会議を開いても、決められない。決めたことが実行できない。そんな組織は「意思決定のプロセス」に問題を抱えているのかもしれません。
問題発生時にリーダーが「正しい解決策」の発見に気を取られてしまい、「意思決定のプロセス」を定めようとしないことがその原因なのかもしれません。
1.「決断の本質」とは
「決断の本質」(マイケル・A・ロベルト著)は、リーダーが下すべき決断について書かれた本です。以下、内容紹介です。
“意思決定が成功するかどうかは、意思決定の質(すぐれた意志決定かどうか)だけが問題なのではなく、意志決定の結果が実行されるかどうかによる。
意志決定に実効性を持たせるためには、意思決定に関わる人たちの間に[共通理解]と[コミットメント]が形成される必要がある。
共通理解があれば、全員が「意思決定の精神と一貫した」やり方で行動する可能性が高まる。十分な理解が不足したコミットメントはマネージャークラスによる「分別を欠いた献身」を招きやすい。そうなると、計画の実現に邁進しても、それは間違った解釈による行動かもしれない。
リーダーが必要とするのは、障害が起きた時に、計画を修正した代替案を見つける能力を組織の全員が備えていることである。理解が共有されていれば、自主的で協調性のある行動が自然に生まれる。
共通の理解があってもコミットメントが不足していると、計画推進にマイナスの影響が生じる。難問を解決して予期せぬ障害を乗り越えるためには「もうひと頑張りしよう」という積極性が要求される。[共通理解]と[コミットメント]はどちらが欠けてもいけない。
そのために重要なのは「意思決定のプロセス」。
意志決定に関わるメンバーが「意思決定プロセスは公正で妥当性があった」と感じられることが必要。
意思決定プロセスを公正と感じるためには、
・自分の意見を述べる機会があり、自分の意見も検討され、選択される可能性もあったと感じられること。
・他者の意見に同意しない理由を話し合う機会があること。
・最終決定の根拠が明快に理解できること。
が必要。意志決定プロセスに妥当性があったと感じるためには
・十分な情報が収集され、全員に提供され、選択肢が準備されていること。(透明性の確保)
・それぞれの選択肢について、不確実性とリスクを含めた十分な検討がなされること。
が必要。リーダーにとって重要なことは「どんな決断を下すか」と同じくらい、「どうやって決断するか」。その意思決定のプロセスを決め、自制心をもって運営することである。
「決断の本質」とは、初めから自分の考えを押し通すのではなく、メンバーから多様な意見を引き出すための「プロセス」を準備し、決断に至るまでの過程を正しく運営することである。”
2.「なぜそうなのか」という根本を共有するためには
知的資産経営のワークショップでは、経営者と社員の方々に自社の顧客提供価値や課題について意見交換していただき、認識合わせをしながら、将来の方向性を見出すということをしています。
今までに支援した企業では
・(経営者)方向性を明確化できただけでなく、「なぜそうなのか」という根本を社内で共有できたことが一番よかった。
・(従業員)会社が目指していることが初めて理解できてよかった。目標達成のためにみんなと力を合わせてがんばっていきたい。
という意見・感想をお聞きしています。メンバーが意見交換しながら方向性を見出していく方法は一見、非効率なようですが、意志決定後の実行まで考えると、もっとも効率的な方法であるのではないでしょうか。