43歳女性です。10年ほど前の20代後半の頃、私はある出版社の雑誌編集部にて、
平社員の編集者として働いていました。
その時に私が悩んでいたこと、そして葛藤や苦しみの中からどのように
脱却したかをお話ししたいと思います。
Contents
上司は短気で、気性が荒く、ワンマンな独裁主義者
当時、私の上司である編集長は50代の女性でした。
よく言えば感性が豊かで、強いリーダーシップを発揮できる天才編集長ですが、
悪く言えば短気で、気性が荒く、ワンマンな独裁主義者。
そんな一癖も二癖もあるボスなので、当然、部下たちの不平不満、
ストレスは相当なものでした。
ボスのいないときは皆、愚痴や陰口を言い合っていたものです。
私自身、そうした激しい上司と仕事をすることのストレスに加え、
上司に反発する同僚たちの悪口を聞くのがとても嫌で、
職場の不調和な雰囲気、人間関係にずいぶん悩まされました。
なにしろ、仕事の相談、報告をする度にダメ出しされ、
キツイ言葉で否定されることがほとんどなのです。
次第に自信をなくし、怒鳴られるのはないかといつもビクビクし、
本当に苦しい日々を送っていました。
さらに、追い打ちをかけるように、同僚2~3人から
上司の悪口を聞かされるので、私の上司に対する嫌悪感はますます増幅し、
いつのまにか「怒り」へと発展していきました。
あまりのストレスで卵管に炎症が…
そんな中、日付が変わるまで仕事をしていたことも祟り、
心身ともに疲労度MAXになった私は、
下腹部の右側に痛みを感じ、婦人科を受診しました。
診断結果は、「卵管の炎症による痛み」でした。
その後、疲労を取るため、
よく効く気功師の先生に治療してもらいに行ったのです。
そこで先生に言われた一言が衝撃的でした。
「あなた、上司にものすごい怒りを感じてるでしょう?
その怒りが、婦人科の病を引き起こしていますよ」
以前から体の不調をズバリ言い当てる不思議な先生でしたが、
今回は心の中まで見抜かれ、ビックリ。
「はい、その通りです」
と正直に認める以外ありませんでした。
上司へのマイナスな感情は、いつしか自分自身の体を破壊していたのです。
そう知ったとき、ぞっとしました。
また、「馬鹿げている」とも思いました。
怒りや憎しみ、ストレスは、何をも生み出すことなく、
自分の体を痛めつけているに過ぎなかったからです。
自分の考え方を変えることにした
そこで私は、考え方を変えることにしました。
まず、上司をいたずらに憎むことは止めました。
そして、上司の立場に立って、上司を理解しようと努めました。
以前、読んだある書籍に、
「理解すれば憎しみはなくなる」
というフレーズがあったことを思い出したからです。
「自分が上司の立場だったら、どうだろう?」
そう考えてみただけで、実際、いろいろな発見がありました。
毎月毎月、売り上げの数字を気にしなくてはならず、
ものすごいプレッシャーに押しつぶされそうになっているであろうこと。
実は、ものすごい孤独な立場であること。
編集部員が有能であれば、良い企画を打ち出し、
優れた記事に仕上げられて、上司を支えられるけど、
果たして私は理想の編集部員だろうか。
上司の求める仕事をしているだろうか。
そう考えると、自分の甘さ、至らなさに反省することだらけです。
仕事の質を上げようと真剣に努力していないにもかかわらず、
「上司に認められたい」という「ずるさ」も、
自分の内にあることを発見しました。
また、「編集部というちいさな枠で考えずに、
会社全体、社会全体のマクロの視点から見たらどうだろう?」
とも考えました。
よく考えると、自分たちにとってはイヤな上司でも、
過去に目覚ましい実績を上げ、才能が買われて編集長として
会社が抜擢した優れた人材です。
編集長は人脈が豊富で、ひと声かければ協力してくれる
有名人の友人がたくさんいます。
そうしたことでも、「どこか人を惹きつける魅力がある人」
であることは間違いないのです。
くせはあっても、社会に役立ち、感謝されるような人なのです。
上司が会社の内外と戦っていることに気づいた
さらに、上司の長所は何だろうと考えたとき、
さまざまなことが思い返されました。
たとえば、売り上げが伸び悩み、会社の幹部会議で批判されたとき、
必死で編集部を護ろうとする上司。
平社員の知らないところでも、上司は実は、
会社の内外と戦っているのかもしれない、と思いました。
怒りもするけれど、部下一人一人の良さを認めてくれているところもあります。
完全に人格否定までは、していなかったのです。
また、食事をおごってくれたり、
お菓子を差し入れしてくれたり、何かと気前のよい上司。
不器用だけど、そうしたところで部下をねぎらってくれていたんだな、
と思います。
このように、上司の長所をいろいろ発見していくうちに、
次第に怒りや不平不満は小さくなり、むしろ感謝の思いが湧いてくるようになりました。
心が穏やかになり、仕事も前向きに取り組めるようになりました。
そして、上司や職場に変化が起きた
そして、私の気持ちや態度が変わるのと同時に、不思議なのですが、
上司も次第に優しくなってきたのです!
私のことを信頼してくれるようになり、ダメ出しが減り、
いろいろな仕事を任せてくれるようになったのです。
以心伝心ってこういうことかな、と思いました。
でも、もし、上司の態度が変わったことがたとえ偶然だったとしても、
私自身の心境が変わったことのメリットは計り知れず、
考え方を変えて本当に良かったと思います。
婦人科疾患もすっかり良くなりましたし。
ちなみに、悪口や陰口を言っていた同僚ですが、次々に寿退社してゆき、
すっかりメンバーが入れ替わりました。
すると職場の雰囲気も変わり、
以前よりも和気あいあいとしたムードになっていったのです。
当時のギスギスした職場にいた私の先輩の一人にこう言われました。
「あなたがいてくれたから、過酷な環境でもやっていけたのよ。ありがとう」と。
私がよいムードメーカー、クッション材となっていた、
と評してくださった方もいて、とっても嬉しかったです。
自分の体験から考える、人間関係の調和のコツとは
今、職場の人間関係で悩んでいる方にアドバイスするとしたら、
こう言ってあげたいです。
人間関係の調和のコツは、「相手の長所とつき合うこと」。
相手の長所を尊敬し、もし、その人のおかげで
自分が恩恵にあずかっていることがあれば、素直に感謝することです。
相手の短所ばかり見ていてもお互いに苦しいだけで、何も生み出しません。
尊敬や感謝が一つも湧いてこない場合、辞職もやむを得ないもしれません。
ただし、自分の心の態度が変わらなければ、
次の職場でも同じ問題にぶつかる可能性がありますから、
できるだけ自己変革に立ち向かうことをお勧めします。
そしてもう一つアドバイスできるとしたら、
「苦しい状況は永遠に続かない」ということです。
人事異動や退職で、今のメンバーはいつか必ず入れ替わっていきます。
私自身、結婚・妊娠を機に、その編集部を退職しました。
退職する時はすでに人間関係で悩むことはなくなっていたので、
円満退社することができました。
そして悩みのタネだった編集長も、私が退職して1年後、
人事異動でその職場を去りました。
いつかこの状況は終わるので、いたずらに逃げようとしたり、
まわりを変えようとするよりも、
「今自分にできることは何か、この試練が自分に教えようとしていることは何か。
自分は今、どのように変わらなくてはいけないのか」
を探ったほうが絶対に得です!
試練の中でつかんだものは、その後の成功、幸福にきっとつながるはずです。
今、苦しみの渦中にある方が、希望の光を見出せますことをお祈りします。