20数年前に出会った、今は亡き社長について書かせていただきます。
大学を卒業し、大手金融系の上場企業に入社
私は37年前に大学を卒業し、今では世間的にも名の知れた大手金融系の上場企業に入社しました。当時はバブルが弾ける前の時代です。ちょうど高度成長に陰りが見え始めた頃でした。
ただ、今とは違って、まだまだ定期預金金利も5%とか7%もついていた、社会そのものに力強さのあった時代でした。しかし、その時代も昭和の終わりとともに終焉を迎えることになります。
あえなくバブルが崩壊し、一生勤めるつもりでいた会社も業績が悪化し、“倒産”という二文字が頭の中を過ぎったりしたものでした。
そんな時、自宅に人材紹介会社からのDMが届きました。転職など考えてもいませんでしたが、大学卒業以来10年近く勤めた会社の業績が芳しくないのも事実でした。
そんなタイミングでの、転職紹介の会社からのDMだったので、一度会って話だけでも聞いてみようかという気になりました。
その人材紹介会社の担当者と会ったとき、先方は転職先として二社ほど私に提示してきました。そのうちの一社がある印刷会社でした。
そして、私がその後62歳を迎える今年まで、20数年間勤めた今の勤め先です。
中堅の印刷会社に転職して
紹介会社立ち会いで、形式的な社長面接がありました。面接のために訪れた事務所は、お世辞にもきれいと言える建物ではなく、当時の勤め先とは比べようのないほどでした。
いくら業績が下降傾向にあったとはいえ、建物や立地場所で比べれば、誰も転職などしないだろうというところでした。
しかし、世の中はバブルが崩壊し、都市銀行もおかしくなり、何も信じられない状況でした。
そうした状況の中で、成長を続けているこの汚い建物の会社は、この先も成長が見込まれるということで新たに人も採用しているのです。
ここは一つ、この汚い建物の印刷会社と、目の前にいる創業者のこの社長に賭けてみようと転職を決めました。
勤め先は、今でこそ千人を超える会社になりましたが、当時の社員数は300人いたかどうか。
印刷業としては中堅企業で、部署も大手企業のように分かれているわけでなく、総務や経理、人事なども形式的に設けたような感じでした。私は総務部門の課長として採用されました。
総務だからこれしかやらないという訳にはいきません。中小企業によくある、何でもやらなくてはならないポジションでした。
経験がないからできないという訳にはいきません。判らなかったら調べるなどして、とにかくやらなくてはなりません。
ただし、実際に何かを行う場合は社長に考えを示し、了解をもらってからになります。小さいこと、大きいこと、何でもです。
社長の真剣さを知ったことで、真剣に仕事と対峙できた
数千円の物品を購入する場合でも了解をもらってからになります。
こんな小さなことまで、いちいち了解を取らなければならない決まりに最初は辟易していました。ところが、社長に日々接し、社長の考え方を知るうちに、
「この方は真剣なんだ。それだから他人任せにせず、全て自分の目で確かめているのだ」
と考えるようになりました。
実際、今の世の中、大手企業の経営陣が自社で起こった不祥事について、部下に責任を転嫁したり、隠蔽したりすることをよく目にします。
今は亡き社長は、枝葉末節まで神経が行き届いている姿勢を自社の社員に示していました。
この方に出会って初めて、自分の勤め先に対しての責任感を認識できましたし、真剣に仕事と対峙できたと思います。
会社にはその会社としての文化があり、慣習といったものがあります。それぞれ経営を取り巻く事情や環境も違います。
会社の経営者や管理職の方がふだんどこを見て仕事をしているのかを社員は見ています。
自分の保身しか考えないような経営者や管理職が多くいる会社ならば、そこで働く社員も恐らく、マイナス評価がつかない程度にほどほどの仕事をするようになるでしょう。
そして、会社が本当に社員の力を必要としている時には、社員は逃げることをまず考えるような職場になってしまうのではないかと思います。
創業者やオーナー経営者なればこその会社に対する思いもあるのかもしれません。雇われ経営者としての限界もあるのかもしれません。
しかし、オーナー経営者であっても、雇われ経営者であっても、“嘘のない、真剣な姿を周囲に示せるかどうか?”。
それが一番大切という気がしています。
・有能で仕事ができ、部下への思いやりのある上司:
→ 女性事務職として出会った、尊敬できる上司。尊敬できない上司
・有能で仕事ができ、部下を守る上司:
→ 仕事への向き合い方を教えてくれた尊敬する上司
・部下への思いやりと気遣いのある上司:
→ 新入社員のときに出会った、父のように温かく尊敬できる上司
→ 上司としても、人としても尊敬できた私の上司
・知識豊富で思いやりのある上司:
→ 半端ではない知識量。寡黙ながらも優しく尊敬できる上司
・気さくで部下に成長のきっかけを与えてくれる上司:
→ 部下を尊重し任せてくれたキャパの大きな尊敬する上司
・厳しいながらも部下に成長のきっかけを与えてくれる上司:
→ 本気でぶつかってくれた厳しいながら尊敬する上司