法人税申告書とは – よくわかる!法人税申告書の基本

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法人税申告書とは – よくわかる!法人税申告書の基本

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1.法人税申告書とは

法人税申告書とはその名の通り、「法人税を申告するために作成する申告書」のことです。この法人税申告書の作成は税理士の独占業務です。

税理士法という法律があります。税理士法は、税理士だけがこの法人税申告書を代行で作成できると定めています。税理士以外の人が代行で作成すると、税理士法違反となります。

具体的には、税理士法第52条にこの規定があります。税理士以外の人が税務申告書の作成を行うと、2年以下の懲役または、100万円以下の罰金が科せられます。

また、実際に税務申告書は複雑であり、専門的な知識が必要な業務です。税務申告書には、企業会計と税務を繋げる重要な役目があります。

というと、難しそうですが、基本的な理屈を知っておくと、会社が支払う税金がどのように計算されるかがわかります。この記事では、税務申告書についてわかりやすく説明します。

2.法人税申告書の構成

税務申告書は「別表」と呼ばれています。基本的には、別表1から別表16までで構成されています。その中で、重要な申告書について解説します。

(1) 別表1とは

別表1は、表紙になる申告書です。最終的な法人税額を計算する重要な申告書です。会社の代表者、経理責任者、作成した税理士の署名捺印が記載されます。

この申告書に会社の税務上の利益である課税所得が記載され、その課税所得に税率を乗じて法人税額を計算します。順番としては、一番最後に作成されます。申告書は青色の用紙になっています。

(2) 別表2とは

別表2には、会社の株主構成が記載されます。正式名称は「同族会社の判定に関する明細書」です。株主名簿の保有株式上位が記載されます。

この別表をもとに、この会社が同族会社なのかどうかという判断を行います。

同族会社とは、株式や出資金の50%超を上位3グループで保有している会社のことです。グループには、中心的な株主の親族、中心的な株主の使用人など、中心的な株主と特殊な関係の法人や個人などがあります。

同族会社になると、以下のような特別な規定が適用されます。

留保金課税の適用

会社が利益を出しているにも関わらず、株主への配当を行わない場合があります。留保金課税とは、利益を出しているのに株主への配当を行わず、社内留保金として保有している場合に課税される税金のことです。

会社が配当を行うと、受け取った株主はその配当の額を課税所得に含めなければなりません。ところが、同族会社の場合は、独断で意思決定できるケースが多く、個人と会社を合わせての税額を考えることができるため、配当をせずに会社にプールしている場合があります。

留保金課税は、利益が出た場合に株主への適正な配当を促すために作られた規定です。

みなし役員規定の適用

通常は、労働者の給与(賞与)は経費となります。ところが、労働者の給与(賞与)が経費と認められない場合があります。

その労働者が株式や出資金の上位3グループの株主に属している場合です。その労働者の配偶者と合わせて5%以上の株式を保有する場合などは、その労働者は「みなし役員」となります。

みなし役員に対する賞与については、役員賞与に該当するため、税務上は経費として認められせん。給与についても税務上は定期同額給与規定を設けているため、制限されます。

同族会社の行為計算否認規定の適用

税務署長の権限により、同族会社が不当に法人税の負担額を減少させる行為を否認することができる規定です。まさに税務署の伝家の宝刀のような規定です。

過去の事例としては、建物を同族会社に低額で賃貸し、同族会社が又貸しにより、多大な利益を出している場合に、否認されたという事例があります。

不合理的な取引の場合に適用されます。

会議

(3) 別表4とは

別表4は、法人税法上の損益計算書のような役割を果たします。初めに会計上の利益を転記して、その金額に税務上認められない経費や収入、逆に会計上で計上されていない収入などを加算、減算して、法人税法上の課税所得を計算します。

その加算項目と減算項目は、別表6以降の申告書で計算されて、別表4に転記される流れになります。

別表4で加算される代表的な項目としては、以下などがあります。

損金経理した法人税及び地方法人税

会計上は経費になっている法人税等の計上額は税務上、損金として認められないため加算します。別表5-2を使って計算します。

損金経理した預金利子税

銀行預金に付される預金利息には、最初から預金利子税という税金が差し引かれています。その税金を経費として計上している場合は税務上、損金として認められないため加算します。別表6-1を使って計算します。

損金経理した過怠金

税金の支払いを延滞した場合などにかかる加算金や延滞金、過怠税は税務上の損金として認められないため、加算します。別表5-2を使って計算します。

減価償却の償却超過額

法人税法上で規定されている計算方法、耐用年数で計上した額が税務上の減価償却費の限度額となります。何らかの理由により、会計上で過大に減価償却を行った場合は税務上、損金として認められないため加算します。

税務上の減価償却費については別表16を使って計算します。

役員給与の損金不算入額

役員の給与は、定期同額支給しない場合には、税務上の損金となりません。また一定の場合を除く役員賞与についても税務上、損金とならないため加算します。

交際費の損金不算入

接待交際費は原則的に税務上、経費となりません。ただし、中小企業は年間800万円までの交際費の支出まで損金として認められます。大会社は、飲食費についてのみ、50%の割合で税務上の損金として認められています。別表15で加算額の計算を行います。

寄付金の損金不算入額

公共性の強い寄付金等以外は一定の基準額までしか税務上、経費として認められていません。別表14で寄付金の限度額を計算し、超えた部分を加算します。

打ち合わせ

反対に、別表4で減算される代表的な項目としては、以下などがあります。

減価償却超過額の当期容認額

過去に減価償却超過額を加算している場合で、当期中にその超過額が解消した場合に用いられます。解消する場合とは、減価償却額が超過している資産を売却や除却した場合や、会計上の償却期間が過ぎて、税務上の減価償却限度額が追いついた場合などです。こちらも別表16で計算します。

受取配当金の益金不算入

会社の受取配当金には、配当源泉税というものが差し引かれています。一度課税のフィルターを通った配当金にもう一度法人税で課税することは二重課税になるため、受取配当金の一部は税務上の利益とみなさずに減算します。益金不算入額は別表8を使って計算します。

欠損金の当期控除額

過去に会社が赤字を出した場合、税務上は発生年度から9年の繰越が認められます。(平成30年4月1日開始事業年度より10年に改正)

当期課税所得が発生している場合は、過去の欠損金を充当させて課税所得を減額することができます。欠損金の繰越状況は別表7を使って計算します。

欠損金は、古い年度から順番に取り崩されていきます。損失を計上した事業年度から9年間の繰越ができますが、期間内に欠損金の全額を取崩すことができなかった場合は切り捨てになってしまいます。

過去の欠損金を有効利用するためにも、別表7で繰越欠損金の期限を確認しておく必要があります。

(4) 別表5とは

法人税申告書別表5は、税務上の貸借対照表のようなものです。

たとえば、減価償却超過額のように会計と税務の扱いが違うが、時間が経てば解消していくものを記録していく別表です。

一時的に会計と税務の差が出るものを一時差異といいます。貸倒引当金の繰入超過額などが代表的な例です。

交際費接待費の損金不算入など一時的な差異でないものは永久差異といい、別表5-1には記載されません。

(5) 別表6以降

別表6以降は、別表4や5-1を作るための申告書です。全ての別表を作成する必要はありません。会社が該当する項目だけ、別表を作成します。

3.法人税の課税所得、法人税額が確定した後は

法人税の課税所得及び法人税額が確定したら、事業税と住民税の計算に移ります。事業所がある都道府県に事業税と法人県民税、市町村に法人市町村民税の申告が必要です。

法人事業税は法人税の課税所得を基礎として計算し、法人県民税・市民税は、法人税額を基礎として計算していきます。

別表4を使って計算した課税所得と法人税額が事業税や住民税の基礎となりますので、法人税の計算はとても重要です。もし別表4の計算に間違いがあれば事業税、住民税の訂正が必要になります。

予定申告・中間申告

4.法人税の予定申告・中間申告とは

会社の利益が大きくなればなるほど法人税や事業税、住民税の納付額が大きくなっていきます。確定申告の納付期限は決算日から2か月後ですが、会社によっては一度に多額の納税額を用意できない場合もあるでしょう。

中間申告または予定申告は、前の決算で一定以上の税額が出た場合に、その申告書提出期限から6か月以内に予定申告書または中間申告書を提出しなければいけないという制度です。

会社は予定申告にするか中間申告にするか選択することができます。

予定申告は、単純に前期決算の税額の半分を納めます。(事業年度が1年の場合)

当期の利益が前期より増加しそうな場合は、この予定申告を選んだほうがいいでしょう。

一方、中間申告とは、6か月の仮決算を行い、その課税所得に応じて税金を納める制度です。仮決算を組むのために、帳簿の整理を正しく行う必要があるため、予定申告よりも煩雑になります。

当期に前期ほどの利益が見込めない場合に選択すると、予定申告の額よりも納税額が少なくなり、資金繰りが安定します。