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アパレル店の店長業務に慣れず苦労
私は一部上場企業のアパレル店の店長を12年間勤めました。20歳のときに新卒で入社し、3年かけて店長に昇進しました。
会社からの評価は、個人売上の金額がそのほとんどの割合を占めていました。その他の業務などに対する評価は二の次でした。いわゆる売上さえ取れれば、会社からの評価は高いという状態でした。
そのため、個人売上を上げることだけに力を入れて取り組んでしまい、店長になりたての頃は、店長業務に慣れず相当苦労しました。
慣れない報告業務、部下育成に在庫管理などに時間を取られ、接客に費やす時間は限られるようになりました。その分、お店の売上も下がる一方で、悪循環が続いていました。
その一方で、お店に慣れ始めた頃にはまた別のお店に異動になりました。私は男性で独身だったために会社のコマのような扱いをされていると思い、当時は思い悩んでいました。
そのうちに、このままでは自分の体も心もダメになり、何のために仕事をしているのかわからなくなるという危機感を感じるようになりました。
その自分の考え方を一新するため、接客業にまつわる本を買いあさりました。本を読んで勉強し、自分の考え方を変えようと思ったのです。
基準や考え方のすべてが自分本位、お店本意になっていた
休日に自己啓発の本を読んだほか、競合他店などにも足を運び、勉強しました。その過程で少しずつ「接客業とは何か」という糸口を自分なりに見つけることができました。
そして、今までの基準や考え方のすべてが自分本位、お店本意になっていたことに気づいたのです。
接客業に関する本によく「お客様満足業に徹する」などと書かれていますが、それまではあまり自分の腹には落ちていず、理解しきれていませんでした。
しかし、いろいろな勉強や体験をする中で、考え方が変わった結果、お客様に親身に接することができるようになりました。ふだんの自分の行動を一から見直し、外から客観的に見られるようになったことで、考え方が変わり、行動にも表れたのだと思います。
ボーダーラインを下回った対応や商品がクレームに繋がる
当時、私が身に着けた、接客業についての考え方を説明します。
接客はお客様満足業です。この言葉の本質を考えるために、まず、お客様満足の逆を考えてみます。満足の逆はクレームです。お店に言わないと気が済まないぐらいお怒りの状況ということです。
では、なぜクレームが起きるのかを考えます。クレームが起きるのは、お客様の最低限のボーダーラインをお店が下回ったときです。
具体的に言うと、お客様が最低限このお店に来れば、お客として最低限の挨拶とマナーある対応で、お客様が思う最低限の品が、最低限の範囲の価格で、何事もなく購入でき、最低限の期間その品を使うことができること。これがまさしくお客様の最低限のボーダーラインです。
このようにはっきり考えて、購入されている方はいないかもしれませんが、ボーダーラインを下回った対応や商品がクレームに繋がるのです。
笑顔を作っていないときにどんな顔をしているか認識する
また、接客ではよく笑顔の練習をします。口角を上げ笑顔を作る練習です。しかし、口角というのは日本人の7割がもともと下がっていると言われています。
口角を上げる練習は大切ですが、笑顔を作る時よりも、笑顔を作っていないふだんのときにどんな顔をしているか認識しておく方が大切です。
笑顔を作る時はお客様と接している時です。この時だけ笑顔を作っていたのでは、お店の前を通るお客様から見ると、口角が下がっている愛想のない、無愛想な入店しづらいお店という印象になってしまうのです。
ふだんから店頭に立つ時には、30%ほどの笑顔を意識し、徹底させることでお店の雰囲気は格段にアップします!
このように、お客様が思う最低限のボーダーラインを全ての分野で超えることで、お客様満足に近づくことができます。
一つ一つのこと全て意味を持たせ、お客様から見た時にどのように見えるか、どのように感じるかを考え、行動することが大切です。
そしてそこに、お客様に喜んでいただける気遣いや目配り、おもてなしの心があれば、お客様満足に繋がると考えています。