仕事を気楽に考えていた新入社員時代
世の中がバブル景気で賑わっている時代に、私は大学を卒業し、金融関係の会社に就職しました。同期入社は私を含めて男性4名でした。配属されたのは、貸付審査および債権の回収部門です。
入社して3年が経過する頃、私は主に債権回収を管理する仕事に従事していました。
大学時代を気楽に過ごしていたこともあり、仕事に対しても気楽に考えていました。たとえミスしても、何とでも対応できるだろうと思っていたのです。
入社して4年目に、直属の課長が病気で長期入院することとなり、急遽、本店営業部から新しい課長が異動してきました。その後の数々の体験で、私の仕事への考え方が180度変革した話を書かせていただきます。
上司は仕事への向き合い方を教えてくれた
その日、私は前日の深酒で二日酔いであり、ダラダラと仕事をこなしていました。仕事は一人では処理できないので、アルバイト職員が数名、補助として仕事を手伝ってくれていました。
その日の仕事は、大事な資料の整理でしたが、「多分、大丈夫だろう」と思って、アルバイト職員に全てを任せ、私は別の仕事をしていました。
終業時間が過ぎて、アルバイト職員も帰り、手伝ってもらった仕事内容を確認の上、取りまとめていたところ、集計額が合わないことが判明しました。
残業して確認を続けましたが、何度確認しても原因が全く解明できず、私はやけになっていました。
そんな時、課長が
「もう遅いから自宅に帰って休みなさい。明日またがんばろう」
と言ってくれました。
すぐに片づけて頭を下げ、課長を残して先に帰りました。
翌日、目覚めも悪く、重い足取りで出社して昨日の資料を確認したところ、付箋が貼られており、「いつもご苦労さま」と書かれていました。
私が帰った後、集計額が合わない部分をチェックして解明してくれていたのです。
自分自身の仕事があるにも関わらず、です。
すぐに課長の所へ行くと、笑顔で「今日もがんばろう」の一言。
普通であれば、「何をやってるんだ!気をつけろよ」と叱責されてもおかしくない状況です。
それなのに、他の職員の前で怒ることをせず、課長自身の仕事に対する姿勢をもって、仕事への向き合い方を教えてくれました。
私は叱られなかったことが、叱られるよりももっと胸に響きました。
苦情事案にも真摯に対応する上司
また、別の日の話です。
ある来客者への対応に失敗して、苦情事案に発展してしまいました。最初は当人同士で対応していましたが、何度か来られるうちに部外者も同席しての、本当に収拾がつかない状況にまで発展してしまいました。
その時も課長は一切逃げることなく、そのお客さんに真摯に対応し、時間はかかりましたが、無事解決することができました。
そのお客さんは
「いい上司がいて良かったな。おまえもしっかり勉強しろよ」と言って帰られました。
課長に頭を下げて
「すみませんでした」と謝罪したところ、
「いいいんだ。今、おまえは将来に向かっていろんな仕事をしている。いろんなことにも遭遇する。おまえが同期の中でも一番よい体験をしている。将来のために今しっかり勉強するんだ。また、明日からがんばろう」
と激励してくれました。
私は涙がとまらず
「ありがとうございます」と何度もくり返していました。
その後、私は今までの仕事に対する甘い考えを改めて仕事に打ち込みました。そして、
“いつかこの課長のように自分の姿を通して部下に仕事を教えられる人になりたい”と決意しました。
そして自分自身が部下を持つ立場になった
現在に至るまで何度も仕事を辞めてしまおうかと思ったことがありましたが、この課長の心を無にしないためにも歯を食いしばって、がんばってきました。
そして今、部下を持つ立場になり、この課長の真似ではありますが、部下を守り育てることに力を注いでいます。
部下に対しては、まずは部下の仕事の能力、熱意、家庭環境等を徹底して把握して、仕事上だけでつながるのではなく、心でつながるようにしています。
仕事上の立場があり、できないこともありますが、まずは自分自身が先頭に立って、部下を引っ張っていくことが大事だと思っています。
そうすることで、仕事の結果も出るものと確信しています。
・有能で仕事ができ、部下への思いやりのある上司:
→ 女性事務職として出会った、尊敬できる上司。尊敬できない上司
・部下への思いやりと気遣いのある上司:
→ 新入社員のときに出会った、父のように温かく尊敬できる上司
→ 上司としても、人としても尊敬できた私の上司
・知識豊富で思いやりのある上司:
→ 半端ではない知識量。寡黙ながらも優しく尊敬できる上司
・気さくで部下に成長のきっかけを与えてくれる上司:
→ 部下を尊重し任せてくれたキャパの大きな尊敬する上司
・厳しいながらも部下に成長のきっかけを与えてくれる上司:
→ 本気でぶつかってくれた厳しいながら尊敬する上司
・仕事に対して真剣な上司:
→ 真剣な姿を見せることで責任感を教えてくれた尊敬する社長