会計のルールには何がある?税務会計と会計基準はどう違う?

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会計のルールには何がある?税務会計と会計基準はどう違う?

会計

会社は年に一度、一年間の会社の数字をまとめて計算し、決算を行います。
では、決算を行うときは、どのようなルールに則って行えばいいのでしょうか。

会社の数字に関する法律としては、会社法、税法、金融商品取引法の3つがあります。

このうち、金融商品取引法は上場企業などを対象としているので、中小企業の場合したがうべき法律は、会社法と税法です。

会社法では、会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う」とされています。

株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
(会社法431条)

「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」のことを「会計基準」と言います。

一方で、決算後、納税額を計算して納税します。納税額の計算のルールを定めた法律が税法です。では、会計基準と税法には何か違いがあるのでしょうか。わかりやすく解説します。

1.「会計」とは?

まず、会計とは何でしょうか。

会計は英語で「Accounting」です。「Accounting」の意味は依頼内容についての「説明」です。飲食店で食事をするときの場面で考えてみましょう。

飲食店がお客様に「お客様が飲食されたメニューの単価と数量、合計金額」について説明することが「会計」です。オーダー通りに商品を提供したことを説明する行為が「会計」ともいえるでしょう。

一般には「お会計」=「精算」という認識ですが、本来は、商品やサービスの提供を受けた側が、オーダーの内容の開示と請求を求める行為ということです。

そして「会計」が必要なのは、飲食店などの店舗だけではありません。どんな業種であっても「会計=関係者への説明」が必要です。

説明する相手もお客様だけでなく、株主への説明も必要です。借入をしている金融機関への説明も必要です。税務署などの行政機関などへの説明も必要です。

経営上、重要な関係者に対して、経営上の取引をすべて記録、管理し、開示報告することが「会計」と言えるでしょう。

この会計にはいくつかの種類があります。

2. さまざまな会計があるのはなぜか?

なぜ、会計にいくつかの種類があるのでしょうか。

会計の目的は、関係者に対して、会社の業績を数字で開示報告することです。ただし、どういう目的で誰に開示するのかについては一律ではありません。

開示報告する相手、開示報告する目的に合わせる必要があることから、さまざまな会計があります。主な会計は、税務会計、財務会計(会計基準)、管理会計です。

開示報告する相手と目的をまとめると、下表のようになります。

会計の種類 開示報告する相手 目的
税務会計 税務署・国税局 課税目的
財務会計(会計基準) 株主・取引先 投資・取引継続目的
管理会計 社内・株主 業績管理、投資判断目的

このうち、管理会計は、業績に重要な影響を与える指標を管理するなど、社内的な業績管理が基本的な役割です。

ただし、株主などの社外に対して、一般的な会計基準を用いた業績報告だけでは伝わらない部分の指標や業績を説明するために、管理会計を用いる場合もあります。

社外に向けて開示報告する場合があることを考慮すると、ある程度対外的な要素もあると言えるでしょう。

3. 会計基準とは

税務会計、財務会計(会計基準)、管理会計のうち、会計基準とは、財務諸表の作成に対して定められたルールのことです。

主に株主や金融機関、取引先などの債権者に対して、業績や経営状況を報告開示するために用います。

株主目線で見ると、その会社に投資をするべきか、投資を継続するべきかなどの判断をするための判断材料に使われます。一般には、稼ぐ力がどれだけあるか、成長可能性がどれだけあるかなどを見ます。

一方、金融機関や取引先などの債権者は、その会社と取引をするべきか、続けるべきかなどの判断材料に使います。債権者が最も恐れていることは、貸し付けたお金や、信用取引をしている売掛金などが回収不能になることです。

ただし、お金を貸したり、商品やサービスの提供をしなければ、債権者は売上や利益をあげ続けることができません。そのため、債権回収が滞らない範囲でできるだけ取引を継続できるように、相手先の業績を管理しています。

このような管理を「与信管理」と言います。統一された会計基準によって作成された財務諸表は、与信管理を行う上で重要な判断材料になります。

時代の変遷につれて、必要なルールは変わります。会計基準も時代の変化に合わせて、ルール改正されています。現在、日本で採用できる会計基準は4種類あります。

(1) 日本会計基準

日本独自の会計基準です。1949年に設定された「企業会計原則」がベースとなっています。2001年には「企業会計基準委員会」(ASBJ)が設立され、社会変化に応じた会計基準の設定を行っています。

(2) 米国会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)

アメリカ合衆国の財務会計に使用される基準です。アメリカの証券取引所に上場する場合は、この米国会計基準に準拠する必要があります。

(3) 国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)

国ごとに会計基準の違いがあると、海外の投資家が企業の財務状況を判断しにくいという問題が起こります。こうした問題意識のもとに、国際的な会計基準を目指して策定された会計基準がIFRS(アイファース)です。

日本国内でIFRSを適用する会社もあります。

M&Aを実施したときに、日本会計基準であると「のれん」の償却を行う必要があり、費用増加要因となります。IRFSでは「のれん」の償却を行わないことから、M&Aを成長戦略に取り入れる会社では、IFRSを採用しているという指摘があります。

EUでは、2005年から上場企業については、IFRS導入が義務化されました。

(4) J-IFRS

IFRSを日本版に改正した修正国際会計基準です。ほとんどをIFRSに準拠しつつ、一部、日本の会計基準を踏襲した形です。

このように、現在日本では4種類の会計基準が採用可能です。これからも、時代の変化に合わせて改正や新しい会計基準が生まれるなど、変化が続いていくでしょう。

税金

4. 税務会計とは

では、税務会計とはどのような会計でしょうか。税務会計は、課税される所得と、その税額がいくらになるかという「課税目的」で用いられる会計です。

個人事業であれば所得税ですが、一般には、法人に対して課税される法人税と消費税が対象です。

ベースとしては、会計基準によって集計された収益、費用、その差額である利益(または損失)を用いて課税額を計算します。ただし、計算結果である利益がそのまま課税対象になるわけではありません。

なぜ、利益がそのまま課税対象ではないのでしょうか。

(1) 益金と損金

利益が課税対象ではない理由は、財務会計の収益・費用と、税務会計の「益金」・「損金」がイコールではないためです。

会計基準では、収益と費用をもとに利益を算出します。税務会計では、「益金」と「損金」をもとに「課税所得」を計算します。

収益と益金、費用と損金はそれぞれ近い意味ながら、厳密にはそれぞれ違いがあります。

(2) 益金参入

収益と益金の相違点としては、主に認識するタイミングの違いと、処理の違いがあります。

益金となるタイミングは「物品や固定資産の引渡しがあった日」です。譲受けの場合は「物品の引き渡し・譲受けがあった日」です。サービスについては「サービスの提供が完了した日」が益金となるタイミングです。

これは、日本の企業会計原則である「実現主義」の概念とは同じです。

一方でたとえば、IFRSを会計基準として採用している場合、「検収基準」となるため、厳密に見ると会計基準と税務会計で計上のタイミングに誤差が生じます。これが認識するタイミングの違いです。

処理の違いについては、貸倒引当金の取り崩しや退職給付引当金の取り崩しの処理方法があります。

これは、会計基準上は費用として処理しますが、税務会計上は損金として処理できません。そのため、益金参入して課税所得を調整します。

(2) 益金不算入

会計上は収益で計上していても、税務会計上の益金とならず、益金不算入とするものがあります。代表例は、受取配当金、税還付金、資産の価益などです。

(3) 損金算入

会計上、費用としていなくても、税務会計では損金に算入するものもあります。法人事業税などです。

法人事業税は、申告書を提出したタイミングで損金として認識するため、ほとんどの場合が前期分の法人事業税を損金として計上します。

(4) 損金不算入

会計上の費用がそのまま損金にならないものもいくつかあります。代表的な項目としては、役員報酬、交際費があります。

役員報酬

役員報酬は「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の2つの条件を満たすことで、損金計上が可能になります。2つの条件を満たしていない役員報酬は、会計基準上の費用になっても、税務上の損金には算入できません。

「定期同額給与」とは「毎月〇〇万円」というように毎月同額を役員報酬として支払うというものです。働いた時間や利益に対応させて、役員報酬の額を変更することができないということです。

「事前確定届給与」とは、支給金額と支給時期を事前に税務署に届出をすることで、その届出の内容の役員報酬が損金として認められるということです。

接待交際費

交際費

交際費については、原則的に損金不算入ですが、条件を満たせば損金に計上することができます。

社外での飲食接待費などは、中小企業の場合800万円まで全額損金算入が可能です。大企業については、800万円という上限はなく、半額が損金算入できます。

つまり、中小企業の場合は800万円を超えた部分、大企業の場合は半額の社外での飲食設定費が損金不算入です。

5. 会計基準と税務会計の相違点まとめ

会計基準と税務会計は、目的の違いからいくつかの相違点があります。まとめると下表の通りです。

会計基準(財務会計) 税務会計
目的 投資・取引継続目的 課税目的
開示報告する相手 株主・金融機関・取引先 税務署
算出する項目 利益 所得
算出する項目の根拠 収益と費用 益金と損金

中小企業の場合は、経営者が株式を100%保有し、経営者が業績を報告すべき株主が自分自身ということが多々あります。そのような場合、対外的な業績報告という財務会計的視点よりも、税務会計的な視点の方が優先されるケースが見られます。

中小企業の決算であっても、金融機関は適正な会計基準に則った会計を求めていることを理解して決算を行いたいものです。

たとえば、税法上は法人の減価償却費は任意償却とされています。減価償却しなくてもいいよということです。一方で、会計基準では、毎年継続して適切に減価償却することを求めています。

税法上、適法なので問題ないと考えて減価償却しなかった結果として金融機関からの評価が下がり、融資を受けにくくなるようなことがあると、経営全体としてマイナスです。そのようなことも考えて、どのような決算を行うかの判断が必要です。