月次決算とは – よくわかる!月次決算の基本

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月次決算とは – よくわかる!月次決算の基本

月次決算の早期化

月次決算とは何でしょうか。
通常の決算とはどのように異なるのでしょうか。
わかりやすく解説します。

1.月次決算とは

月次決算とは、毎月の会計処理を締めて、財務数値を取りまとめ、貸借対照表・損益計算書などの財務諸表を作成することです。

いわゆる「決算」は一般に、会計年度末の年次決算を意味します。それに対して、月次決算は毎月の成果報告のようなものです。企業ごとにそのやり方は大きく異なります。

ある程度の規模感の会社でしたら、月次決算を行っていることでしょう。

中小規模の企業では、リソース不足や社内の体制の不備などから、月次決算に辿りつけないことがままあります。

たとえば、経理の人員が不足しているなどです。管理部門に人を増やさない経営方針のために、総務や人事などあらゆることをやらされて、月次決算まで手が回らないといった状況です。

また、経理にある程度の人員がいたとしても、営業部門や工場などの現場から適切な会計数値が回ってくるとは限りません。経費精算を例に考えても、適切な時期に間違いのない資料が流れてくることは多くの会社で稀ではないでしょうか。

数字がおかしい

月次決算は、経理が主体的に実行するものですが、その制度と完成までのスピードには、社内全体の管理体制のレベル感が大きく反映されるものです。

2.月次決算の目的・活用方法

では、月次決算の目的は何でしょうか。

月次決算の目的は、毎月の経営成績を早期に分析、検討して、経営会議などで協議し、早急に対応策を実行することです。

このため、月次決算の重点項目は、貸借対照表ではなく、損益計算書の項目になります。月次の売上・利益を迅速に把握して、次の経営の一手を打つためです。

年度決算は、各会社によって決算月が異なるため、すべての会社が同一の時期になることはありません。

反対に、月次決算に関しては、どの会社も月末に締めているため、単純比較をすることができます。

競合他社との比較を行うことは大変、有意義です。売上や利益だけでなく、原価や経費の比較を行うことで、自社の強みや弱みを理解することができます。

毎月の締め処理によって、適時適切に自社の状況を把握し、弱い部分を補填していくことで、経営の危機を早めに察知、回避することができます。

月次決算は、経営面以外でも大きな意義があります。各部署での活用方法としては、以下があります。

① 営業部門:売上の向上や各メンバーの人事評価とフィードバックに繋がる。
② 開発部門:開発中の案件の進捗や費用の発生状況をモニタリングできる。
③ 管理部門:経営活動の数値の集計を効率的に行える。

それぞれについて説明します。

① 営業部門:売上の向上や各メンバーの人事評価とフィードバックに繋がる

営業部門の活動は、主に顧客との交渉です。営業部門の活動の結果、受注すれば、契約書や請求書が発生します。ところが、各営業メンバーは意外と会社全体の売上を把握していないものです。

その理由の一つには、そもそも自分の実績しか興味がない、ということもあるでしょう。また、会社として正確な売上数値を共有していないことも往々にしてあります。

実績値の適時把握

特に、営業の責任者があまり数字に強くないために、見積値のみで会議を続けて、過去の実績値での発表や評価を行わない場合があります。

実績値だと低くなるため、ゲタを履いている見積値の方が都合が良いという心理も働くのでしょう。

このような状況に陥ると、営業メンバーが会社の実態を把握できないことになります。その結果、経営危機を察知できずに、緩やかな営業活動に耽ってしまうことも起こり得るのです。

実際の数値を適時把握できていたら、良くない状況で挽回しようと行動も変わります。

実績値の適時把握ができる

人事評価への活用

また、正確な数字を共有できていないことによって、人事評価が曖昧になります。このような状況下では、驚くことに好き嫌いなどのイメージで評価が行われやすくなります。

実際に成績を残した人が評価されず、なんとなく良さそうな人が評価されてしまうと言ったことが起こります。そうなると、社内の雰囲気は悪化します。営業のエースの離脱にも繋がります。

結果として、短期的にも中長期的にも売上の減少が起こり、会社の経営危機に繋がります。

② 開発部門:開発中の案件の進捗や費用の発生状況をモニタリングできる

開発部門は、どのように製品を作るかということに注力します。

そのため、事前の計画段階では、コストや在庫を認識するものの、プロジェクトが進むにつれて、コスト認識や在庫認識は一般に低下しがちです。

開発部門のミッションが「どのようにモノづくりに取り組むか」であることを考えると、ある程度は仕方のないことかもしれません。

しかし、生産工程において、コストや在庫の認識が低く、コスト増のまま活動を続けたり、在庫増につながる活動を行ってしまうと、経営活動として失敗です。

月次決算を行うことによって、毎月の原価計算や棚卸しを行うこととなり、経営数値に対する進捗報告を行うことができます。

メーカーや小売業など、原価計算や在庫が発生する業種にとっては、原価や在庫のコントロールは、重要な経営課題の一つです。

③ 管理部門:経営活動の数値の集計を効率的に行える

管理部門の通常業務は、煩雑かつ広範囲になりがちです。

その守備範囲は意外と広く、各部署の仕事に直接、関係すること以外は、すべて管理部門が担当する場合が多いです。

各部署で適切なオペレーションが成立している場合は、管理部門に適時適切な数値の報告が行われます。しかし、各部署でのオペレーションが確立されていない場合は、管理部門が他部署に振り回されやすくなります。

このような状態が続くと、経営活動に関係する数値を迅速に集計することは難しくなります。また、網羅的に拾うことも困難です。

月次決算を適切に行い、各部署のオペレーションを確立させることは、結果的に管理部門の業務の効率化にもつながるのです。

3.月次決算の手順

では、実際に月次決算はどのように行うのでしょうか。
月次決算には、大きく分けて、次の4つのフェーズがあります。

① 貸借対照表の項目の月末残高を確認
② 損益計算書の項目の月中の発生状況の確認
③ 消費税の判定の確認
④ 決算整理項目の確認

それぞれについて説明します。

月次決算の手順

① 貸借対照表の項目の月末残高を確認

貸借対照表の項目には、資産である現預金や売掛金、負債である買掛金や未払金、借入金などがあります。

まずは現預金を確認します。金庫の現金を確認したり、通帳の残高と会計ソフトの金額が合っているかを確認します。

次に、売掛金や未収入金など、今後、入金される項目を確認します。貸し倒れにならないように、顧客とコミュニケーションが取れているかまで、フォローできるとなお望ましいです。

その後は、買掛金や未払金など、今後、支払が発生する項目を確認します。実際に発生していない費用が存在しないかどうか、請求書などのエビデンスをもとに確認します。

また、銀行借入金がある場合は、元本の返済を反映できているか確認します。資本家等から投資を受けた場合は、純資産が変動するため、同様に確認します。

その他に、前払金や前受金などのいわゆる経過勘定が適切に期間配分されているかについて確認します。前払金や前受金などは使途不明金になりやすいので、社内や外部の監査でよくチェックされる項目です。

② 損益計算書の項目の月中の発生状況の確認

損益計算書の項目は非常にシンプルです。大きくわけて、売上と費用、その2つです。

売上は当月中に発生し、検収まで終わっているものを計上します。物品販売の場合、売上計上するタイミングにはいくつかの基準があります。

出荷時に売上計上する出荷基準、納品のタイミングで売上計上する納品基準、顧客による検収完了時点で売上計上する検収基準です。納品基準は、引渡基準という場合もあります。

費用に関しては、自社がサービスを利用した時点を起点をしていることが多いです。

売上、費用については、当月中に発生したものかどうか、という期間のズレがないかを確認します。また、漏れがないかどうかという網羅性の検証も必要です。

③ 消費税の判定の確認

貸借対照表・損益計算書の各項目に問題がない場合は、損益計算書の項目の消費税の判定を確認します。

消費税には、課税・非課税・不課税・免税と4つの区分があります。各明細をそれぞれに区分します。

昨今、Google や Slack などの海外の SaaS のツールなどが使われることが多くなっています。これらのツールについては、消費税が課税されるかどうかが論点になりやすいです。

この論点は非常に複雑なため、顧問税理士に確認をすべきポイントです。

④ 決算整理項目の確認

諸々の確認が終わったら、後は減価償却や引当金の当月の計上を行います。

毎月行っていれば比較的、作業の工数はかかりません。ただし、引当金などは見積り値も含まれるため、その点については、注意が必要です。

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4.月次決算を早期化するメリットとは

では、月次決算を早期化することのメリットとしては、何があるのでしょうか。

月次決算を早期化することのすることのメリットは大きく下記の3点です。

① 経営の意思決定を早めることができる。
② 会計処理のエラーを早期に発見できる。
③ 会社の業務オペレーションが向上する。

① 経営の意思決定を早めることができる

月次決算の目的は、毎月の経営成績を早期に分析、検討して、経営会議において協議し、早急に対応策を実行することでした。

肝心の経営数値の発表が遅くなると、この経営会議の開催が遅くなります。その結果、経営の意思決定が大きく遅れることになります。

早期に対応できれば、問題が小さなうちに手を打てたものが、対応が遅くなると、問題も大きくなりがちです。早期に実績値を固め、予算との乖離や異常値の分析を行い、経営会議において、十分な議論を行うことが重要です。

月次決算の早期化で、経営の意思決定を早めることができるようになります。

② 会計処理のエラーを早期に発見できる

仕訳数が膨大な数の場合、どうしても、いくつかの誤りが発生します。重要なのは、エラーの発生自体ではなく、エラーを早期フォローできる体制があるかどうかです。

月次決算を早めることができれば、早めに会計処理の整合性をチェックすることができるようになります。その結果として、会計処理の精度も上がることになるのです。

③ 会社の業務オペレーションが向上する

月次決算の早期化は、会社全体の業務効率化が行われなければ、達成できません。

そのため、月次決算の早期化を目指す過程で、あらゆる業務課題に取り組むことになります。

業務課題の一つ一つが月次決算の遅延の原因となっている場合、課題を解決していくことで、自ずと業務が効率的になります。

以上、月次決算の早期化のメリットについて説明しました。

つまり、月次決算を早期化することで、経営の質の向上が可能になるということです。ただし、単に処理が早いということではなく、適切な手順で、かつ、必要十分な情報を網羅できていることが条件になります。

月次決算の早期化