女性事務職として出会った、尊敬できる上司。尊敬できない上司

40代女性です。40代になるまでの10年間、事務職をしていました。途中で転職しましたが、勤めた二つの職場はまるで正反対でした。

私は尊敬できる上司と、まったく尊敬できない上司に出会いました。

尊敬できた総合病院の副院長

30代前半に勤めた職場は、その地域に昔からある総合病院でした。

尊敬できる上司は、私が採用されてしばらくして、副院長として赴任してきました。まだ50代前半の男性医師でした。見かけは若く、予想したのとは違い、爽やかな感じの人でした。

私は病棟などで事務職として勤務し、医療秘書という立場から、その医師と病棟の仕事を見ることになりました。そのうちに、その医師には多くの尊敬できる点があることがわかりました。

赴任した直後から仕事がバリバリできました。けれど、穏やかで怒ることもありません。

物言いは確実で的確。ふだんは人に仕事を任せています。頼まれるまで、自分は手を出しません。仕事のしかたは、自分が指図するというよりも部下の仕事を手伝うようなやり方です。

そばにいると安心して働けました。いざとなったら、この人に言えば何とかなる。何とかしてくれる。そんな気持ちでした。

そして実際に困ったときに、助けてくれて、しかも、「よくやった。良かった！」と言ってくれました。自分のことは二の次という感じでした。

もちろん病院ですし、厳しい世界です。良いことばかりではありません。けれど、医師は部下を叱責したり、怒鳴ったりすることは絶対ありませんでした。

看護師は女性が多い職種です。しかも辛い仕事ですから、もともとは悪口や陰口が日常茶飯でした。ですが、その医師は職場から見事に悪意を払いのけました。

その医師が職場の皆の信頼を得るようになったことで、初めてできたことだと思います。

おかげで、職場の皆で食事会などに何度も行くようになりました。忘年会、異動の歓送迎会など名目はいろいろで、幹事役も会によって違っていましたが、参加者はいつも多かったです。私も職場の人たちとの交流が楽しみになりました。

良い上司という存在がどれだけ有難いものか。病院でいろいろな人と出会う中で、次第にその医師を尊敬するようになりました。

私は結局、“白い巨塔”の病院の世界で、この医師とは関係のない人間関係から退職することになるのですが、この医師と出会えたことは今でも良い思い出です。

尊敬できなかったサービス会社の支店の所長

次に勤めたのは、教室などをしているサービス会社で、やはり事務の仕事です。グループ会社の支店で、開設されたばかりのところでした。仕事は理想的だったので、すごく嬉しかったのですが、所長がまるで尊敬できない人でした。

その所長がすることと言えば、職場の皆の仕事の監視です。

電話やデスクワークなどを見ていて、何かあったら、すぐに問題にします。叱責、暴言、八つ当たりは当たり前。気に入らないと罵声。言い方は乱暴。

「おまえ、やれ」、「何々しろ」など命令ばかり。仕事は丸投げで、質問してもまともな返答もなし。基本、会話はなしです。

家庭や金銭面で問題があったせいでもあったらしいのですが、自分中心な上司で、部下思いの人ではありませんでした。部下を信用せず、命令するだけの人の下で働くことがどれだけ辛いことか思い知りました。

尊敬できる上司の下では、上司は頼りがいがあり、どんなことでも正しく返答してくれて、安心して仕事ができていました。

自分の経験から考える尊敬できる上司とは

正反対な二人の上司をふり返って、今、私が思う“尊敬できる上司”とはこんな人です。

・ふだんは、部下に仕事を任せてくれる人。
・どうしたら、部下が良い仕事をできるかを考えてくれる人。
・自分の手柄を考えるのではなく、部下を労ってくれる人。
・“必ず部下は守る”という気持ちがあると感じさせてくれる人。

一番大事なのは、部下への思いやりだと思います。

職場にはいろんな人がいるので、辛いことや大変なことも多かったのですが、自分を信用してくれる、そんな上司が一人いるだけで、自分の場所がそこにあるような気持ちになれました。

尊敬できる上司って、“出会えただけで人生が豊かになる人”です。

もう一度、尊敬できる上司に出会いたい。そう思いながら、毎日を過ごしています。