減価償却費とは – よくわかる!減価償却費の基本

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減価償却費とは – よくわかる!減価償却費の基本

減価償却費とは

利益を計算するときには、売上から費用を差し引きますが、費用の中には、お金の支出を伴わない、特殊な費用があります。その代表例が減価償却費です。

減価償却費とはどのような費用でしょうか。わかりやすく解説します。

1.減価償却とは

減価償却を一言で言うと「資産の購入費用を使用期間に応じて、適正に費用化すること」です。

具体例で考えてみましょう。

たとえば、会社が車を現金で一括購入したとします。その時点で、会社では車という資産を得て、現金がなくなるという会計処理をします。

ところが、この購入費用を全額一括で費用として計上することはできません。

クルマ

なぜなら、車は何年も使うことができるため、単年度の費用として計上すると、実際の使用と費用がアンバランスになってしまうためです。

購入した車は、まずは、会社の資産として計上します。ところが、乗り続けていれば、いろいろなパーツが劣化して、車としての価値は下がっていくでしょう。

その価値の下落分を、車という資産の価値から減額して、費用に振り替える処理が「減価償却」です。

何年間使うかについては、資産の種類ごとに法定耐用年数が定められています。車の耐用年数は6年です。

車の購入時に、実際にはその6年分をまとめて支払い、いったん資産に計上して、1年ずつ経費にしていきます。

つまり、「減価償却」とは、使用期間に見合った、費用の適正な期間按分なのです。

2.減価償却の対象

では、購入した物品はすべて、減価償却の対象となるのでしょうか?

減価償却が必要な資産が何であるかについては、法人税法で基準が定められています。減価償却資産に該当するかどうかは、金額と種類によって判断します。

最初に金額による判断について説明します。

基準① 10万円未満の場合

消耗品とは

購入した物品が「10万円」以上かどうかが最初の判断ポイントです。これは、パソコンでも車でも機械でも同じです。

パソコン

10万円未満であれば、「消耗品費」として支払った時点ですべて経費として計上することが可能です。

ただし、消費税込経理をしている場合は、税込み10万円以上が基準になりますので、注意が必要です。

基準② 10万円以上20万円未満の場合

一括償却資産とは

10万円以上20万円未満の資産を購入した場合は、3つの選択肢があります。

1つ目は、「通常の減価償却資産」として、法定耐用年数で償却する方法です。本来は、この方法が原則です。

ただし、この方法で処理すると、償却期間が一番長くなります。減価償却費として早く経費化したい会社にとっては、不利な処理方法です。そのため、一般にはあまり選択されていません。

2つ目は、「一括償却資産」として処理をする方法です。「一括償却資産」は、10万円以上20万円未満の資産を購入した場合のみ選択できる処理方法です。

「一括償却資産」を選択した場合、減価償却資産と同様に資産計上はされるのですが、償却は、3年間での均等償却となります。

たとえば、18万円のパソコンを購入した場合は、3年間、毎年6万円を経費として計上します。

18万円 × 1/3 = 6万円

一括償却資産は、一括で管理される資産です。個別での管理は必要とされません。対象資産を売却したり、廃棄した場合でも、固定資産売却損や固定資産除却損は発生しません。

個別に管理されないことによるメリットもあります。

個別に管理されないため、市町村より課税される固定資産税の一部である、償却資産税の計算に算入されないのです。

一括償却資産にすることで、固定資産税の減額にもつながるのです。

3つ目の方法は、「少額減価償却資産」として処理をする方法です。この方法については、次の20万円以上30万円未満の項目で説明します。

基準③ 20万円以上30万円未満の場合

少額減価償却資産とは

20万円以上30万円未満の場合、選択肢は2つです。

1つ目は、原則的な処理方法である、「通常の減価償却資産」として処理する方法です。
2つ目は、「少額減価償却資産」として処理する方法です。

「少額減価償却資産」は、中小企業者等のみが使える「特例」です。資本金が1億円を超える会社や、従業員が1,000人以上の会社には適用されません。

この「少額減価償却資産」は、30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、年間に合計で300万円までが認められています。

「少額減価償却資産」は、法人税法上では一度で経費になり、資産台帳に記載されません。ただし、「一括償却資産」とは違って、市町村から課税される償却資産税の対象になります。

資産台帳に記載していないからといって、申告漏れにならないように注意する必要があります。

(ただし、償却資産税は、課税標準額(課税対象となる資産の評価金額)が150万円未満の場合、免税となります)

ここまでをまとめます。購入した資産の経費化を早くしたい会社では、以下の優先順位で考えるといいでしょう。

少額減価償却資産 > 一括償却資産 > 通常の減価償却資産

つまり、20万円以上30万円未満で購入した資産については、できるだけ「少額減価償却資産」で処理します。

年間300万円に達しなかった場合は、10万円以上20万円未満で購入した資産についても「少額減価償却資産」として処理します。

年間300万円に達した場合は、残りの資産を「一括償却資産」として処理すれば、一番、早期に資産の経費化を行うことができます。

減価償却資産

3. 減価償却資産の種類

では、30万円以上の資産については、どのように処理するのでしょうか。

30万円以上については、「通常の減価償却資産」として取り扱います。また、20万円以上30万円未満の場合で、限度額超など「少額減価償却資産」の対象にならなかった資産についても、「通常の減価償却資産」として取り扱います。

通常の減価償却資産にはどういったものがあるのでしょうか。

(1) 有形固定資産

有形固定資産とは、形があり、目に見える資産のことです。一般的な会社の場合、ほとんどの減価償却資産は有形固定資産です。

代表的な有形固定資産は、建物、建物附属設備、器具備品、車両運搬具、機械装置などです。

ただし、その会社がどのような有形固定資産を保有しているかについては、会社の事業内容によって異なります。

不動産賃貸業を行っている会社であれば、建物の割合が多くなります。運送会社では、車両運搬具、航空会社では航空機が占める割合が高くなります。

車両運搬具

では、土地はどうでしょうか。

土地も代表的な有形固定資産です。ただし、土地は、経年劣化によって価値が下落するものではないため、「減価償却資産」とはなりません。

土地の購入費用は経費化できないのです。

(2) 無形固定資産

無形固定資産とは、有形固定資産とは反対に、目には見えないけれど、資産的価値があるものです。コンピュータで使用するソフトウェアが代表的な無形固定資産です。

他には、法的に定められている権利も無形固定資産です。たとえば、特許権、水利権、商標権などです。

企業買収などで発生する会社の超過収益力を営業権で資産計上することもあります。言葉の後ろに「~権」とつくものは、そのほとんどが無形固定資産と考えていいでしょう。

4.非減価償却資産とは

減価償却資産として、有形固定資産と無形固定資産について説明しましたが、すべての有形固定資産、無形固定資産が減価償却の対象となるわけではありません。

固定資産の中には、年数の経過により価値の下がらないものが存在します。このような資産を「非減価償却資産」と言います。

「非減価償却資産」を減価償却の対象としていた場合は、税務調査で否認されてしまいます。間違わないように気をつけましょう。

(1) 非減価償却の有形固定資産

代表的な非償却有形資産として、土地が挙げられます。時間の経過により劣化していくことがないためです。

ただし、地価の変動は起こります。バブル時代に購入した土地が、今の相場では当時の半分以下になったなどという話もよく耳にします。

その場合は、帳簿価格を下げることができるのでしょうか?

地価が下がった場合であっても、帳簿には取得した価格を計上します。値下がり分を勝手に反映させることはできないのです。

その理由は、地価が下がったとしても、売却しない限りは、その値下がりによる損失が未実現であるためです。土地については、売却損のみが計上可能です。土地の減価と評価損は計上できないのです。

美術品や骨董品なども非減価償却資産です。

歴史的価値や希少価値を有しているものは、時間の経過とともに劣化しないと考えられています。逆に価値が上がることがあるかもしれませんね。

しかし、会社のロビーに飾っている絵画などの美術品などは、本当に時間の経過で劣化しないのでしょうか。

美術品

美術品等が非減価償却資産かどうかについては、長年の間、美術年鑑に載っている製作者が作ったもので、1点あたり20万円以上のものは非減価償却資産とされてきていました。

ところが、2015年の税制改正により、原則的に1点につき100万円以上のものは、これまで通り、非減価償却資産であるものの、100万円未満のものは減価償却資産とする指針を国税庁が発表しています。

100万円以上の美術品であっても、減価償却資産となる要件を満たすことで、減価償却資産として認められることができるようになっています。

(2) 非減価償却の無形固定資産

非減価償却の無形固定資産としては「借地権」や「電話加入権」などがあります。

借地権は、第三者の土地に建物を建てる「権利」です。時間の流れとともに劣化していくものでないため、非減価償却資産とされています。

設立の古い会社の財務諸表でよく見かける「電話加入権」も非償却資産です。「電話加入権」とは、固定電話回線を会社に引く際にNTTに支払う「施設設置負担金」のことです。

第三者に売却できる「権利」であるため、非減価償却資産とされています。

※減価償却費の具体的な計算方法については、以下の記事をご参照ください。