財務3表の理解が深まる「財務3表一体理解法」・「財務3表一体分析法」(國貞克則) | よくわかる!キャッシュフロー計算

財務3表の理解が深まる「財務3表一体理解法」・「財務3表一体分析法」(國貞克則)

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財務3表の理解が深まる「財務3表一体理解法」・「財務3表一体分析法」(國貞克則)

財務3表一体理解法

「決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法」についての書評です。最後に「財務3表一体分析法『経営』がわかる決算書の読み方」についても簡単に紹介しています。

「財務3表一体理解法」を購入した経緯

中小企業診断士資格を持つ40代の自営業者です。今回紹介する本を手に取ったのは、まだ資格を取得する前、2009年ごろのことです。

当時の私は、簿記検定2級に合格したばかりでした。

財務諸表のしくみについて、一通りは理解しているものの、財務分析のしかた、各指標の活用法に対する知識が絶対的に不足していました。

そこで、入門書的な本を探すために、本屋でいくつか立ち読みしてみました。

その中で、説明が平易であると感じられたこと、新書なので価格も安いことなどの理由により、最終的に本書を購入しました。

紹介する書籍
・書籍名:「決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法」
・著 者:國貞 克則
・出版社:朝日新聞出版(朝日新書044)
・ISBN :9784022731449
・発売日:2007年5月11日

財務3表一体理解法

「財務3表一体理解法」の内容

まず、本書は2016年10月に増補改訂版が発売されています。

この書評は改訂前のものについてのものです。増補改訂版の内容とは異なるものであることを予めお断りしておきます。

本書の構成は次の通りです。

目次
第1章 会計は難しくない
・なぜ会計の苦手意識がなくならないのか
・六本木ヒルズの「人気講座」
・会社はどんな活動をしているのか
・財務3表はつながっている
・損益計算書と貸借対照表はセット
・簿記がわからなくてもOK
・できるビジネスマンになれる

第2章 財務3表の構造を知ろう
・損益計算書(PL)の「五つの利益」
・売上高比の棒グラフを作ろう
・コスト感覚が身につくPLの見方
・貸借対照表(BS)はなぜバランスするのか
・上から下へ現金化しやすい順番
・流動比率で会社を分析
・なぜ収支計算書ではダメなのか
・一つの取引を二つの側面から見る
・現金の動きと帳簿は一致しない
・キャッシュフロー計算書(CS)は会社の家計簿
・中小企業の資金繰り表と同じ構造
・「小計」の下の項目は何か
・間接法CSの考え方

第3章 財務3表一体理解法~基礎編
・財務3表の五つの「つながり」
・「漆器販売」の副業を想定
・一つひとつの取引ごとに財務3表を見る手法

1. 資本金300万円で会社を設立する
2. 事務用品を現金5万円で購入
3. パソコン一式を現金50万円で購入
4. HP作成を発注、外注費20万円を現金で支払う
5. 創立費30万円を「資産」に計上する

Coffee Break1 会計のロジックは美しい

6. 販売商品を現金150万円で仕入れる
7. 商品が現金300万円で売れる
7-2.商品を在庫に計上した場合の「理論」
8. ビジネス拡大へ運転資金500万円を借りる

Coffee Break2 財務会計と管理会計

9. 商品750万円分を「買掛」で仕入れる
10. 「売掛」で1500万円を販売
11. 買掛金750万円を支払う(「勘定合って銭足らず」に)
12. 売掛金1500万円のうち1000万円を回収する

Coffee Break3 「人間」は財務諸表に出てこない

13.役員報酬50万円を支払う(うち源泉所得税2万円は会社が一時預かる)
14.商品の発送費用100万円を一括払い
15.短期借入金500万円を返し、利息50万円を支払う

Coffee Break4 勘定合って銭足らず

16.「在庫100万円」を認識する
17.「減価償却費10万円」と「繰延資金償却6万円」を計上する
18.法人税300万円を計上する
19.「配当」と「純資産の部」を理解する

・実際の「つながり」はもう少し複雑
・株主出資が関係するのは2項目
・さまざまな内部留保
・「利益処分」を表で理解する
・「株主資本等変動計算書」とは何か

第4章 決算書を読み解くツボ
・収益性を見る財務分析指標の利用法
・安定性を見る分析指標の使い方
・PLとBSは操作されている
・架空売上と在庫の過大計上
・「未成工事支出金」や「仮払金」も曲者
・CSを見れば会社の戦略がわかる

第5章 新会計基準もわかる 財務3表一体理解法~発展編
・五つの新基準

1. 退職給付会計を適用し、「退職給付費用」5万円を計上する
2. 「貸倒引当金」を10万円計上する
3. 金融商品の時価会計①
「売買目的有価証券」10万円、「投資有価証券」20万円、「関係会社株式」30万円を現金で取得する
4. 金融商品の時価会計②
期末に評価損発生、それぞれの計上価額を引き下げる
5. 減損会計を適用、「固有資産」40万円を20万円に評価替え
6. 「自社株式」50万円を会社が現金で買い取る
7. 税法に基づいて法人税を計上する
8. 税効果会計を適用、会計上の「あるべき姿」で税額を表示する
9. 財務3表のつながりから「M&A」と「事業再生」のキーワードを理解する

・企業の合併と買収
・「のれん」の処理
・新株予約権
・債務放棄と債務免除益
・無償減資と有償減資
・DES(デット・エクイティ・スワップ)

おわりに

長めの前書きともいうべき第1章と、第2章は損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書についての解説です。

第3章では、企業の活動が財務諸表の数字に与える変化について例を挙げて説明しています。第4章は指標等を用いた簡単な分析について書かれており、第5章は第3章を発展させた内容となっています。

全体的に平易な文体で書かれているので、専門的な用語に煩わされることなく読み進めることができます。

企業のひとつひとつの活動について、それによって財務諸表がどのように変化するのかについて、いくつも例を挙げて解説しており、読者の理解を助ける内容となっています。

また、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を1つのセットとして、3表の関連性を丁寧に説明しようという著者の姿勢が随所に感じられます。

「財務3表一体理解法」のおすすめポイント

会計を学んで業務に生かそうとする場合、財務3表の関係、すなわち、それぞれの表に何が書かれていて何が書かれていないのか、お互いにどう影響し、補完しあうのかを理解することは必須であるといえます。

その意味において本書の内容はおすすめできるものとなっています。

ただ、本書はあくまでも入門書的な位置づけの本でです。ある程度会計に関する勉強をされた方は、「何をいまさら」という感想を持たれるかもしれません。

分析指標についても、大まかな紹介がしてあるのみなので、物足りなさを感じます。

また、筆者は「簿記・仕訳の基本的なことさえ分かっていれば、細かいルールを知らなくても会計を理解することができる(P18)」と述べています。

これについては私も100%同意です。

ただし、筆者の言うところの「基本的なこと」のレベルは思いのほかに高く、「簿記がわからなくてもOK(P17)」などという見出しとはうらはらに、本当に勉強をはじめたばかりの人が本書を読んで理解するのは難しいと感じます。

たとえば、本書では損益計算書、貸借対照表の仕組みについて20ページ以上にわたって説明がされていますが、内容は簿記の教科書に書かれていることと総じて差はありません。

これなら、図や練習問題が豊富なテキストで反復練習をしたほうが、仕組みそのものの理解は早いのではないかな、という気もします。

先程、入門書的な位置づけの本と書いたのと矛盾するようですが、本書の内容をスムーズに理解するためには、簿記3級程度の知識を持っていることが望ましいです。

結論として、本書は簿記の勉強をしたけれど、いまひとつ全体像が把握できていない人、どのように財務分析に活かせばよいのかわからない人が、次のステップへ進むためのつなぎとして読むには非常に適した本であるといえます。

本書を読了したのち、財務分析やキャッシュフローについての専門書を読めば、より容易に、かつ体系的に内容を理解することができるでしょう。

「財務3表一体理解法」は特にこんな人におすすめ

特に以下のような方に「財務3表一体理解法」をおすすめします。

・簿記の知識はあるけれど会計のしくみがいまいちよくわからない。
・財務・会計についての全体像が知りたい。
・企業分析をして株式投資等で役立てたい。
・中小企業診断士を目指しているけど、財務会計が苦手。

「財務3表一体分析法 『経営』がわかる決算書の読み方」

なお、同じ著者による、本書の続編ともいうべき書籍が「財務3表一体分析法 『経営』がわかる決算書の読み方」です。

「財務3表一体理解法」で財務3表の理解を深めた後に「財務3表一体分析法」読むことで、財務3表を分析して経営に活かす方法を知ることができるでしょう。

紹介する書籍
・書籍名:「財務3表一体分析法 『経営』がわかる決算書の読み方」
・著 者:國貞 克則
・出版社:朝日新聞出版(朝日新書174)
・ISBN :9784022732743
・発売日:2009年5月13日

目次
第1章 会計は難しくない
第1章 財務分析の基本ポイントを知ろう
第2章 まず会社の状況をザックリつかもう~基礎編
1. 1社1期分の財務諸表で「基礎データ」を把握する

会計プラスワン① バランスシートの本当の意味

2. 同業他社・業界標準と比較してみよう

会計プラスワン② 際立つマツダの戦略

3. 期間比較をすれば成長の軌跡がわかる

会計プラスワン③ 人も組織も苦しい時期を乗り越えてたくましくなる

第3章 多くの財務3表を見てセンスを磨こう~ドリル編
1. パナソニック vs.三洋電機 vs.シャープ~電機業界
2. 三越 vs.伊勢丹~百貨店業界
3. 吉野家 vs.すき家~飲食業界
4.ソフトバンク vs.NTTドコモ~携帯電話業界
5.ライブドア vs.楽天~インターネット業界

会計プラスワン④ ライブドアの錬金術を解明する

6.三菱商事 vs.三井物産~卸売業界
7.みずほ vs.三井住友+その他の業界の金融ビジネス~金融業界
8.財務分析のまとめ

第4章 実際に図表を作ってみよう~作図マニュアル編
1.オリジナルフォーマットの作り方
2.本書で使ったROEとレバレッジ比率について

会計プラスワン⑤ ROEと事業全体のプロセスとの関係

第5章 より理解を深めるための補足
1.「連結」がわかれば「少数株主持分」の意味もわかる
2.利益と配当とBSの関係
3.個人投資家にとって大切な指標

おわりに
参考図書

「財務3表一体分析法」も2016年に全面改訂版が発行されています。2016年の全面改定版では、事例企業が刷新され、以下の企業が取り上げられています。

三菱自動車・スバル・マツダ、日産、ホンダ、トヨタ、フォルクスワーゲン、NTTドコモ、ソフトバンク、アップル、ソニー、IBM、シャープ、パナソニック、東芝、アマゾン、ユニクロ、ニトリ、帝国ホテル、パレスホテル、DeNA、グリー

2007年の「財務3表一体理解法」は30万部、2009年の「財務3表一体分析法」は29万部突破と帯に書かれていますが、2016年版は、理解法、分析法ともに60万部突破とのことです。

両者ともに長く読み継がれているベストセラーと言えるでしょう。

財務3表一体理解法

2018年3月9日(中小企業診断士・自営業)