一、会社が倒産した場合でも金融機関がそのリスクを負います。預金者が損失を被ることは通常はありません。

お金の出し手が銀行にお金を預け、その集まったお金を銀行が利息を取って貸出することから、中小企業・小規模事業者にとって、利用しやすい資金調達方法であると言えます。

ただし、借入は、あくまでも「負債」です。「自己資本」と違って、必ず返済しなければならないものです。ですので、借入が多い会社は財務的に危険な会社と見なされ、信用力が低くなります。

また、実際に借入過多の会社では、返済不能になることも多いです。いくらまで借りてもよいのかという判断基準を持ち、返済可能な範囲内で借入をすることが必要です。

直接金融 間接金融
メリット ・出資の場合は、返済の必要がない
(社債は返還が必要)
・中小企業・小規模事業者でも利用可能。
デメリット ・中小企業・小規模事業者には利用が困難。(少人数私募債は利用されている)
・第三者からの出資の場合、第三者が株式数に応じた議決権を持つことになる。
・返済が必要。
・利息の支払いが必要。
・担保や保証人が必要な場合がある。
・借入過多の場合は信用力が低くなる。

3.借入金の限度額は?

借入を考えたときに、まず知りたいことは「自社はいくらまで借りられるのか?」ということでしょう。

お金を貸す側としては、できるだけリスクは取りたくありません。そこで、「これくらいまでは貸しても大丈夫だろう」という理論上の上限額を持っています。

決算書の「損益計算書」の中の「当期純利益」と「減価償却費」という項目を確認してみてください。

銀行などはこの2つの金額を合算したものを簡易的にその会社のキャッシュフローと見なし、この金額が返済原資であると判断します。

たとえば、当期純利益が40百万円、減価償却が10百万円とします。この会社が一年間に返済できる額は50百万円が上限です。返済の期間が3年なら、借入限度額は150百万円となります。

当期純利益+減価償却費=簡易キャッシュフロー
借入限度額=簡易キャッシュフロー×返済期間

(例)
40+10=50百万円
50×3年=150百万円

返済額がそれより大きくなると、キャッシュフロー以上に返済が必要ということになります。

簡易キャッシュフロー < 借入返済額

この場合、金融機関としては、貸しても返してもらえないのではないかと懸念します。そうなると、借入額を少なくする、または返済期間を長くするという検討が必要になります。

返済期間の目安としては、設備資金はその設備の耐用年数以内、運転資金なら長くとも5年くらいまでです。

もっとも、設備資金の場合に、多少返済が苦しくても、どうしてもその金額を借りなければ機械が買えない場合もあります。その場合は設備投資後の売上や利益の増加分を予想して、もっと借入ができないか検討することができます。

運転資金の場合は、何らかの事情があって売上入金が遅れる場合などは、その遅れている売上額が借入の条件となる場合もあります。

また商社など掛取引が多い業界などは、「売掛金+在庫―買掛金」で算出される所要運転資金額が借入の上限となります。

売掛金+在庫-買掛金=所要運転資金

一昔前は、不動産担保や保証人をつければ多額の融資を受けられるといったことがありました。ただし、バブル期の教訓や銀行などのお金の貸し手の安易な融資姿勢に対する社会的批判などが問題になったことから、最近は、「当期純利益」と「減価償却費」をもとにあくまで事業での返済能力を判断するという見方になっています。

4.融資を受けるときに確認すべき数字

融資を申し込んでも、金融機関が「返済の見込みがない」と判断した場合は、融資は実行されません。まず、決算書で赤字であれば、融資審査は厳しいものになります。キャッシュフローがマイナスでは返済できないだろうと判断されるためです。

ただし、「当期純利益」が赤字であっても、「減価償却費」を足すとプラスの数字になるのであれば、決算上は赤字でも実質黒字企業と見なされ、返済できるだろうと判断されます。

当期純利益+減価償却費=簡易キャッシュフロー

(例)△100+200=100 ← 実質黒字企業

また、借入においては、自己資本比率という指標も重要です。貸借対照表の「純資産÷総資産×100」で計算できる指標です。

自己資本比率=純資産÷総資産×100
資産の部 1,000 負債の部 600 自己資本比率=400÷1,000×100=40%
純資産 400
計 1,000 計 1,000

(※ 上場企業では、厳密には、「自己資本比率=(純資産-新株予約権-少数株主持分)÷総資産×100」で計算されています)

自己資本比率が、40%程度あれば、一般には問題ないと見なされます。ただし、自己資本比率の数値は、機械装置が多い製造業などは高くなりがちな一方、それほど固定資産がなくても済むような情報サービス業などは低くなりがちなど業種によっても差があります。

自己資本比率の数字は、事業状況によっても左右されます。

たとえば、事業用の土地や建物などについて、社長個人の資産を借りている場合は、自己資本比率は低くなります。また、起業間もないベンチャー企業などはまだ十分に利益が積み上がっていないので、自己資本比率は低くなります。

このような場合は、自己資本比率の数字が低くても、その事業に将来性があれば心配ありません。

ただし、「純資産」の数字がマイナスになっている場合は要注意です。純資産の数字がマイナスになる要因としては、主に2点あります。

一つは、赤字が続いたために、会社を立ち上げたときに株主から払い込まれた資本金等の純資産が食いつぶされているというケースです。もう一つは会社の財産と比較して借入が多すぎるケースです。

「純資産」の数字がマイナスの状態のことを「債務超過」といいます。会社を清算して、財産をすべて売却しても、借金しか残らないという意味です。理論上では会社が破綻している状況です。

正常な貸借対照表

資産の部 負債の部
純資産
債務超過の貸借対照表

資産の部 負債の部
▲純資産

このような債務超過の会社が借入の申し込みをしても、新規の借入の前に、すでに借入した借入金の返済計画が優先されます。債務超過の場合は、債務超過解消の具体的計画がなければ、追加の借入は困難でしょう。

(日本取引所グループは、債務超過となって1年以内に債務超過を解消できない場合は、上場廃止とするルールを定めている)

5.融資の申込ではどのような資料を準備すればよいか

融資の申込を受けた金融機関は、「この会社に貸してもいいか」という取引入口の判断と「貸したお金が何に使われるのか」という資金使途の判断を行います。

まずは決算書や試算表で順調に事業をやってこられているかどうか、いくらまで貸すことができるのかを確認します。

借入は「設備資金」と「運転資金」の大きく2種類に分かれます。さらに運転資金は「長期運転資金」、「短期運転資金(つなぎ資金)」にわかれます。

設備資金とは、機械や車を買う資金を指します。いくらの機械なのか、会社の事業と比較して妥当な規模と値段なのか、機械や車を買って、事業にどのような効果があるのか確認します。

旋盤

(実務上は、購入先からの見積書とパンフレットを提出します)

運転資金の場合は、設備と違って形がないものへの融資になるので、より一層、決算書や試算表の内容と返済計画が重視されます。

長期の運転資金の場合は事業計画の提出が必要です。短期の運転資金の場合は、資金繰り表等で借入の必要額・必要な時期・返済の計画を説明する必要があります。資料に不足がある場合は、資料提出後に追加資料が必要になる場合もあります。

電車の広告などでよく見かけるノンバンクの事業ローンなどはこのように厳密な審査を行うわけではなく、比較的、自由な資金使途で融資相談にのってくれます。ただし金利はやや高めのようです。

6.確実に返済するために

借入とは本来、事業をもっと成長させるために行う前向きな資金調達です。

もっと利益をあげるための設備投資の設備資金や、仕入代金を支払ってから、売上が増えて販売代金を回収するまでの運転資金などです。

借りたお金を確実に返済するためには、借りるときに「なぜ借りるのか」、「どうやって返すのか」をしっかり計画することが一番重要です。

金利が安くなり、借入に対する支払利息負担が少なくなったからといって、目的もないまま「何となく借りておこう」では返済計画が疎かになります。

借入には目的があるはずです。100(百万円)の借入をして、100(百万円)の機械を買う。あるいは、100(百万円)の売上が入金されるまで100(百万円)を借入するといった具合です。

借入と借入使途の値打ちが同じであればバランスがとれており、貸した金融機関側としても返済に心配がないと言えます。

借入したお金を銀行口座に放置し、使わないままとなっている会社もあります。このような場合、知らず知らず、少しずつ支払いなどに使ううちに、借入だけ残ってしまうケースがあります。

現金がなくなり借入だけが残ると、極端な話、財産よりも借金が上回る先ほどの債務超過につながりかねません。別口座に移すなどして、しっかりお金の管理をすべきでしょう。

7.返済できなくなったときは?

経営は常にリスクと背中合わせです。事前にいくら周到に計画した借入であっても、事業環境の変化によって、返済できなくなる場合もあります。

会社は、借入金の返済だけを考えればいいわけではありません。仕入先に仕入代金も支払う必要があります。従業員に給与も支払う必要があります。社会保険料や税金の支払いも必要です。

もし返済が困難になりそうな場合、早めに会社全体の支払いを見直し、資金不足の原因を確認しましょう。返済できなくなる原因の多くは売上減少です。

売上の回復が今後、見込めるのか見込めないのか、部署・部門ごとにしっかり見極める必要があります。必要であれば、赤字部門からの撤退などを検討します。

さらに経費の削減ができないか、土地などの財産で売却してキャッシュに換えられるものがないかなど十分検討したうえで借入した金融機関に相談しましょう。

今後の改善計画がしっかりしたものであれば、金融機関は返済額の軽減などを検討してくれます。返済額を一時的に軽減するなどの返済条件の変更を「リスケジュール」(省略して「リスケ」)と言います。

ただし、リスケはあくまでも事業が改善してから返済する前提での一時猶予策です。借りたものは必ず返済するという認識のもと借入することが必要です。

※銀行借入の種類については以下の記事もご参照ください。