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キャッシュフロー経営の代表的な指標をわかりやすく解説

キャッシュフロー経営の代表的な指標をわかりやすく解説

投稿者
  2018年3月17日

指標

「キャッシュフロー経営」とは、現金の収支(収入と支出)を重視した経営です。
「キャッシュフロー経営」については、「キャッシュフロー経営とは。わかりやすく解説」
をご参照ください。

ここでは、キャッシュフロー経営の代表的な指標についてわかりやすく解説します。

(1)キャッシュフローマージン

キャッシュフローマージンは、キャッシュフローの観点で収益性を見る指標です。営業キャッシュフローが売上高に占める比率を表しています。

キャッシュフローマージン(%)=営業キャッシュフロー÷売上高×100

収益性の指標としては、会計上の利益で計算する営業利益率などがあります。ただし、営業利益はキャッシュではありません。

キャッシュフローマージンは、売上がどの程度、キャッシュの獲得につながったかを見る指標です。

(2)フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローとは、経営者の判断で自由に使い道を決めることができる資金のことです。フリーキャッシュフローが潤沢な企業は、経営上の意志決定における自由度がより高い企業と言えます。

フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足して算出します。

フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー

営業キャッシュフローとは、事業活動によるキャッシュフローです。プラスであることが基本です。投資キャッシュフローとは、将来の売上のための投資に関わるキャッシュフローです。投資をしますので、通常はマイナスです。

事業で稼いだお金から、将来に向けた投資を差し引いた残りが、フリーキャッシュフローということです。

業績のよい会社では、キャッシュフローの状況として以下のような傾向が見られます。

項目 +- 要因
営業キャッシュフロー 事業活動で稼いでいる
投資キャッシュフロー 積極的な設備投資
フリーキャッシュフロー 営業CFの範囲内での投資
財務キャッシュフロー FCFで借入金返済
キャッシュフロー FCFの範囲内での借入金返済・繰越金の確保

(CF:キャッシュフロー、FCF:フリーキャッシュフロー)

たとえば以下のような感じです。

項目 金額 計算式
営業活動によるキャッシュフロー 100 A
投資活動によるキャッシュフロー △55 B
フリーキャッシュフロー  45 A+B
財務活動によるキャッシュフロー △30 C
キャッシュフロー  15 A+B+C

(営業活動によるキャッシュフロー、営業キャッシュフロー、営業CFは同じことです。投資CF、財務CFも同様です)

フリーキャッシュフローを計算するときに
営業キャッシュフローに投資キャッシュフローを足す理由

フリーキャッシュフローの算出方法を「営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いて求める」という説明をされている文章を見かけますが、正確ではありません。

理由は、キャッシュフロー計算書では、キャッシュインをプラス、キャッシュアウトをマイナスで表現するためです。

投資をすると投資キャッシュフローはマイナスです。

「営業キャッシュフロー - △投資キャッシュフロー」を計算すると足し算になってしまいます。

損益計算書では、費用をマイナス表示しないので、そうした勘違いにつながりやすいのでしょう。

なお、投資キャッシュフローがプラスになる場合もあります。土地や建物、設備、有価証券などの売却金額が設備投資額を上回ったときです。

業績の悪い企業では、資金捻出のため、あるいは、事業撤退の理由で、土地、建物、設備、有価証券などを売却することがあります。

キャッシュアウト

(3)簡易キャッシュフロー

キャッシュフロー計算書を作成している企業では、フリーキャッシュフローの算出ができますが、多くの中小企業は、キャッシュフロー計算書を作成していません。

そのような企業で簡易的に使われている指標が、簡易キャッシュフローです。
簡易キャッシュフローとは、簡易的に、簡単に算出したキャッシュフローです。

簡易キャッシュフローは、当期純利益に減価償却費を足し戻して算出します。減価償却費は、支出を伴わない費用ですので、減価償却費の分だけキャッシュがあると考えて、足し戻すのです。

簡易キャッシュフロー = 当期純利益 + 減価償却費

ただし、特別損益の額が多い場合は、特別損益の影響を受けないように以下のように計算します。

簡易キャッシュフロー = 経常利益+減価償却費-法人税等

(4)キャッシュ・コンバージョン・サイクル

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC:Cash Conversion Cycle)とは、材料や商品の仕入のために現金を投下してから、最終的に販売代金として、現金を回収するまでの期間のことです。

材料や商品の仕入のために投下した現金は、次に現金化されるまでは、支払いなどに使うことができません。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルが長ければ、「寝ている」お金が多くなるので、より多くの所要運転資金が必要ということになります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルが短ければ、資金が効率的に運用されているため、より少ない所要運転資金での経営が可能になります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは以下のように算出します。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル
=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

回転期間は、月数で表す場合と日数で表す場合がありますが、月数では、小数点の感覚がピンとこないので、日数の方がわかりやすいでしょう。

日数の場合のキャッシュ・コンバージョン・サイクルの算出方法は以下の通りです。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル
=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数

・売上債権回転日数=売上債権÷売上高 ×365日
・棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上原価×365日
・仕入債務回転日数=仕入債務÷売上原価×365日

(参考)ローカルベンチマーク:営業運転資本回転期間

経済産業省が2016年3月に提供開始した、企業の現状診断ツールがあります。「ローカルベンチマーク」と言います。略して「ロカベン」です。(下記サイトからダウンロートできます。Excel形式です)

「ロカベン」では、売上持続性、収益性、生産性、健全性、効率性、安全性の6つの観点で、企業の財務状況を診断します。

この6つの指標の一つに「営業運転資本回転期間」があります。

営業運転資本回転期間=(売上債権+棚卸資産-買入債務)÷(売上高÷12)
・売上債権=売掛金+受取手形
・買入債務=買掛金+支払手形

買入債務とは仕入債務のことです。計算式を見るとわかる通り、これは、月数でのキャッシュ・コンバージョン・サイクルです。

ロカベンの6つの指標の中で、営業運転資本回転期間は健全性指標として使われています。

キャッシュコンバージョンサイクル

(5)有利子負債キャッシュフロー倍率(債務償還年数)

有利子負債キャッシュフロー倍率とは、借入金を何年で返せるだけの、キャッシュフローを本業で稼いでいるかを表す指標です。

借入金のうち、有利子負債の残高を営業キャッシュフローで割ることで算出します。

有利子負債キャッシュフロー倍率 = 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー

有利子負債とは、金融機関からの借入金と社債です。

中小企業では、経営者などの役員が会社に資金を貸しつけているケースを見かけます。これらは、役員借入金であり、有利子負債には含めません。

キャッシュフロー計算書を作成していない中小企業では、営業キャッシュフローの代わりに簡易キャッシュフローで割ることで算出します。

有利子負債キャッシュフロー倍率 = 有利子負債 ÷ 簡易キャッシュフロー

キャッシュフロー経営の指標という意味で、ここでは、「有利子負債キャッシュフロー倍率」という用語を使いましたが、指標が表す意味を考えると、「債務償還年数」の方が意味を直感的に理解しやすいでしょう。

・債務:返さなければいけないお金=借金
・償還:返すこと
・年数:年数
債務償還年数:
借金を返すのに何年かかるか

有利子負債キャッシュフロー倍率(債務償還年数)は、10倍以内(10年以内)を基本と考えます。

債務償還年数?有利子負債キャッシュフロー倍率?キャッシュフロー対有利子負債比率?

債務償還年数 = 借入金残高 ÷ 営業キャッシュフロー
有利子負債キャッシュフロー倍率 = 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー
キャッシュフロー対有利子負債比率 = 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー

計算式を見るとわかるように、債務償還年数と有利子負債キャッシュフロー倍率とキャッシュフロー対有利子負債比率は同じことを表す指標です。

つまり、本業の稼ぎをすべて借金返済に充てた場合、何年で借金を返せるかという指標です。

このうち「債務償還年数」がもっとも直感的に意味を理解しやすい言葉です。金融機関などで使われている用語です。

キャッシュフロー対有利子負債比率は、決算短信で使われている用語です。

(ただし、キャッシュフロー対有利子負債比率は、正確には「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」と「キャッシュ」と「フロー」の間に「・」が入ります)

なお、2017年2月10日、日本取引所グループは新しい決算短信・四半期決算短信の作成要領を公表し、キャッシュフロー関連指標の記載は任意になっています。

日本取引所グループ「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」
http://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/

(参考)ローカルベンチマーク:EBITDA有利子負債倍率

経済産業省の「ローカルベンチマーク」の6つの指標の一つに、EBITDA有利子負債倍率があります。このEBITDA有利子負債倍率は、債務償還年数(有利子負債キャッシュフロー倍率)とよく似た指標です。(EBITDAは、イービットディーエーと読みます)

EBITDA有利子負債倍率の場合は、借入金から現金・預金を差し引いて計算します。現金・預金の保有額はそのまま借入の返済に充当できるという理由からです。

また、借入原資としては、営業利益に減価償却費を足した数字を使います。

EBITDA有利子負債倍率=(借入金-現金・預金)÷(営業利益+減価償却費)

EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)を直訳すると、利息と税金を支払う前の利益、プラス減価償却費です。

税引前当期利益に支払利息と減価償却費を足した値のはずですが、ロカベン(ローカルベンチマーク)では簡易的に、営業利益と減価償却費を足して計算しています。

ロカベンの6つの指標の中で、EBITDA有利子負債倍率は健全性指標として使われています。

※キャッシュフロー、キャッシュフロー経営、減価償却費については以下の記事をご参照ください。

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この記事を書いた人

知的資産とキャッシュフローの両面から、企業のビジョン実現をサポートする中小企業診断士・認定キャッシュフローコーチ® https://www.officeair.net



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