キャッシュフロー計算書の作成に必要な書類と計算結果の検証方法

よくわかる!キャッシュフロー計算

キャッシュフロー計算書の作成に必要な書類と計算結果の検証方法

計算が合わない

1.キャッシュフロー計算書の計算結果が合わない!

自分でキャッシュフロー計算書を作成してみるとわかるのですが、キャッシュフロー計算書の作成はなかなか厄介です。

作成した結果、「あれっ?!合ってない!」ということがしばしば起こります。

合ってない理由はすぐにはわからないのですが、合ってないことだけはすぐにわかります。

なぜでしょうか。

それは、キャッシュフロー計算書の構造がそのようになっているからです。

キャッシュフロー計算書を作成したことがある人には当たり前のことですが、作成したことがない人には、わかりにくいと思いますので、説明しますね。

逆に、なぜ、キャッシュフロー計算の計算結果が合っているかどうかがすぐわかるかがわかれば、キャッシュフロー計算書の構造がつかめることでしょう。

キャッシュフロー計算書の考え方

まず、キャッシュフロー計算書の考え方をサクッと説明します。

損益計算書の一番下にある「当期純利益」は一年間の企業の稼ぎを表しているはずです。

次に貸借対照表を見ます。貸借対照表は二期分を用意します。

貸借対照表は、当期末の資産の状況を表しています。資産の中で一番上に表示されている項目が「現金及び預金」です。

(なお、なぜ、「現金及び預金」が一番上に表示されているかというと、ほとんどの企業の貸借対照表が流動性配列法に則って作成されているからです。

流動性配列法とは、流動性が高い=換金しやすい順に項目を並べるという意味です。

「現金及び預金」は換金しやすい、というよりも、現金そのもの=すでに換金されているので、一番上に表示されることになります。)

さて、前期の「現金及び預金」と、当期の「現金及び預金」を見比べてみます。当期の方が多ければ、キャッシュは増えています。当期の方が少なければ、キャッシュは減っています。

当期の「現金及び預金」-前期の「現金及び預金」=「現金及び預金」の増減額

この計算結果がプラスならキャッシュは増えています。
マイナスならキャッシュは減っています。

ここで計算した、「現金及び預金」の増減額は、おそらく当期純利益の額とは一致しないことでしょう。

「現金及び預金」の増減額 ≠ 損益計算書の当期純利益

その要因を説明するのが、キャッシュフロー計算書です。

キャッシュフロー計算書の計算結果の検証方法

キャッシュフロー計算書では、どこでキャッシュが増えたのか、減ったのかを3つの区分で表示します。

・営業活動によるキャッシュフロー(営業キャッシュフロー)
・投資活動によるキャッシュフロー(投資キャッシュフロー)
・財務活動によるキャッシュフロー(財務キャッシュフロー)

の3区分です。
キャッシュフロー計算書では以下の構造でキャッシュの増減を説明します。

営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー+財務キャッシュフロー
=キャッシュの増減

ところで、貸借対照表が二期分あれば、現金・預金の増減がわかるんでしたね。

当期の「現金及び預金」-前期の「現金及び預金」=「現金及び預金」の増減額

この2つの計算式をつなげるとこうなります。

営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー+財務キャッシュフロー
=キャッシュの増減
=「現金及び預金」の増減額
=当期の「現金及び預金」-前期の「現金及び預金」

計算結果である現金及び預金=キャッシュの増減を省くと下記の式になります。

営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー+財務キャッシュフロー
=当期の「現金及び預金」-前期の「現金及び預金」

(厳密にいうと、キャッシュフロー計算書の「現金及び現金同等物」には3か月超の定期預金などは含めないとされています。

そのため、厳密には、貸借対照表の「現金及び預金」≠キャッシュフロー計算書の「現金及び現金同等物」ですが、ここでは、話を単純化して理解しやすくするために、同一と見なします)

というわけで、キャッシュフロー計算書を作成してみて、「現金及び預金」の増減額と合致しているかどうかを確認することで、誤りの有無にすぐ気づけるというわけです。

合わせる

2.キャッシュフロー計算書の数字と実際のお金の出入りが違う?

ただし、キャッシュフロー計算書の結果であるキャッシュフローと、貸借対照表の「現金及び預金」の増減を合致させるという考え方だけでは、辻褄の合うキャッシュフロー計算書は作成できても、実際のキャッシュフローを正しく表しているわけではないことがあります。

どういうことでしょうか。

(1)長期前払費用の事例

例として、以下を見てください。「資産の部」-「固定資産」-「投資その他の資産」にの「長期前払費用」という項目があります。

貸借対照表【資産の部】(単位:円)

2015年12月期 2016年12月期 2017年12月期
固定資産 8,017,272 9,984,868 11,233,814
有形固定資産 2,972,388 1,889,950 1,218,814
車両運搬具 2,258,472 1,129,236 564,620
工具器具備品 713,916 428,350 257,010
一括償却資産 332,364 397,184
無形固定資産 1,209,600 919,296
1,209,600 919,296
投資その他の資産 5,044,884 6,885,318 9,095,704
出資金 260,000 260,000 260,000
差入保証金 520,000 520,000 520,000
長期前払費用 2,089,884 2,230,318 3,240,704
リサイクル預託金 50,000 50,000 50,000
前払保険料 2,125,000 3,325,000 4,525,000
保険積立金 500,000 500,000

「長期前払費用」の金額が変動していますね。キャッシュフロー計算では通常、資産の増減をキャッシュの増減であると捉えます。

ところが、長期前払費用は、長期にわたって効果のある費用を支払ったときに、支払い時にすべて費用化せず、資産計上とする場合に使われることが多い項目です。(少しややこしいですが、固定資産と減価償却費の話を思い出してください)

そこで、勘定科目内訳明細書で長期前払費用の内訳を確認することとします。

【長期前払費用 明細】(単位:円)

費目 2015年12月期 2016年12月期 2017年12月期
車両分割手数料 372,688 300,738 228,788
信用保証料 1,223,840 1,556,224 2,758,560
事務所保証金(繰延資産) 493,356 373,356 253,356
合計 2,089,884 2,230,318 3,240,704

車両分割手数料や信用保証料、事務所保証金(繰延資産)などの項目が並んでいます。二期間の増減を計算してみましょう。
【長期前払費用 明細】(単位:円)

費目 2016年12月期-2015年12月期 2017年12月期-2016年12月期
車両分割手数料 -71,950 -71,950
信用保証料 332,384 1,202,336
事務所保証金(繰延資産) -120,000 -120,000
合計 140,434 1,010,386

二期間の増減を計算すると、車両分割手数料と事務所保証金(繰延資産)は資産計上した金額を毎期、償却しているだけのように見えますね。

では、次に販売費及び一般管理費内訳書を確認してみましょう。

【販売費及び一般管理費内訳書】(単位:円)※一部のみ抜粋

費目 2015年12月期 2016年12月期 2017年12月期
保険料 18,386,300 16,547,670 14,892,000
租税公課 1,135,000 1,584,540 1,410,240
支払報酬料 2,277,000 2,277,000 2,277,000
寄付金 500,000
減価償却費 2,864,340 2,187,478 1,569,522
繰延資産償却 120,000 120,000 120,000
雑費 77,859 95,161 82,185
販売費及び一般管理費合計 120,557,928 122,677,387 119,621,761

繰延資産償却の数字が事務所保証金(繰延資産)の変化の数字と合致するのを確認できました。

つまり、事務所保証金(繰延資産)は資産計上したうちの一部を償却しているだけで、実際にお金が出ていっているわけではないということです。この金額もお金の出入りに含めてしまうと正しくお金の出入りの動きを表しているとは言えないことになります。

(車両分割手数料も同じく、お金が出ていっているわけではないと考えられます。一期分の71,950円はおそらく支払手数料に含められているのでしょう)

お金の出入りを正しく表すキャッシュフロー計算書を作成するには、決算書だけではなく、勘定科目内訳明細書も必要と言えそうです。

(2)長期未払金の事例

勘定科目内訳明細書がないことで、キャッシュフロー計算書がお金の出入りを正しく表さない、他の例を考えてみます。

大型の設備投資をするときにファイナンスリースを活用することがあります。

たとえば、1,000万円の機械装置をファイナンスリースで取得し、その年に実際に支払ったリース料が100万円としましょうか。

その場合、固定資産が1,000万円増えます。リース料の100万円は費用計上されます。残りの900万円がどうなるかというと、長期未払金として負債になるのです。(話を単純化するために減価償却費の話は割愛しています)

この場合、実際にこの機械装置の取得に関する支出は実際には、100万円ですが、決算書だけをもとに判断すると、1,000万円の支出のように見えてしまいます。

1,000万円お金が出ていくのと、100万円出ていくのとでは、経営に与えるインパクトは相当違いますよね。

先ほどの長期前払費用と同じく、長期未払金の明細は、貸借対照表だけではわかりません。勘定科目内訳明細書を確認することが必要です。

以上、キャッシュフロー計算書の作成時に、計算に誤りがあるかどうかはすぐにわかりますが、実際のお金の出入りを正しく表せているかについては、勘定科目内訳明細書なども必要というお話でした。

キャッシュフロー計算書の理解を深めていただくことに役立ったでしょうか。