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森金融庁長官が進める大改革。「捨てられる銀行」の時代は本当に実現するのか

森金融庁長官が進める大改革。「捨てられる銀行」の時代は本当に実現するのか

投稿者
  2016年7月2日

知り合いの金融機関の方に勧められて、「捨てられる銀行」(橋本卓典氏著)を読みました。

1.「捨てられる銀行」とは

新書です。帯が大きい・・・。帯に大きく「型破りのエース 森金融庁長官が進める大改革は何を目指すのか?」とあります。↓

捨てられる銀行

森金融庁長官が就任したのは、2015年7月7日。今から一年前です。

その森長官が目指すものは何か。

2.森長官が目指す「金融業」とは

2015年9月18日に公表された「金融行政指針」には、具体的施策として、「企業の価値向上、経済の持続的成長と地方創生に貢献する金融業の実現」が謳われています。

http://www.fsa.go.jp/news/27/20150918-1/01.pdf(「平成27事務年度 金融行政方針」p.15参照)

平たく言うと、「銀行の先にいる地域の企業や経済の成長こそが最も大事だ」ということです。

「銀行の持続可能性」や「銀行の健全性」を重視してきた金融行政が大きく転換したことになります。

本書では、森長官就任以降の金融庁の取り組みや、森長官にそうした改革に踏み切らせた、過去の経緯が綴られています。

特に地域金融機関の経営に大きな影響を与えた「金融検査マニュアル」と「信用保証制度の拡充」についての記述がかなり刺激的です。

以下少し抜粋して引用します。

(1)「金融検査マニュアル」とは

【金融検査マニュアル】

●金融検査マニュアルは1999年7月に公表された。(中略)「不良債権を生み出さないための銀行経営」にほとんどの銀行はシフトしてしまった。

●会計ルールとして、貸出債権のうち回収不能な部分を貸倒引当金として計上する場合がある。(「引き当て」という)

●検査マニュアルを理解する上で注意すべきなのは、健全性確保のために銀行に引き当てを求めているだけで、貸すべきか貸さないかを決める「融資判断」そのものを捻じ曲げるよう求めているわけでもない。

●金融庁が今、注目している事業再生に本格的に取り組み、地域経済を背負う覚悟を持つ金融機関は「引き当て」と「融資判断」を切り分けて経営している。つまり、たとえ引き当てていても、事業内容や将来性が評価できれば融資するという共通点を持つ。

●森長官は2015年12月15日付「フィナンシャルタイムズ」に寄稿し、金融機関がリスクマネーを供給すべきだとの持論を展開した。リスクマネーを供給できるか否かは「引き当て」の有無にとらわれず、「融資判断」ができる経営になっているのかを見れば、一目瞭然である。

(2)「信用保証制度の拡充」とは

【信用保証制度の拡充】

●2002年に金融庁が金融検査マニュアルを改定し、不良債権処理のために短期継続融資(短コロ)も厳格に判断するように見直したため、金融業界では、本来は短期の運転資金でも保証付きの長期融資に切り替える動きが相次いだ。

●実質的に元本部分は返済せず、金利部分だけを返済すれば良いという短期の手形貸付では、返済しなくて済む元本部分は、中小企業にとっては「疑似資本」に近い効果を持つ。

●保証付きの長期融資では、元本返済と保証料の支払いを事業者に迫るために資金繰りが常に圧迫されてしまう。

●プロパー融資は地域金融機関の基本であり、保証付き融資はあくまでも信用補完のためのものである。(中略)しかし、100%保証の代位弁済が金融機関と事業者の行動、考え方を変えてしまった。

●地域金融機関の多くは、事業者融資を検討する際は、信用保証制度の利用から入るのが当然という思考回路に陥ってしまっている。「保証付き融資が営業の入り口となってしまっている。

この金融庁の改革がどこまで現場に浸透するのかわかりませんが、きっちりと事業計画書を作成している真面目な企業にとっては、大きなチャンスになりうると言えるでしょう。

一読をお勧めします。

3.「捨てられる銀行」概要

はじめに
第1章 金融庁の大転換 
1 金融庁の新方針
  金融庁のエース
  不良債権処理官庁からの脱却

2 「処方箋を持ってこい」
  中小企業1000社をヒアリング
  財務局長の抵抗
   森長官の危機感

3 中小企業ヒアリングから見えてきたこと
  地元を顧みない地銀
   顧客の関心は金利だけ?
  中小企業へのヒアリングは続

4 ベンチマークの導入
  地方創生に貢献しているかをベンチマークに
  3つのKPI

5 検討会議
  外部の声を金融庁に
  会議メンバーに地銀が驚愕
  地銀の面従腹背は許さない

6 事業性評価
  「銀行マンはどんどんバカになっています」
  森長官が書き上げた「事業を見よ」のレポート
  マツダ復活のカゲに広島銀行の事業性評価
   広島銀行の斬新な企業分析
  優良地銀の実例を収集していた森長官
  あえてチェックリストはつくらない

第2章 改革に燃える3人
1 森信親長官の真意
  役人の尺度では測りがたい異端児
  事故後の東京電力処理に奔走
  森監督局時代の日本郵政上場
  省益ではなく国益
  大蔵スキャンダルへの失望
   儀式的な会議を一蹴
  検査局は壮大なる無駄をしているのではないか
  資産査定の中止
   過去を否定する森長官の破壊力
  水平的レビュー
  森ペーパーの衝撃
  地銀再編論者という誤解
  本物の扇子

2 森長官が抜擢したキーマン・日下智晴
  検討会議の調整役
  地元活性化を志し広島銀行へ
  バブル崩壊とマツダ
  企画の日下
  銀行倒産のピンチ
  しまなみサービサー設立
  財務情報だけでは地域は何一つ守れない
  ユニークな発想
  森長官が日下を一本釣りした事情

3 地域金融のプロフェッショナル・多胡秀人
  地域金融の最古参
  地域金融との出会い
  リレーションシップ・バンキングの審議会
  予期せぬ病魔
  巨星と改革長官

第3章 「選ばれる銀行」になるために
1 金融検査マニュアル
  金融検査マニュアルという病巣
  膨大なチェックリストの矛盾
  「預金者保護」は無責任

2 マニュアル行政の恐ろしさ
  金融検査マニュアルの誕生
  現場レベルでマニュアルは形骸化
  森検査局長を驚愕させたマニュアル経営
  「引き当て」と「融資判断」の切り分け

3 信用保証制度による目利き力の喪失
  政治の道具にされて拡大
  ノーリスクで目利きを放棄
  長期融資重視がもたらしたもの
  横浜銀行の内部文書
  リーマン・ショックで増幅
  処方箋を出せない病院
  金融機関への抑止力

4 短コロを知らない金融マンたち
  旅館の女将へのヒアリング
  13年ぶりの短コロ復活
  中小企業の首を絞めた金融行政
  金融仲介機能の活性化に燃える元日銀マン
  短コロで銀行の行動が根本から変わる

5 リレバンを取り戻せ
  森長官のリレバン宣言
  竹中平蔵と地域金融
  地元企業を支えるのに時間をかける
  金融機関のコンサル業務解禁
  無反応だった地銀
  考えることをやめた地域金融
  鎖を欲しがる地域金融
  金融庁はなぜリレバンに失敗したか
  森長官の問題意識

6 営業目標と人事評価
  地元の活性化に貢献という理想
  営業ノルマ達成の数字がすべて
  銀行の集うを押し付ける営業マンを評価

7 忘れられた事業再生
  地域金融の本丸は事業再生
  銀行系サービサーと事業再生ファンドの実情
  中小企業再生支援協議会の問題
  法令順守だけでは地域金融は守れない
  メインバンク制の難問
  地域金融の王道

第4章 新しい4つのビジネスモデル
1 稚内信用金庫 リスクをとるための「やせ我慢経営」
  積極投資で産業構造転換
  地域のためのリスクはとる
  自己資本60%
  地域に溶け込む
  拓銀破綻時の対応は語り草
  中興の祖の後継者
  最北信金トップの覚悟

2 北國銀行 営業ノルマを捨てた地銀
  人口減少に備えて顧客最優先営業
  収益至上主義から脱却した業績精度
  現場の近くへ
  顧客本位の人と組織へ
  営業ノルマ撤廃
  コストとは地域貢献である
  雨の時に傘を取り上げない
  新たな地域金融モデル

3 きらやか銀行 本業支援というビジネスモデル
  中小企業を元気にするしかない
  劣化していた「聞く力」
  共に活きる
  本業支援で利ざやが改善
  金利競争は不毛なビジネス
  公的資金で中小企業活性化に注力

4 北都銀行 「地域課題解決」で再スタート
  屈辱的再スタート
  女性主導店舗
  地域課題解決銀行、4つのビジネス
  チャレンジする営業マンタート

終 章 森金融庁改革の行方
1 地域金融の化学反応
  森長官就任10ヵ月の変化
  見えてきた森改革の次の課題

2 新時代の金融庁
  銀行の健全性とは何か
  成果を検証するベンチマーク
  金融検査マニュアルの終焉

3 捨てられる銀行
  ある地銀を医療法人の話
  事業を見ない地域金融の代償

※「捨てられる銀行3 未来の金融『計測できない世界』を読む」については以下の記事をご参照ください。

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この記事を書いた人

知的資産とキャッシュフローの両面から、企業のビジョン実現をサポートする中小企業診断士・認定キャッシュフローコーチ® https://www.officeair.net



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