自分を無能に感じて萎縮していた新人時代
21歳だった、ピカピカの新人時代。
特殊な職業ということもあり、仕事の段取りどころか内容も初めてのことばかり。右も左も分からない不安な新人時代を、私は周囲のサポートで乗り越えました。
当時、やったこともない簡易的な測量の仕事を任された日のことです。
仕事内容には確かに測量の項目がありました。そして、仕事上、経験や資格を必要としないとはされていたものの、本来は測量士になるには国家資格が必要です。私は緊張していました。
簡単な計算をして、触ったこともない機械を操作し、現場に出て仕事をします。慣れない機械、慣れない環境、初めてだらけの仕事に私は混乱し、一日のうちにミスを連発しました。
今思えば、始めのうちは誰しもそのようなものですし、周囲も「やれやれ」という顔こそしますが、特別怒る人もいませんでした。
それでも入りたての新人であった私は自分を無能に感じて委縮してしまい、さらにミスに繋がるという負の連鎖に陥ってしまいました。
傍から見ればフォローすることは容易な初歩の失敗でしたが、負の連鎖に陥ってしまうと、周囲も自分自身も見えなくなってしまうものです。
誰に助けを求めれば良いのか、何をどのように聞けば解決するのかさえも分からない、頭が真っ白な状態になってしまいました。
「どうしたの?」
と先輩に声をかけられたところで、
「分からない部分が分かりません!」
と答えることしかできずに情けない思いをしました。
そうすると先輩は、
「何が分からないのか分からないのでは、自分も何をしてあげられるか分からない」
と困った顔をします。
しかし次には丁寧に手順をおさらいし、問題の箇所を見つける手助けをしてくれたのです。
先輩に助けられて作業に集中できるようになった
分からなくなったら始めから手順をやり直す。簡単なようで仕事においては基本的な要素です。
また、それで解決しない場合は数値のチェック、書面の情報との照らし合わせ、書類が正しいかどうかの確認など、細かな要素やチェックポイントなどがあります。
そのようなチェックポイントをその都度教えてもらい、いつしか私は作業に集中することができるようになったのです。
今思えば、迷惑な新人だったことでしょう。
次々と降りかかる、やったこともないような仕事に振り回され、本来ならば、問題なくこなせるような簡単な事務仕事でさえ、ミスをするほど委縮していました。
それでも周囲が根気強く仕事を教えてくれたのは、周囲の人たちの仕事に対する意識が高かったからでしょう。
私が大学を出たばかりの女性であるという経歴や性別とは関係なく、周囲の人たちは仕事を一緒にこなす一人の人間として私を指導してくれたのです。
会社の一員として見てくれている先輩や同僚の態度は、私を常に励ましてくれました。人は本来、仕事の前に対等で、役職ごとに仕事の内容が変化しても、人間としての上下はないことを教えられました。
「仕事に一生懸命になれ」という言葉をよく聞きます。職場の人々は厳しくも公正でした。そして、全員が仕事に打ち込んでいました。
笑いの絶えないという雰囲気とは異なりますが、無駄な緊張を強いられることはなく、居心地の良さを感じられる職場でした。温かな職場にもさまざまな種類があることを私は知りました。
自信を喪失し、周りが見えなくなったときに立ち返る原点
新人時代に先輩が教えてくれたことは、私の中で仕事の地盤となっています。
今でも頭の中が散らかってどうしようと焦る日には、新人の頃の教えを思い出します。
職に就いて何年か経つと、仕事をする上で必要な地盤作りが上手く行かず、困っている人を見かけるようになりました。新人だけではなく、ベテランであっても、仕事に押しつぶされて地盤が揺らぐときがあるのです。
自信を喪失し、周りが見えなくなったときに立ち返る原点が、誰にも必ずあると思います。私の場合は、委縮していた、新人時代のあの日が私の原点です。
私は、先輩にサポートしてもらうことで、自信につながる小さな体験を積み重ねることができました。そして、その小さな体験の積み重ねは、次第に私の視界を大きく広げてくれました。
失敗して自信を失くすことがあっても、新人時代の失敗を乗り越えてきたことを思い出すと、私はいつも自信を取り戻すことができるのです。