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少し前にお会いしたある経営者さん。創業の経緯や仕事に対する考え方などを伺いましたが、真面目で誠実な人柄が感じられる方でした。
利益もきっちり出されており、貸借対照表からもしっかりした経営姿勢が感じられたので、そのようにお伝えしたら、「税理士さんが厳しくてきっちりしているから、助かっています」とのこと。
税務調査でも何の問題もなく、二日間の予定だったところ、一日で「申告是認」で終了だったそうです。
1.「税務署は見ている。」
この話を思い出したのは、最近「税務署は見ている。」(飯田真弓著)という本を読んだから。
著者は、26年間、国税調査官として税務調査に関わってこられた後に退職して、研修・セミナー講師などをされている方です。
同書に「税務調査でのお土産」についての話がありました。著者が元国税調査官と知った経営者から、よく
「税務調査って、『お土産』を用意しておかないとダメだんですよね?」と聞かれるそうです。
「お土産」とは、税務調査に入った時に”手ぶら”で帰りたくない調査官のために、軽い修正申告の余地を残しておき、それで早めにカタをつけること。
私も、今度、税務調査に入られるという経営者の方から「お土産は必須」と聞かされたことがあります。なので、この問いに対する著者の回答に興味津々。
で、実際に「お土産」が必要かどうかというと…。
2.税務調査にお土産は必要?
著者の答えは、「税務調査に『お土産』などありません。都市伝説の類でしょう」とのこと。
何も不正を発見できなければ、その調査はそのまま申告是認となるそうです。
また、調査官も人間なので、前回調査で申告是認となった会社は、あまり行きたくない気持ちが働くそうです。調査に行っても、また何も見つからないかもしれないと思うためのようです。
なお、税務調査の実調率は、法人で4.9%、個人で0.8%しかないそうです。(2006年実績)
ということは、95%、つまり、100社中95社の会社には税務調査が来ていません。単純に計算すると、5年間累計で 78%の会社、10年間累計でも 61%の会社には税務調査が入っていないということになります。
税務調査で誠実にきちんと対応し、修正申告書を提出することなく、「申告是認」で税務調査を終えることが、税務調査に来られにくい会社につながるとのことです。
「お土産」が必要と思っている経営者さん、必ずしもそんなことはないみたいですよ。
私も勉強になりました。