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1.「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」概要
「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」は、森下勉先生が、2018年4月に出版された本のタイトルです。
私は、森下先生が主宰する知的資産経営研究会に所属し、知的資産経営について、森下先生に師事しています。
知的資産経営とは、知的資産を活用して、業績向上を図る経営手法です。知的資産とは、企業の競争優位の源泉となる、企業独自の強みです。
知的資産には、特許などの知的財産も含みますが、知財だけでなく、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランドなども含みます。財務諸表には載らない、定性的な資産であって、競争優位の源泉となる資産が知的資産です。
なお、知的資産のことを「見えざる資産」と称するのは、知的資産が財務諸表に載らないために、社外からはわかりにくく、また、経営者や社員自身も認識していないことが多いためです。
本書において、森下先生が説明されている、知的資産経営の導入・推進手順は、以下の通りです。
1. 社内外の知的資産を洗い出し、
2. 顧客の「なりたい明日」(その先の顧客への提供価値)を明確に捉え、
3. 他社との違いや、顧客提供価値に向かう各資産の価値を評価し、
4. その違いを繋げ、とがらせる活動(戦略)を決め、
5. それを実践し、見直して次の活動を行うこと「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」(森下 勉)p.5
本書では、この手順を進めるためのフォーマットである「Ben’sメソッドⓇ」やその簡易版である「ええとこ活用経営Ⓡ」を掲載し、使い方を詳しく説明しています。
また、実際に知的資産経営を実践している企業事例を紹介している他、2009年から継続して、融資先への知的資産経営導入を支援している但陽信用金庫の取り組みについても紹介しています。
事例企業として掲載されているのは、姫路ハウスサービス、宮野食品工業、中農製作所、あんしんケアねっと、イカリ消毒沖縄、昭和電機の6社です。
森下先生の考え方のユニークな点の一つは、業績向上のポイントを「流れを整理すること」とされている点です。
以下は、まえがきからの引用です。
業績向上のポイントは「流れを整理」することです。
「流れ」とは、事業の流れ、業務プロセスの流れ、価値の流れ、企業内部や企業を取り巻く顧客などのステークホルダーとの円滑なコミュニケーションの流れです。
「流れているもの」は価値です。見える資産である物的資産や財務資産以外に、人材力や技術力、協力会社との連携力などの「見えざる資産」の価値です。
(中略)
「流れ」は循環しています。「流れ」の要素は「知的資産」です。どのような「知的資産」がどのように流れているのか、その流れを整理することで事業価値向上に繋がります。その結果、流れをスパイラルアップさせていくことが企業価値向上になると考えています。「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」(森下 勉)p.5
この考え方がそのまま「“流れ”の整理だけで会社が良くなる」という書名になっています。
確かに、業績が悪化している会社の状況を見せていただくと、社内のコミュニケーション不全に陥っている場合がほとんどです。また、業務の属人化や縦割り思考など、業務の流れも滞り、結果として、お客様に価値提供する流れが滞っています。
2. 知的資産経営における支援者の関わり方
知的資産経営の主体は、あくまでも企業自身です。
本書の134ページに、戦略レポートの作成について、「たくさん『書いてみる』ことがポイントである。書くことで脳は真剣に考えようとするのだ。」とあります。これも、知的資産経営レポートの作成者が企業経営者や社員であることが前提となっています。
さて、2018年5月に、本書の出版報告会「一里塚の会 知的資産経営の本流を目指して」が開催されました。その報告会に出席された、森下先生のクライアント企業の社長が森下先生について、こんなことを言っておられました。
「森下先生とお話すると、いつも頭がすっきりし、ワクワクしてやる気が出ます!」
話をすると、頭がすっきりして、ワクワク、やる気になれる。これはまさしく、「パートナー型コンサルタント」のあり方です。
また、森下先生のクライアント企業が、中小企業診断士の会報に掲載されたときも、クライアント企業の社長のコメントとして、以下のように掲載されていました。
「接していて感じるのは、自分の思いや考えをしっかり聞いていただけるということ。
丁寧にヒアリングをしていただいた上で、問題点をあぶり出し、優先順位をつけて、どのように実行していけばいいのか、いくつかの選択肢を与えていただけるので、適切な意志決定につながりました。
今後の事業展開においても、頭の中で考えていることをうまく引き出してもらい、実現に至る道筋を描くサポートをしていただきたいと思います。」一般社団法人 大阪府中小企業診断協会・一般社団法人 大阪中小企業診断士会 会報「中小企業診断士」2018.7.1号
頭の中で漠然としている、経営ビジョンや想いを引き出して、そこに至る道筋を明らかにしていく。問題点を明確化して、意思決定の手助けをする。これも「パートナー型コンサルタント」としてのあり方です。
知的資産経営支援では、経営者自身も意識していなかった、企業独自の強みの言語化や業務プロセスの見える化・共有化に取り組みます。
見えていないモノの見える化・可視化に取り組むことによって、経営者の意思決定を支援するという意味で、知的資産経営支援はまさしく、「パートナー型コンサルタント」の本領と言えるでしょう。
また、知的資産経営は、経営者自身の気づきを促す支援であるとともに、社内の認識を共有化する経営手法です。
私自身、知的資産経営に多く関わっており、知的資産経営の導入企業の経営者から、以下のようなコメントをいただいています。
「知的資産経営に取り組んだことで、経営ビジョンが明確になったことはもちろんよかったが、社員と一緒に取り組んだことで、なぜそれをしなければならないのかという根本を共有できたことが一番よかった。」
知的資産経営は、経営者と社員が主体的に推進する、業績向上の経営手法なのです。
3.「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」内容
書名:「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」
著者:森下 勉
発行年月:2018年4月
発行所:株式会社西日本出版社
ISBNコード:978-4-908443-29-9
本書の内容は以下の通りです。
目次
まえがき
第一章 企業事例
第一項 姫路ハウスサービス
第二項 宮野食品工業所
第三項 中農製作所
第四項 あんしんケアねっと
第五項 イカリ消毒沖縄
第六項 昭和電機
第七項 但陽信用金庫第二章 “流れ”の改善
第一項 量、質、時間の考え方
第二項 昭和電機の場合
第三項 台形モデル®
第四項 顧客のプロセスを見る
まとめ第三章 ええとこ活用経営のポイント(ストーリー化)
第一項 木、花、実の成果は根っこ
第二項 知的資産の分類
第三項 戦国三大名の場合
1. 信長の「革新的、合理的な思考」(人的資産)
2. 兵農分離(組織資産)
3. 経済政策(組織資産)
4. 連盟(関係資産)
5. 物的資産を媒介にする
6. 豊臣秀吉の場合
7. 徳川家康の場合
第四項 三井高利の場合
1. 三井高利の沿革
2. 三井高利の経営環境
3. 三井高利のビジネスモデル
4. 三井高利の持続的成長のために
第五項 たくましい会社の特徴第四章 BEN’sメソッドの使い方
第一項 全体図
第二項 ワークシートに詳細を記載する
1. 沿革気づきシート®
2. プロセス見える化シート®
3. 違い発見マトリクス®
4. 変化予測表
5. 経営環境への対応 優先順位評価
6-1.現在価値ストーリー
6-2.将来価値ストーリー
7.活動のマイルストーン
第三項 価値創造のアクションプラン
まとめ第五章 「ええとこ活用経営®」(BEN’sメソッド®ミニ版)
第一項 ええとこモデル
第二項 ええとこ探シート®
第三項 資産リスト
第四項 ストーリー化
第五項 変化予測表とアクションプラン
第六項 戦略レポート
第七項 知的資産経営報告書の作成第六章 ローカルベンチマーク
第一項 ローカルベンチマークの背景
第二項 ローカルベンチマークの活用方法
第三項 ローカルベンチマークは誰が活用するべきか
第四項 ローカルベンチマークの記載方法第七章 本質を見抜く目はコミュニケーション能力である
WHYの5段活用
非財務指標のヒアリングのポイント
森下勉の日々のつぶやき
まとめあとがき
著者プロフィール「“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順 知的資産経営のすすめ」(森下 勉)
※知的資産経営については以下の記事も合わせてご参照ください。