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財務分析の実践書が必要になった理由
大手IT企業の経営企画で働いている者です。中小企業診断士を習得後、財務分析を行う機会が研修や実務で数多くあります。
中小企業診断士の試験でも、流動比率、営業利益率、固定資産回転率等、多くの指標が出題されるので学習はしています。
もちろん学習した知識でも対応可能ですが、具体的に分析する際のポイントや留意するポイントがイメージしにくいと感じていました。
そこで、実務的に学べる書籍がないかと考えていたところ、「企業分析シナリオ」という本にたどり着きました。
この本は、結構、専門用語を使用しているので、当初、小難しい印象を受けました。
しかし、ファイナンスから業界別の財務分析までが体系的に記載されており、財務分析を行う上でのノウハウが多く詰まっていると感じたので、ご紹介します。
・著 者: 西山 茂
・出版社:東洋経済新報社
・定 価:2,400円(税別)
特にこんな方におすすめです。
・もう少し実務的な視点で財務分析を学習したい。
・実際の財務分析では何をするのかよくわからない。
・経営戦略と財務分析を結びつけたい。
・業種的な財務指標の特徴を知りたい。
「企業分析シナリオ」の内容紹介
この本の構成は以下の通りです。
目次
・企業の目標と企業分析
・企業評価の方法
・定性的な分析と財務データとの関連付け
・財務データの見方
・財務比率分析
・会計方針と企業分析
・総合的な評価
「企業分析シナリオ」の要約
「企業分析シナリオ」の内容を要約して紹介します。
業種別で財務を分析
「企業分析シナリオ」が他のノウハウ本と異なる点は、単なる知識の補充でなく、さまざまな業種の企業の事例を、ケーススタディとして紹介している点です。
つまり、試験対策的な財務諸表でなく、実際の財務諸表を元に解説されている実践的な点が魅力です。
具体的には、国内で有名な大手企業を対比させて説明しています。
例えば、日立とソニー、丸井とヤマダ電気のように同業種を対比して、どこがポイントで何を確認すべきかを、勘定科目や損益計算書の科目ベースで説明しています。
業種別の観点と、二企業を比較しての、財務分析のポイントが記載されているので、非常に実務に近い内容になっています。
ケーススタディとして取り上げられているのは大企業ですが、業界の特徴を掴むには、大手企業も中小企業も大きくは変わるわけではなく、中小企業の分析においても活用可能と思います。
戦略的観点での財務分析
経営戦略を学習すると、ファイブフォース分析や競争戦略が必ず出てきます。この本では、そうした戦略と財務分析と照らし合わせて、紹介しています。
たとえば、新規参入の脅威の場合、「魅力的でない価格に設定し、財務的には利益率を低下させる可能性が高い」と書かれています。
つまり、戦略ごとに、選択した戦略が財務面に与えるインパクトはどうか?という視点で財務分析の解説が入っており、戦略と財務の2つの視点で学ぶことができるのです。
戦略的な観点でも活用できる本です。
米国企業との比較
著者は海外のMBAを保有されています。そのせいか、米国企業との財務比較の記載もあります。
キャッシュフロー計算書がメインになりますが、デルやウォールマートが例として上げられています。
海外企業にも興味がある方には、さらに面白く読めるかもしれません。
「企業分析シナリオ」のおすすめポイントまとめ
本全体としては、かなり実践的な点が、私個人としてはかなりおすすめです。
実際の財務諸表を例に上げて解説されているとやはり理解が深まります。
しかし、特に初めの方の内容は、ファイナンスが中心であり、言葉使いもかなり専門的です。
正直なところ、初めて財務を勉強する方には少し読みにくい本かもしれません。
ただこの本を読むことで、財務分析のポイントや視点は間違いなく養われます。お仕事や資格の勉強で財務分析を行う機会が多い方には読んでいただきたい本です。
少しお値段は高いですが、個人的には費用対効果も抜群だと感じています。皆様もぜひ読んでみてください。