農業の担い手育成・経営規模拡大に携わった会議体験

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農業の担い手育成・経営規模拡大に携わった会議体験

農業

地方公務員となって10年目、転勤で農政部門を総括している課の中の集落農場化の普及、定着を担当している班に配属になった時のことです。

集落農場化とは、農業の担い手育成、経営規模の拡大を進めるための施策です。その背景には、農業者が個別に、農業設備、農業労働力、農産物の生産規模などに取り組んでも、実際には成果を出すことは難しいということがあります。集落単位で取り組むことで、無駄なく効率的で、しかもある程度の規模の農業経営ができるという考え方です。私が勤務していた県では、県の目玉農業施策として実施されており、ある程度の成果を上げていました。

この施策をモデルとして、国は全国にこの施策を普及すべく、既存のハード事業にリンクさせたソフト事業として地域農政振興事業を創設し、全国の市町村で実施することになりました。そして、この事業の県の担当を私が仰せつかったのです。

当県の施策をモデルとして考えられた事業ですから、当県ではすでに下地はあります。ですから、その実施、運用は簡単なのではないかと思われたかもしれませんが、私はこの担当に配属になって1年目の、言わば新人でした。この事業の推進をさて、どのように進めたらいいのかと随分悩みました。

まず、このソフト事業の実施主体は集落などの農業者団体なのですが、県としては直接農業者団体とやり取りするのではなく、市町村を窓口として実施しなければなりません。そのためには市町村の担当者を集めて、この事業の趣旨、進め方、実施した場合農業者団体にどのようなメリットがあるのか説明会を開かなくてはなりません。

県内には約70の市町村があり、一同に会してとはいかないので、県北、中央、県南の3地域で開催することとして、準備に取りかかりました。それに先立って、自らこの事業をよく理解しないことにはお話にならないので、県が進めている集落農場化事業の内容、地域農政振興事業の内容、そしてこの2つの事業をどのようにリンクさせて進めていったらいいのか、上司からアドバイスをいただいて、そのたたき台を作成しました。

そして実際の市町村への通知、会場の準備、説明会資料の作成、質疑想定事項の作成と行うことは山ほどありました。特に会議資料の作成は、その時点では国の補助事業実施要項しかない訳で、このお堅い文書で説明したところで理解してもらえるとは思われなかったので、この要領を元に、県の集落農場化事業の内容を合わせて、分かりやすい内容で、「独自の実施に当たって」というタイトルで、自分で作成しました。

作成に当たっては、当時は今のようにパソコンが普及しておらず、せいぜい和文タイプライターで原稿を作成し、それを印刷またはコピーして作成するというもので、タイプ打ちは内容を考えながら打っていくものなので、勤務時間中は困難だったため、毎日自宅に持ち帰って作成しました。

でき上がった時には、本当にぐったりしていたものです。しかしこれは準備段階にしかすぎません。市町村担当者への説明、事業実施集落、団体への説明、事業実施、補助金交付申請、事業実施途中経過の把握、実績の取りまとめ、補助金の交付、国への実績の報告とこれからするべきことはたくさんあります。

まずは市町村担当者への説明会からスタートです。最初は県北地方の市町村からでした。次第は県の担当課長挨拶に始まって、担当者である私の説明、そして質疑応答という順序で進めました。

特に質疑応答は重視しました。質疑応答がなければ、果たして市町村担当者が内容、進め方などを理解してくれたかどうか判断がつかないからです。質疑があった方がどういったことが問題なのか、疑問なのか分かるのです。

幸い質問が沢山出て、むしろさばき切れないほどでした。これは中央、県南いずれの説明会でも同様で、担当者の私として手ごたえを感じたものです。

そして途中経過を省きますが、年度末の実績取りまとめ、補助金交付、国への報告と1年目は何とか無事終了しました。しかしこの事業は単年度事業ではなく、継続事業として2年目以降も続きます。

そして最終的にはこの事業の目的である農業の担い手の育成、経営規模の拡大に資することが大事なのです。しかし、当時、事業は始まったばかりでした。この事業が今後どんな役割を果たしていくのか期待するのみという気持ちでした。

それから数十年が経過し、私はすでに地方公務員を退職しましたが、現在日本の農業はどうなっているのでしょうか。なかなか一事業で解決とはいきませんでした。

しかし諦めてしまってはいけません。これからも色々な方策を講じて、日本農業を守らないといけないと考えています。