コロナ禍では、ふだん意識しない会社のさまざまな課題が浮き彫りになりました。
たとえば、早く意思決定し、素早く資金調達できた企業があります。
逆に意思決定が遅れ、資金調達が遅れた企業もあります。
一つの意思決定の遅れが会社の存続に大きな影響を与えることを改めて意識した企業も多いのではないでしょうか。
では、早く意思決定できた企業と意思決定が遅れた企業では、何が異なるのでしょうか。
一つは、経営者の的確な判断を助ける経営参謀がいるか、いないかです。
ますます重要性が高まる経営参謀が果たすべき役割とは何でしょうか。どのような要件が求められるのでしょうか。わかりやすく解説します。
Contents
役割1. 財務知識をわかりやすく伝える
経営参謀が果たすべき役割の一つ目は「財務知識をわかりやすく伝える」ことです。
経営と事業活動の結果は、最終的に財務データいう数字となって表されます。つまり、事業活動の良し悪しとは、大半が数字によって判断されるということです。
もし、財務知識がなく、事業活動の結果である財務データを読めず分析できないとなると、その活動の結果の良し悪しの判断ができないということになります。
経営参謀は、事業活動が正しい方向に進んでいるのか、間違った方向に進んでいるのかを、経営者よりも正しく理解している必要があります。
財務データは、単純に売上や利益が上がっていれば良いと判断できるものではありません。その他にも、さまざまな尺度で判断する必要があります。
経営者ももちろんそのようなデータを理解する必要があります。
ただ、重要な指標を分析し、財務データをわかりやすく”翻訳”するのは経営参謀の役割です。
経営者が「組織が進むべき方向性の舵を取る」という枠割を遂行するためには、経営参謀がその判断材料を的確に提供する必要があります。
役割2. 正しい経営判断をサポートする
経営参謀が果たすべき役割の二つ目は「経営者が正しい舵取り=経営判断」をする、そのサポート役を務めるということです。
そのためには、わかりやすく翻訳された財務データ以外にも、組織の状態、競合他社や社会情勢などの外部環境など経営上のあらゆる情報を経営者に伝える必要があります。
「正しい経営判断」について、さらに重要な役割があります。
それは、経営判断として間違っていると認識した場合に、その認識を伝えられる存在でなければならないということです。
経営者も人間なので、間違った判断をすることもあるでしょう。そして、経営者には意思決定等の権限があるために、社内からは気を遣われ、反対意見を言われにくい存在でもあります。
その結果、周りには「イエスマン」が多くなりがちです。
そのような状況下においても、経営参謀は経営者に迎合せず、反対意見を臆せず言える、希少な存在である必要があります。
もちろん自身の利己的な反対意見ではなく、組織の理念に沿っているか、ステークホルダーにとって最適かどうかなどをもとに判断し、正当な論理をもって意見を伝える必要があるでしょう。
役割3. 組織全体の仕組みの最適化を図る
経営参謀が果たすべき役割の三つ目は「組織全体の仕組みの最適化を図る」ことです。
組織が成果を上げるために、重要な要素の一つが「仕組み」です。
たとえば、製造業の場合、原料を仕入れ、製造して、販売するまでの仕組みがあります。また、この一連の業務の流れをフォローするバックオフィスなどの間接部門の仕組みもあります。
この一連の業務フローと組織の役割分担は密接に紐づいています。そして、この一連の業務フローが的確に連動する仕組みがあることで組織が成立しています。
経営判断を的確にサポートをするためには、業務フロー=オペレーションの仕組みを把握しておく必要があります。
なぜなら、オペレーションの仕組みは、組織の生産性に直結するからです。
つまり、仕組みの最適化は、組織の生産性を向上させ、業績を向上させることにつながる重要な要素です。仕組みを最適化するには、まず仕組み全体を理解する必要があります。
一つ一つのオペレーションに注目して業務改善しようとしても、他の部分に歪みが出て、結果的に全体の仕組みの生産性が下がってしまう場合があります。
経営参謀には、組織全体の仕組みを理解した上で、仕組みを全体最適化する取り組みを行うことが求められます。
役割4. 経営層と現場の橋渡しになる
経営参謀が果たすべき役割の四つ目は「経営層と現場の橋渡しになる」ことです。
現場には現場レベルの視点があり、経営者には経営レベルの視点があります。
立場や視点、関心事が異なることから、意識や危機感に大きなギャップがあることは珍しくありません。場合によっては、意見の対立や誤解が生じることもあるでしょう。
そのような対立や誤解を「立場が違うから理解し合えるはずがない」と放置しておくと、組織の一体感や帰属意識が失われてしまうことにもなりかねません。
経営参謀には、それぞれの視点や立場に立ち、それぞれの立場の見解を代弁したり、翻訳することで、対立や誤解を調整する役割も求められます。
現場と経営者、双方のことを理解している経営参謀だからこそ、お互いが理解し合えるようにな働きかけも可能になります。
経営参謀は、組織を実務的に動かしている現場の社員と、組織の舵取りを行っている経営者との仲介役としての役割が求められます。
以上、経営参謀の役割として、以下の4点について説明しました。
1. 財務知識をわかりやすく伝える
2. 正しい経営判断をサポートする
3. 組織全体の仕組みの最適化を図る
4. 経営層と現場の橋渡しになる
では、この4つの役割を果たすべき経営参謀が備えるべき要件とはどのようなことでしょうか。
要件1. 実行力とスピード感
経営参謀が備えるべき要件の一つ目は「実行力とスピード感」です。
なぜなら、情報を収集・分析し計画立案したとしても、それが行動に結びつかないとすれば、成果にはつながらないからです。
情報収集や分析、計画立案を行う目的は、次の行動を起こすことです。
分析や計画立案は何のために行うものかを常に意識し、次の行動につながるように情報収集や分析、計画立案を進める必要があります。
特に現在のような変化が激しく、先行きの不透明な事業環境においては、組織を成長させるためには常にスピード感をもって、次の打ち手を実行していくことが重要です。
経営参謀はそのためのエンジンとなり、組織のアクションをリードする存在であることが求められます。
経営参謀が組織のアクションをリードするには、臨機応変さやバイタリティも必要な要件と言えるでしょう。
要件2. 経営理念・ビジョン力
経営参謀が備えるべき要件の二つ目は「経営理念・ビジョン力」ことです。
なぜなら、経営参謀が判断や行動の軸にするべき指針は、企業の経営理念とビジョンであるからです。
経営参謀の最も基本的な役割は、経営者のサポート役です。そして、経営者や組織が目指しているもの、理想としている状態が経営理念とビジョンです。
だからこそ、経営参謀には、企業の経営理念とやビジョンを常に意識して判断することが求められます。
さらには、経営者が経営理念やビジョンからブレた場合には、経営参謀が目的に立ち返るサポートをすることも必要とされます。
また、経営参謀が常に経営理念・ビジョンをもとに判断・行動し、経営者や組織のメンバーから信頼される存在であることで、経営参謀の提案に対する経営者の理解・決済も得られやすくなります。
経営参謀の指示や依頼に対する組織メンバーの理解と行動が早まり、組織全体の推進力が上がります。
経営参謀には仕事の「やり方」のみならず「あり方」が問われると言えるでしょう。
経営参謀の存在がより求められる時代に
中小企業の経営者は、後継者不在の問題などもあり、経営に携わることができる存在を求めています。
「地方中小企業の中核人材不足解消に向けて」という日本総研の研究論文によると、株式会社日本人材機構による経営幹部人材紹介事業が2016年にスタートしているようです。
ビズリーチ等のプロフェッショナル人材の転職プラットフォーム、サーキュレーションのようなプロシェアリング事業なども活発化しており、プロフェショナル人材のニーズが高まっています。
経営参謀という経営に深く関わる存在は、このような時代背景にマッチした存在であると言えるでしょう。
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