契約更新の面談で保護者を怒らせてしまった!
当時社会人2年目、学習塾で教室長をしていました。
生徒に勉強を教える立場ではなく、学習ペースの管理や提案をすることが中心の仕事でした。
私の校舎には、ほかに相談役の上司、手助けしてくれる同期や後輩がおり、少人数で報告や相談を密にすることができる雰囲気でした。
1年ごとに生徒たちの契約更新をする必要があります。
生徒、保護者に次年度の学習プランを提示し、一人一人に料金説明をしていきます。この時期は毎年トラブルが起こりやすいのですが、私も大きな失敗をしてしまいました。
ある生徒の契約更新の面談をしていた時のことです。その生徒は、これまでの来校の様子などから、次年度の更新が少し不安だと考えていました。
おとなしい生徒で、かつ保護者ともうまくコンタクトをとることができなかったので、当日も少し不安に思いながら面談に臨みました。
これまでのデータや必要になりそうな知識を事前に叩き込んで、面談に臨んだつもりになっていました。
次年度のプランを提示し、一連の料金説明を始めたところ、保護者の方から
「この授業はうちの子は受けないの?」と聞かれました。
成績や志望校を考慮すると現状では必要ないと判断していたので、私は
「今年のご様子や志望校を考えると今は必要ないと思います」と答えました。
その言葉が引き金になり保護者の方が怒り始めてしまいました。
「思います」ということは自分の発言に責任が持てないのか、
そんな言葉が出るということは、自分の子供のことをちゃんと見ていないのではないかという点についてお怒りでした。
私は一瞬言葉に詰まってしまい、この件はクレームという形で本社に連絡が入りました。結局、契約更新をしてもらうことはできませんでした。
クレームの原因が何かを突き詰めて考えた
自分でもこの件を直属の上司と本部の長に報告していました。
本部長からは「君の未熟さが招いた退学だ」とお叱りを受け、
「20代前半の女性はただでさえ見た目で頼りないと思われやすい。だからこそふるまいや言葉遣いは誰よりも気をつけなければいけない」とアドバイスをいただきました。
直属の上司は、この件を同じ校舎に入っている社員全員に共有し、話し合う場を設けました。
私は単純に「今は必要ないと思います」という不確定な言葉を使ってしまったことで、保護者の方の不信感をあおってしまったと思っていました。
しかし、校舎関係者で話し合いをしているうちに単純な言葉遣いが原因ではなかったのではないかと思うようになりました。
上司から「信念のある『~だと思います』なら何を言われても怖くないよね」と言われてはっとしました。
私は「不安だなあ、自信がないなあ」と内心で思いながら面談していたのです。それが伝わってしまっていたことが一番反省すべきことだったということに気づきました。
なぜ不安が伝わる面談になってしまったのかを考えると、そもそもの提案に自信を持てていなかったのではないかということが思い当たり、上司や同僚の学習プランを見せてもらいました。
その結果、同じ高校、同じ志望校の生徒への提案が同期、後輩、私でほとんど同じものになっていることがわかりました。3人でなぜこうなってしまったのかを話し合い、データだけに頼りすぎて提案をしているのではないかという結論に達しました。
生徒の性格や生活パターンも踏まえた提案をするようにした
それ以降の契約更新の面談では、自分の提案に信念をもって伝えられるよう過去のデータや現状だけではなく生徒の性格や生活パターンを踏まえた提案をするように気をつけました。
後輩や同期ともこのやり方を共有してお互いにプランをチェックしあうようにしました。その結果、契約更新率が本部30校舎中2位という数値を出すことができました。
不信感を与えてしまった保護者の方、生徒に対してもっとできたことはあったのにという後悔はたくさんあります。
それでもこのクレームのおかげで同じような生徒を今後、絶対に出さないように、数字やデータといった客観的なものだけではなく温かみのある指導ができるようになりました。