消費税は、消費者にとって、買物をするたびに支払う身近な税金です。
一方で、企業からすると、金額も大きく、キャッシュ・フローにも影響する税金と言えるでしょう。
消費税が日本に導入されたのは、1989年の竹下内閣のときでした。
当時の税率は3%でした。
その後、1997年に橋本内閣によって5%に引き上げられ、2014年の安倍内閣によって8%になりました。
2019年10月からは10%です。
導入から30年後に、3%から10%に税率がアップしたことになります。
この消費税のしくみや計算方法、会計処理についてわかりやすく解説します。
Contents
1.消費税とは
・消費税とは
消費税とは、どんな税金でしょうか。
消費税とは、物を買ったときやサービスを受けたときに、その値段に上乗せして支払う税金のことです。
買物の額に応じて、税額が決められることから、高い買物をする場合は、高くなる税金です。
たとえば、スーパーで買い物をしたときを考えてみます。
レジで精算するときに、商品の代金と合わせて、スーパーに消費税を支払います。
スーパーに支払った税金は、スーパーが国に納付します。
つまり、消費税は負担する人と納付する人が異なる税金です。
このような税金のことを「間接税」といいます。
納付する企業のことを「課税事業者」といいます。
・仕入税額控除とは
では、スーパーは、消費者から預かった消費税を全額、国に納付するのでしょうか。
スーパーなどの課税事業者は、売上とともに受け取った消費税をそのまま全額、納付するわけではありません。
その理由は、スーパーが仕入をするときにも消費税を支払っているからです。
課税事業者は、売上分の消費税額から仕入分の消費税額を引いた金額を国に納付します。
このように、仕入分の消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。
ただし、仕入税額控除とするためには、要件があります。
仕入税額控除の要件とは、仕入が課税仕入(消費税が課税される取引)であることです。
課税仕入に該当しない取引の場合は、仕入税額控除の対象となりません。
では、消費税の課税、不課税は何で判断するのでしょうか。
2.消費税の対象
消費税の対象となる取引とは、以下の4つの要件を満たす取引です。
① 国内における取引であること
② 事業者が事業として行う取引であること
③ 対価を得て(有償)で行う取引であること
④ 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること
この4つ要件を満たす場合に、消費税が課税されます。
これを「課税取引」といいます。
・不課税取引とは
では、上記の4つの要件を満たさない取引はどうなるのでしょうか。
上記の4つの要件を満たさない場合は、消費税の対象外となります。
これを「不課税取引」といいます。
① 国外取引は、国内において行うものではないため「不課税」です。
② 従業員への給与は、雇用契約にもとづく支払いであり、従業員が事業として行っているわけではないため「不課税」です。
③ 寄付金・祝金・補助金などの無償の取引は、対価を得て行う取引ではないため「不課税」です。
④ 保険金や共済金などは資産の譲渡ではないため「不課税」です。
・非課税取引とは
課税取引の場合であっても、消費税の対象とならないことがあります。
具体的には、課税取引の要件に当てはまるものの、消費の予定がなかったり、社会政策的な配慮から課税が適当でないと判断された場合です。
これを「非課税取引」といいます。
たとえば、
・土地の譲渡、及び貸付け
・有価証券の譲渡などの取引
・預貯金や貸付金の利子
・保険料
・郵便切手類・印紙・証紙などの譲渡
・商品券・プリペイドカードなどの譲渡
・国等が行う一定の事務(登記、登録、検定、特許、公文書の交付など)に係る行政手数料
・社会保険医療の給付
などが非課税取引です。
非課税取引の場合、仕入税額控除は適用されません。
・輸出免税取引とは
消費税は日本の消費者が負担する税金です。
消費者が外国の消費者の場合は、対象外です。
消費者が外国の消費者であるために、消費税が0%になる取引のことを「輸出免税取引」といいます。
たとえば、商品の輸出取引・輸出類似取引・国際輸送取引・国際通信などです。
また、空港などにある免税店でも、消費税は免税となっています。
その理由は、免税店での買い物は、「国内取引」ではあるものの「そのまま海外に持ち出して海外で消費されることを前提としている」ためです。
免税取引は、発生した消費税が0%になる取引です。
そのため、仕入税額控除が適用され、消費税が還付されます。
・免税事業者とは
免税事業者とは、消費税の納税を免除される事業者のことです。
免税事業者の要件は
・事業開始後2年以内であること
・基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以内であること
の2点のうちいずれかを満たすことです。
まず、事業を開始して2年間は免税事業者です。
事業開始後2年を経過しても、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者です。
課税事業者になった場合でも、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合は、届け出により翌々事業年度は免税事業者となることができます。
・課税期間とは
消費税の計算期間を課税期間と言います。確定申告の対象となる期間のことです。
個人の場合は、1月1日から12月31日までです。
法人の場合は、それぞれの法人が定めた事業年度です。
また、納税義務判定の基準となる期間を基準期間といいます。
個人であれば前々年、法人であれば前々事業年度です。
消費税の対象となる売上高を「課税売上高」といいます。
課税事業者か、免税事業者かについては、基準期間での課税売上高によって判定します。
3.消費税の計算方法
消費税額の計算方法としては、いくつかの方法があります。
・全額控除
「課税売上が事業の95%以上」かつ「対象期間の課税売上高が5億円以下」の事業者が該当します。課税仕入にかかる消費税を全額控除します。
・個別対応方式
「課税売上割合が95%未満」かつ「対象期間の課税売上高が5億円を超える」の事業者が該当します。
課税仕入をそれぞれ
・課税売上にかかる課税仕入
・非課税売上にかかる課税仕入
・両方に共通する課税仕入
に区分し、仕入税額控除の金額を個別に計算する方法です。
それぞれ
・「課税売上にかかる課税仕入」は「全額控除」
・「非課税売上にかかる課税仕入」は「控除なし」、
・両方に共通する課税仕入」は「課税売上割合相当額を控除」
します。
・一括比例配分方式
「課税売上割合が95%未満」かつ「対象期間の課税売上高が5億円を超える」の課税事業者が該当します。課税仕入を一括で計算し、課税売上割合をかけ算して算出します。
4.簡易課税とは
簡易課税とは、例外的に簡易的に消費税額を計算する方法のことです。
簡易課税を選択できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の小規模事業者です。
簡易課税を選択するためには、事前に届け出る必要があります。
簡易課税の場合、課税売上高の税額に仕入率をかけて、仕入税額控除を計算します。売上高のみで、消費税額の計算ができることから、計算が簡単な点がメリットです。
課税期間の課税売上高が5,000万円を超えた場合、翌々事業年度は、簡易課税ではなく、原則通りの計算になります。
5.消費税等の会計処理
消費税の会計処理には「税込経理方式」と「税抜経理方式」があります。
消費税額を売上や仕入に含めて処理する方法を「税込経理方式」といいます。
消費税額を売上や仕入に含めないで区分して処理する方法を「税抜経理方式」といいます。
「税込経理方式」にするか、「税抜経理方式」にするかは、事業者が自由に決めることができます。
・「税込経理方式」
「税込経理方式」のメリットは、取引の都度、税額計算を行う必要がなく、処理が簡単なことです。
一方で、消費税額が売上や仕入に含められているため、納付税額が見積もりにくいというデメリットがあります。
免税事業者の場合は、消費税の納付義務がないので「税込経理方式」を選択します。
※ 1,000千円(税込1,080千円)の商品を仕入れたとき
(借)仕入 1,080千円 / (貸) 現金 1,080千円
※ 1,000千円(税込1,080千円)の売上があったとき
(借)現金 1,080千円 / (貸) 売上 1,080千円
税込経理方式では中間納付したときに「租税公課」で仕訳します。
決算時の仕訳はありません。
※ 消費税の中間納付額100,000円を支払ったとき
(借) 租税公課 100,000円 / (貸) 現金 100,000円
※ 決算時 仕訳なし
・「税抜経理方式」
「税抜経理方式」は、仕入に含まれる消費税は「仮払消費税等」、売上に含まれる消費税は「仮受消費税等」として、売上や仕入と消費税額を区分します。
消費税専門の勘定科目を用いるので消費税納付額が見積もりやすいこと、また、正確な売上総利益を知ることができるというメリットがあります。
一方で、取引の都度、税額計算を行うため、処理が煩雑な点がデメリットです。
※ 1,000千円(税込1,080千円)の商品を仕入れたとき
(借)仕入 1,000千円 / (貸) 現金 1,080千円
仮払消費税等 80千円
※ 1,000千円(税込1,080千円)の売上があったとき
(借)現金 1,080千円 / (貸) 売上 1,000千円
仮受消費税等 80千円
税抜経理方式では、中間納付をしたとき「仮払金」、「仮払消費税等」で仕訳します。
決算時には「仮受消費税」と「仮払消費税」を相殺し、差額は「雑収入」、「雑損失」で仕訳をします。
※ 消費税の中間納付額100,000円を支払った。
(借) 仮払金 100,000円 / (貸) 現金 100,000円
※ 決算時に、仮受消費税等は350,000円、仮払消費税等は150,000円、確定納付額は80,000円であった。
(借) 仮受消費税 350,000円 / 仮払消費税等 150,000円
仮払金 100,000円
未払消費税等 80,000円
雑収入 20,000円
・消費税のキャッシュ・フロー計算書上の取り扱いは
消費税のキャッシュ・フロー計算書上の取り扱いは
・「税込み金額で表示する方法」と
・「税抜き金額で表示する方法」
があります。
選択した方法は継続して適用する必要があります。
また、消費税の納付や還付によるキャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローの区分に
・消費税納付額は未払消費税等の増減額として、
・消費税還付額は未収消費税等の増減額として
記載します。
6.消費税等の申告と納付
課税事業者は、決算日の翌日から2ヶ月以内に税務署に消費税の確定申告書を提出し納付をします。