クラウド会計とはどんな会計ソフトでしょうか。
どんなメリットや留意点があるのでしょうか。
わかりやすく解説します。
Contents
1.クラウド会計とは
クラウド会計とは、クラウド上の会計ソフトです。
会計ソフトとは、仕訳処理や元帳作成、財務諸表の作成など、会計処理を行うことができるソフトです。
つまり、クラウド会計とは、インターネット上の専用サイト内で会計処理を行うサービスです。クラウド会計では、作成したデータもクラウド会計企業のサーバに保存されます。
2.クラウド会計を使うメリットは
では、クラウド会計利用のメリットは何でしょうか。
(1) どこでも作業できてどこでも見ることができる
一つ目のメリットは、どこでも作業できて、どこからでも見ることができる点です。これは、クラウド会計に限らず、クラウドサービス全般のメリットですね。
具体的には、インターネットに接続できる環境があり、パソコンなどの端末があれば、どこにいても閲覧や作業を行うことができます。
クラウド会計の反対は、インストール型の会計ソフトです。(オンプレミスという言葉を使うこともあります)
インストール型の会計ソフトの場合でも、会計データを出力し、出力したデータを更新することは可能です。ただし、クラウド型との違いとしては、出力データを更新した場合、出力データのみが最新のデータとなってしまいます。サーバ上の元のデータについては、最新データと同期させる作業が必要になります。
クラウド会計の場合は、データはクラウド上で一元管理されます。そのため、どこで入力作業をしてもリアルタイムに最新のデータに更新されます。
その結果、誰がどこで見ても常に最新のデータであり、同期という作業も不要です。
(2) 仕訳自動取込機能が使える
二つ目のメリットは、仕訳自動取込機能が使えることです。この仕訳自動取込機能がクラウド会計利用の最大のメリットです。
具体的には、預金口座やクレジットカードの情報をクラウド会計に登録しておくと、取引が行われたデータを自動的に取り込んで、仕訳を提案してくれます。
下表は、預金データの入力の例で、インストール型での通常の会計入力と、自動取込機能を使っての会計入力の工程について比較したものです。
no | 通常の会計入力 | 自動取込機能での会計入力 |
1 | 記帳する | 不要(自動取込) |
2 | 通帳を見る | 不要(仕訳が提案される) |
3 | 日付を入力する | 不要(自動的に入力) |
4 | 勘定科目を入力する | 勘定科目を選択する |
5 | 金額を入力する | 不要(自動的に入力) |
6 | 摘要を入力する | ほぼ不要(自動的に入力。必要であれば修正) |
上表からわかる通り、工程数が明らかに少なくなります。唯一の工程は、勘定科目の選択です。それもディープラーニングを活用して、勘定科目を学習させておけば、勘定科目の選択も不要になります。
では、ディープラーニングとは何でしょうか。
※ ディープラーニングとは
ディープラーニングとは、コンピューター自らが学習する機能のことです。たとえば、自動取込で取り込んだ仕訳のデータを学習し、2回目以降には勘定科目や適用を提案するような仕組みです。
例として、電気代の引き落としのケースで考えてみます。金融機関の記帳データに「デンキダイ」などと表示されていることでしょう。
この場合、「デンキダイ」と書かれている支払いであれば、「水道光熱費」という勘定科目を予めクラウド会計自体が選んでくれるようになります。
そして、ディープラーニングの方法には2種類あります。1つはクラウド会計サービス全般での学習です。2つ目はそれぞれの事業所データごとの学習です。
電気代のようなポピュラーな仕訳学習であれば前者です。「〇〇建設からの入金は売掛金」というような利用者ごとの個別具体的な仕訳学習は後者です。
(3) 自動メンテナンス・自動アップデート
三つ目のメリットは、自動メンテナス・自動アップデートです。
インストール型の会計ソフトの場合、定期的にアップデートを自らが行う必要があります。メンテナンスについても必要に応じて、手配や手続きなどの対応をすることになります。
アップデートやメンテナンス作業の発生は、工数がかかるというデメリットがあります。また、その間、作業が止まるというリスクも抱えています。
クラウド会計の場合は、アップデートやメンテナンスの作業が一切不要です。自動的にメンテナンスやアップデートが行われます。
(4) バックアップ不要
インストール型の会計ソフトの場合は、原則として自社サーバにデータを保存しています。ただし、1か所に重要データを保存するのは万一を考えると、リスクが高いことから、バックアップを取る作業とコストが必要です。
クラウド会計の場合は、メンテナンスやアップデート同様、データのバックアップも自動で行われます。
3.クラウド会計の留意点
では、クラウド会計の留意点はどのようなことでしょうか。
(1) 初期設定が最重要
一つ目の留意点は、クラウド会計のメリットを最大限に活かすには初期設定が最重要ということです。初期設定を網羅的にしておかなければ、クラウド会計の機能を活かしきれません。
そうなると、インストール型の会計ソフトと変わらないどころか、インターフェイスや使用方法の違いによるストレスなどの潜在的なコストが発生し、「結局今までのソフトでよかった」ということになりかねません。
最低限、必要な初期設定は以下の4点です。
① 金融機関連携
一つ目の初期設定は金融機関連携です。インターネットバンキングのログイン情報等をクラウド会計上で登録することで、預金口座取引の自動取込機能を使うことが可能になります。
インターネットバンキングを利用していない場合は、インターネットバンキングの利用開始から行う必要があります。
② クレジットカード連携
二つ目の初期設定はクレジットカード連携です。クレジットカードのWEBサービスのIDやパスワードをクラウド会計に登録することで、カード利用データの自動取込機能が使用できるようになります。
③ クラウドストレージの導入
三つ目の初期設定はクラウドストレージの導入です。どこからでも作業や閲覧が可能というメリットを活かすためには、DropboxやOneDriveなどのクラウドストレージサービスを導入し、その中に補助データ、帳票類などを保管しておく必要があります。
④ 勘定科目・補助科目・部門の登録
また、勘定科目や補助科目の設定、部門登録なども必要です。これについては、インストール型の会計ソフトと同様です。
(2) 財務分析機能は弱い
クラウド会計ソフト利用の留意点の二つ目は、財務分析機能が弱いということです。現状では、会計処理の効率化に主眼を置いたソフト開発がなされており、詳細な財務分析の機能が乏しいという傾向が見られます。
詳細な財務分析を必要とする場合は、クラウド会計のデータを活用しながら、独自にでデータ分析を行うか、別のサービスなどを利用する必要があります
ただし、インストール型の会計ソフトをもともと取り扱っており、クラウド会計サービスに参入したソフトの場合については、ほとんどがインストール型と同等の機能を使うことができます。
また、クラウド会計の機能は開発スピードが速く、新たな機能が開発されるたびに自動的にアップデートが行われています。ですので、今後は、財務分析機能もより充実していく可能性は十分にあります。
(3) 仕訳学習の更新
三つ目の留意点としては、間違って覚えさせると毎回、仕訳の修正が必要な場合があるということです。
ディープラーニング(仕訳学習)機能は大きなメリットですが、もし誤って学習をしている場合は修正が必要になります。
誤って覚えたままにしておくと、毎回間違った仕訳を提案してきます。そのため、その都度、仕訳自体を正しく修正しなければなりません。
ただ、学習内容の修正自体は簡単です。ですので、毎回、仕訳を修正するよりも、元々の学習データを修正する方がより効率的に使用できます。
(4) 基幹ソフトとの連動
四つ目の留意点は基幹ソフトとの連動です。会計ソフト以外の基幹ソフトがある場合、両者の連携による効率性がどのくらいあるかも考慮する必要があります。
たとえば、卸売業や商社であれば販売管理ソフト、建設業であれば現場管理ソフト、小売業や運送業であれば在庫管理ソフトなどを使用していることが多いとが考えられます。
クラウド会計そのものは便利な機能の多いソフトですが、クラウド会計の導入によって、基幹ソフトと連動していた機能が使えなくなり、経理業務の工数が増えるとなれば本末転倒です。
自動取込や仕訳学習、在宅勤務との相性などによる効率化がどの程度か、基幹ソフトとの連携によって実現できている効率化はどの程度か、この2つを比較することが必要です
4.お勧めクラウド会計は
お勧めのクラウド会計としては、MF(マネーフォワード)クラウド会計やfreee(フリー)があります。
(1) MFクラウド会計
MFクラウド会計とは、家計簿アプリからサービスをスタートさせたクラウド会計ソフトです。
POSレジとの連携機能があるなど、他社サービスとの連携できる機能が充実していることが特徴です。
また、MFクラウドシリーズの中に、請求書や給与などのクラウドサービスもあります。請求書や給与も同時に利用して連携させることで、会計処理をより効率化させることができます。
(2) freee
freeeは、スモールビジネスに特化したクラウド会計ソフトです。
見積書から請求書の作成発行、売掛金や買掛金の管理などの補助簿機能、予実管理機能、ワークフローや経費精算など、freeeのクラウド会計ソフト内で業務が完結しやすい機能設計になっています。
「スモールビジネスを、世界の主役に」というミッションを掲げて取り組んでいることが、この機能の充実に表れていると言えます。