連結決算とは – よくわかる!連結決算の基本

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連結決算とは – よくわかる!連結決算の基本

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「連結決算」という言葉を聞いたことはありますか?

一定規模以上の会社での勤務経験がある場合は、「連結決算」という言葉を社内で耳にしたことがあるでしょう。反対に、グループ会社がないベンチャー企業や中小企業勤務の場合には、ふだん、あまり耳にしない言葉かもしれませんね。

連結決算とは何でしょうか。また、具体的な手順としては、どのようにすればいいのでしょうか。わかりやすく解説します。

1.連結決算とは

まずは、「連結決算」とは何であるかから、ご説明します。

連結決算とは、連結財務諸表を作る仕組みのことです。では、連結財務諸表とは何でしょうか。

連結財務諸表とは、親会社が親子関係にある会社すべての状況をまとめて、グループとして報告する財務諸表のことです。

連結財務諸表に対して、グループ企業を持たない会社の財務諸表のことを「個別財務諸表」や「単体財務諸表」と言います。

つまり、連結決算とは、企業がグループ会社を保有している場合に行う会計処理です。1社しかない場合には連結決算は発生しません。なぜなら、連結する対象の会社がないからです。

M&Aや子会社の新規設立によって、グループ会社が発生した際に、グループ全体の財務数値の把握のために連結決算を行うことになります。

2.連結決算が必要な理由

連結会計を行う目的は、企業グループ全体の財務数値を把握することです。連結会計を行わなければ、グループ全体の評価を適切に行うことができません。

ある企業グループの次のような例で考えてみましょう。

【例】
その企業グループ内で、A社は利益を大きく出しているけれど、B社は常に赤字状態だとします。そのB社の赤字の原因が、企業グループの費用をB社に集めているためだったとしたら、どうでしょうか。

A社は、費用をB社につけ替えたことで、利益を出していることがわかります。つまり、A社の業績をよく見せるためにB社は赤字になっているということです。連結会計であることで、そのような実態がわかるということです。

連結会計をしない場合、企業グループ内の各会社は、それぞれ個別の財務諸表を作成します。そのため、グループ企業同士の取引の関連性が見えづらく、いわゆる子会社への「飛ばし」と呼ばれるような粉飾決算が行われやすくなります。

投資家や債権者を保護するためには、粉飾決算がされにくい制度が必要です。そのための粉飾決算がされにくい制度が連結決算なのです。

また、グループ会社同士の取引では、お互いに利益を上乗せして売上を立てたとしても、実態としては、グループ内で転がしているだけになるため、本来は利益など発生していないこととなります。

このような見せかけの利益も、連結会計では引き抜いて集計することになります。すなわち、連結決算を行うことにより、企業グループの実態が見えてくるのです。

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3.連結決算の義務と対象

では、子会社がある会社はすべて連結決算を行う必要があるのでしょうか。実はそうではありません。

会社法に連結決算に用いる連結計算書類の規定があります。連結決算の義務と対象についても、ここで定義されています。

具体的には、以下のように定義されています。

・連結計算書類は、有価証券報告書を提出する大会社に作成義務がある(会444条第3項)。
・会計監査人設置会社では、任意で連結計算書類を作成することができる(会444条第1項)。
・なお、任意で連結計算書類を作成した場合であっても、連結計算書類は監査役及び会計監査人の監査を受けなければならない(会444条第4項)。

つまり、連結計算書類を作成する義務がある会社は、以下の2点を満たす会社ということです。

・有価証券報告書を提出している
・大会社

(1) 有価証券報告書とは

では、有価証券報告書とは何でしょうか。

「有価証券報告書」とは、上場企業など、有価証券を発行して投資家から広くお金を集める企業が、自社の情報を外部に開示するために作成する報告書です。略して、「有報」といいます。

株式投資を考えている人が、株を買おうとしている会社がどんな財務状況であるのかなど、会社の情報を確認するために見る書類です。

では、有価証券報告書を提出する義務がある会社とは、どんな会社でしょうか。

① 金融商品取引所(証券取引所)に株式公開している会社
② 店頭登録している株式の発行会社
③ 有価証券届出書提出会社
④ 過去5年間において、事業年度末日時点の株券もしくは優先出資証券の保有者数が1000人以上となったことがある会社(ただし、資本金5億円未満の会社を除く)

②の有価証券届出書とは、1億円以上の有価証券(株券や社債券など)の募集(新規発行)または売出しを行う際に、有価証券の発行者が金融商品取引法第4条・5条に基づき、内閣総理大臣(窓口は財務局)に提出することが義務づけられている書類のことです。

上記のような株式会社には、各事業年度終了後、3か月以内に有価証券報告書を金融庁に提出することが義務づけられています。

(2) 大会社とは

では、大会社とはどんな会社でしょうか。

大会社とは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社
のことです。

このように、上場していて、ある一定規模の会社は、子会社等を保有している場合に連結計算書類を作成して、連結決算を行う義務が発生します。

大会社

4.連結決算の手順

では、連結決算は、具体的にどのような手順で進めるものなのでしょうか。
連結決算の手順は、おおまかに下記のとおりです。

① 個別決算情報の収集
② 個別決算を合計し、連結調整前財務諸表を作成
③ 連結修正仕訳を作成
④ 連結財務諸表を作成

順番に確認していきましょう。

(1) 別決算情報の収集

まず、各子会社等の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)を集める必要があります。そして、単純に各会社の財務諸表を合算すれば良いわけでなく、グループ会社間の取引の情報を反映させなければなりません。

チェックが必要になるのは、製品・商品の期末在庫金額や固定資産などです。グループ内で計上している利益を控除して合算する必要があるため、関係する利益率も把握する必要があります。

(2) 個別決算を合計し、連結調整前財務諸表を作成

各会社の財務諸表を集めた後に、ひとまず連結調整を入れる前の合計を出します。ここでの注意点としては、たとえば

・海外にある子会社は外貨なので円換算しないといけない。
・決算月が親会社とズレている場合は調整をしないといけない。

などがあります。決算月のズレについては、3か月以内ならば許容されています。

(3) 連結修正仕訳を作成

個別の財務諸表を集めて、日本円に揃えて、決算月の問題もクリアしたら、連結修正仕訳を入れていきます。イメージはこんな感じです。

親会社の個別財務諸表+子会社の個別財務諸表±連結修正仕訳=連結財務諸表

連結修正仕訳とは、
・グループ内での取引で実際には利益になっていないものを除く。
・資本金と子会社等の有価証券を相殺する。

などです。なお、連結修正仕訳は翌期に引き継がれません。

連結修正仕訳としては以下などを行います。

・開始仕訳
・投資と資本の相殺消去
・取引高の消去
・未実現利益の消去
・貸倒引当金の調整
・税効果の調整

連結修正仕訳

開始仕訳とは

開始仕訳とは、前期までに行った連結上必要な仕訳を入れることです。開始仕訳の目的は、利益剰余金の前期末残高と当期首残高を合わせることです。

連結決算で行う連結修正仕訳は、個別の財務諸表に影響を与えないため、この開始仕訳を正しく行うことが連結決算の大きなポイントの1つです。

投資と資本の相殺消去とは

投資と資本の相殺消去とは、親会社が保有している関係会社株式と子会社等の資本金を相殺することです。

親会社が保有している関係会社株式と子会社等の資本金は、結局親会社の資金を移動しているに過ぎません。そのため、相殺しない場合には二重計上となり、連結財務諸表上の資本金が実態よりも過大になってしまいます。

取引高の消去とは

取引高の消去とは、親会社と子会社等で行った取引を相殺することです。

グループ内の企業間で売上を積めるとしたら、いくらでも好きなように売上を増やすことができてしまいます。それでは、企業グループの実態を正しく表した数字とは言えません。

会社と子会社等で行った取引を相殺することで、企業グループの実態を正しく表す数字とすることができます。具体的には、売上と売上原価、売掛金と買掛金を相殺します。

未実現利益の消去とは

未実現利益の消去とは、グループ内で取引された製品や商品に含まれている利益を控除することです。

たとえば、100万円の在庫があるけれど、20万円は実は利益分だったとします。この場合、在庫の実態はグループ内で80万円です。

差額の20万円は、下駄を履いてしまっている状態なので、実態を正確に表すためには、除く必要があります。

貸倒引当金の調整

貸倒引当金の調整とは、取引高の消去の際に売掛金が消された場合、これに付随する貸倒引当金を消すことです。

税効果の調整とは

税効果の調整とは、連結調整前に算出されている当期純利益と調整後では差異が出るため、それにより発生するズレの分だけ税額を調整するということです。

(4) 連結財務諸表を作成

連結修正仕訳ができれば、後は合算することで、連結財務諸表が完成します。

親会社の個別財務諸表+子会社の個別財務諸表±連結修正仕訳=連結財務諸表

この式のイメージに合わせればOKです。

なお、連結財務諸表における勘定科目の表示については、独自の規則があります。連結財務諸表規則と言います。連結財務諸表の作成においては、この連結財務諸表規則を踏まえる必要があります。

その場合、あまりに項目が増えるようなときには、金額的に少額で重要性が低いものを「その他」にまとめることが実務上のテクニックです。

連結決算の手順について、少しはイメージできたでしょうか。

端的に言うと、連結決算の手順とは、各会社の数字を集めて、実績にならないグループ内の取引を除く、資本や在庫のやり取りも重複するので相殺するなどにより、企業グループの実態を正しく表す連結財務諸表を作成することです。

連結対象の子会社が何十社もあり、かつ海外の会社もあるような場合には、大変な作業となりますが、その本質はシンプルです。

連結決算がどのようなものか、イメージを掴んた上で、グループ会社を持つ上場企業の有価証券報告書を見てみてください。きっと何か新しい発見があることでしょう。