転職と言いますと、まだまだマイナスのイメージがつきまとうようですが、転職に対してそんなネガティブな考えを持っているのは日本人だけだと思います。マイナスに考えるのでなく、自分の今後のスキルアップをしっかり考えて転職すれば絶対に成功します。
ただし、それまでの経歴とは違う業界に転職しようとしたときに、転職先で「全くの素人」と考えられ、時間も待遇も損をしてしまうようなことがあります。ですので、よく会社研究をして、面接の際にも質問した方がいいという話を書かせていただきます。
私自身は20代から教育業界の人間でした。いわゆる進学塾です。
正直に申し上げて、塾で授業を行っているのは一番の下のポジションになります。役職も何もないです。ただ、これが土台となる業界なので、まずは授業に専念するしかないです。
どんな子供たちでも理解できる授業をし、見事なまでの予想問題的中をする。ここまでできてようやく、役職も何もない下積み期間の終了です。その後は役職者になります。
私は20代後半で校長職に抜擢されました。進学塾という職場は人間関係があまり良くないです。基本的にプライドが高い人材が集まっているので、「自分は周囲よりも優れている」という考えの人間がほとんどです。校長職についてようやく、「ある程度の実力がある人材」という風に周囲の目が変わりました。
私自身は学校教育にあまり興味があったわけでもなかったので、36歳で転職を考えました。教育は教育でも障害児教育に興味を持ち、転職することにしました。
何件か職場見学や実習をさせていただき、どの会社にするか考えました。職場見学や実習をさせていただいて気づいたことは、同じように障害児教育に携わっていても、会社によって考え方が全く異なるということでした。
どういうことかと言いますと、障害児の世界が福祉業界であることから、進学塾出身者である私に対して、「まったくの業界未経験者」と短絡的に捉える会社も多かったということです。前職が進学塾と聞いて、「ただ勉強を教えていただけ」、そう考える方が多かったのです。
実際には、教育学部を卒業するには福祉の現場実習も必要ですので、最低限の知識は備えてます。また、現実の子供たちは十人十色です。受験したい子供たちの中には軽度の障害を持った子もいます。教育の世界にも障害児教育があることを理解している福祉業界の人間は本当にごく少数です。
そういったことを知らずに「ど素人扱い」されてしまうと、転職してもスキルアップも見込めません。今までの経歴も無駄ということになってしまいます。当然、待遇面でも損をします。
では、そうした障害児施設の方々がベテランかと言うと、面接の場で、こちらからの質問に答えられない面接官もおられました。また、実習させていただいた施設の現場で全く要領が悪いのに、その事業所ではベテランとされているような方もおられました。
そういう会社に入社してしまうと、その施設の水準に自分を合わせることになり、自分のスキルを逆に下げる結果になるのではないかと私は考えました。
また進学塾でも、教室の責任者ともなりますと、経理の知識も必要です。なので、私は経理の勉強をして、その資格も取得しています。しかし、障害児施設では、経理面を素人に任せている事業所がほとんどでした。こういう会社への転職では、自分のスキルアップを図ることはできないと私は考えました。
転職を考える方のきっかけは、人それぞれだと思います。その中で確実に言えるのは、雇用は一種の契約ということです。ですから、しっかりと自分を表現できるように心がけないと大損です。
私自身は教育業界から福祉業界に転職したわけですが、保有資格や経験値を考慮してくれる会社に転職したので、半年で役職がつき、待遇面でも1.5倍ほどになりました。それなりの権限も与えられているので、頭は使いますが、肉体的には楽ですし、休日も充実しています。
業界や職種を変える場合であっても、それまでの経験は面接の際に話した方がいいです。そうしないと入社後に周囲に素人扱いされ、指示されるだけになってしまいます。そうなると、毎日つまらないだろうと思います。
特に周囲に意外と思われるだろうこと、知られていないことはアピールするべきです。
例えば、タクシー業界では、最低限の福祉実習の受講がされていますし、英語の研修も導入されています。しかし国内ではそうしたイメージは全く定着していません。
経験値やできることをしっかり伝えないと、ただ職場に飽きたから逃げただけの転職と見なされ、マイナス評価がつく場合もありますので、その点は大いに気をつけられた方がいいと思います。