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キャッシュフロー経営の成果とは?会社のお金の流れを見える化して経営判断に役立てる方法

キャッシュフロー経営の成果とは?会社のお金の流れを見える化して経営判断に役立てる方法

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  2018年2月12日

意志決定

1.なぜ会社のお金の流れを把握することが必要なのか

経営者の中には、明確に経営ビジョンをもって経営されている方が数多くおられます。
経営ビジョンというのは、会社が目指す、ありたい将来像のことを言います。

今までお会いした経営者さんにはさまざまな方がおられました。
苦労して開発した製品を世の中に広めたいという思いで経営されている経営者の方がおられました。

会社を大きくすることは考えていない。従業員がずっと幸せに仕事ができればいい。
そんな考え方の経営者の方もおられました。

会社によって、経営ビジョンはさまざまです。

ですが、どんな経営ビジョンであっても、その前提として必ず必要なことがあります。
それは、存続しつづけるということです。

会社がどんな経営ビジョンをもっていたとしても、存続しつづけなければ、
その経営ビジョンを実現することはできません。

存続しつづけるために必要なことがいくつかあります。

長期的にもっとも重要なことは、お客様から選ばれつづけるということです。
短期的には資金ショートを起こさないことです。

資金ショートを起こしてしまうと会社は存続の危機を迎えてしまいます。
そうならないように、会社のお金の流れを把握することが必要です。

2.会社のお金の流れを把握している経営者は多くない

会社のお金の流れを把握していることは、このように企業存続にとって重要なことですが、会社のお金の流れを把握している経営者は実はそんなに多くありません。

多くの経営者の方は営業出身か技術者出身です。
営業が得意だったり、技術的なことに詳しくはあっても、経営数字についてはあまり得意とされていません。

その結果として、経営数字を経理担当者や会計事務所任せにしてしまい、会社のお金の流れを把握できていないストレスを抱えている方も多いようです。

そうした経営者の方が誤解されていることがあります。

それは、経営数字を把握するためには、会計や簿記の勉強をしなければならないのは?
という誤解です。

売上グラフ

実は、経営数字を把握するために、会計や簿記の勉強をする必要はありません。
また、決算書の一言一句を隅々まで把握している必要もありません。

経営判断を的確に行うために必要なことは、会計や簿記の正確な知識ではなく、会社のお金の流れの大局的な把握です。

正確な知識が必要であれば、経理担当者や税理士さんに聞けばいいのです。
経営者が的確に経営判断を行うために必要なのは、経営数字の全体像の把握です。

経営者があまりに専門的すぎる仕訳や税金の話を学んでも、あまり経営にプラスになることはないでしょう。

経営者が会社のお金の流れを知る必要があるのは、あくまでも経営判断を的確に行うためです。

たとえば、借入の額はいくらまでが適正か。設備投資額はいくらまでが適正か。
今の収益構造で新規採用してもよいか。
販売数量を増加させるためにはどの程度までなら値下げしてもよいかなどです

経営者が経営判断のために、会社のお金の流れを大局的に把握する方法として、経営数字を図式化して理解するという方法があります。

3.会社のお金の流れは図式化で理解しやすくできる

たとえば、次の例を見てください。

【損益計算書】(単位:千円) 【貸借対照表】(単位:千円)

売上高 164,944
売上原価 109,491
  原材料費 42,534
  外注加工費 31,689
  労務費 29,125
  減価償却費 3,522
  その他 2,621
売上総利益 55,453
販売費及び一般管理費 46,037
  人件費 19,619
  減価償却費 373
  その他 26,045
営業利益 9,416
営業外収益 7,275
  受取利息・受取配当金 234
  雑収入 7,041
営業外費用 2,899
  支払利息 321
  雑損失 2,578
経常利益 13,792
特別利益 1,912
特別損失 1,225
税引前当期純利益 14,479
法人税等 3,317
当期純利益 11,162
資産の部 負債の部
 流動資産 115,297  流動負債 66,502
  現金及び預金 52,658   仕入債務 27,536
  売上債権 38,255   短期借入金 2,860
  棚卸資産 18,077   リース債務 879
  その他 6,307   未払金 4,000
 固定資産 54,843   預り金 26,105
  有形固定資産 50,214   その他 5,122
   土地 29,619  固定負債 27,724
   建物 14,286   社債 10,000
   構築物 320   長期借入金 8,000
   機械及び装置 3,109   リース債務 792
   工具、器具及び備品 1,034   長期預り保証金 2,481
  リース資産 1,846   その他 6,451
  無形固定資産 4,629  負債合計 94,226
   ソフトウエア 4,629 純資産の部 75,914
 株主資本 75,914
  資本金 10,000
  利益剰余金 65,914
   その他利益剰余金 65,914
   繰越利益剰余金 65,914
資産合計 170,140 負債純資産合計 170,140

このような決算書や試算表に並ぶ言葉や数字の羅列を見て、すぐにその内容を把握できる人は少ないでしょう。では、このように図式化するとどうでしょうか。
お金のブロックパズル
先ほどの数字の羅列とは違って
・売上高と総資産(=流動資産+固定資産)の大きさがほぼ同じくらいだとか、
・流動資産の方が流動負債よりも多いとか、
・株主資本の大きさが総資産の4~5割くらいはありそうだとか

いくつか気づけることがあるのではないでしょうか。

今、指摘した点は、財務分析の際に見る視点です。

売上高と総資産の比率を示す指標を総回転率と言います。
経営効率を示す経営指標です。

流動資産と流動負債の比率を示す指標を流動比率と言います。
安全性を示す経営指標です。

株主資本と総資産の比率を示す指標を自己資本比率と言います。
経営の安定度を示す指標です。

計算する必要は特にないのですが、念のために電卓をたたいて、数字を確認してみます。

総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産→ 164,944 ÷ 170,140 = 0.97回
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100→ 115,297 ÷ 66,502×100 = 173%
自己資本比率 = 株主資本 ÷ 総資産 × 100→ 75,914 ÷ 170,140×100 = 45%

総資産回転率0.97回とは、ぜんぶの資産を使って、資産以上の売上を生み出せていないということですので、収益性が高い事業とは言いにくいでしょう。

流動比率173%は高い数値なので、安全性は高いです。自己資本比率45%も比較的高いので、これまで着実に利益を上げてきた会社と判断できます。

図にすることで、そういったことが計算しなくとも、直感的に把握できます。

ただし、これでは現状分析に過ぎません。こうした経営数字を経営上の意志決定に役立てるにはどうすればいいでしょうか。

4.会社のお金の流れを意志決定に役立てるには

図を使って経営上の意思決定ができるようにするために、この図を少し変更します。その下準備として、2つのことをします。

一つ目は、損益計算書上の費用を変動費と固定費に分解すること。
二つ目は、キャッシュフローを計算しておくこと。
の二つです。

計算

変動損益計算書に組み替える理由は、売上の増減などが利益に与える影響を確認できるようにするためです。

変動費は、売上が上がると増加し、売上が下がると減少する費用です。売上がゼロのときは変動費もゼロになります。たとえば材料費や外注加工費です。

固定費は売上の増減に関わりなく発生する費用です。たとえば人件費地代家賃や水道光熱費、通信料、リース料、支払利息などです。

変動費は売上の変動に伴って変動します。固定費は売上が増減してもあまり影響を受けません。売上が変化したときに、利益がどう変化するかを検討するには、費用を変動費と固定費に分ける方がわかりやすいのです。

損益計算書上の費用を変動費と固定費に分解することで、意思決定に必要な経営数字のシミュレーションがしやすくなります。

下表は、上記の損益計算書を組み替えて作成した変動損益計算書です。

【変動損益計算書】(単位:千円)

売上高 164,944
変動費 74,223
粗利 90,721
固定費 76,929
  人件費 48,744
  その他固定費 28,185
経常利益 13,792
特別利益 1,912
特別損失 1,225
税引前当期純利益 14,479
法人税等 3,317
当期純利益 11,162

これを図式化すると以下のようになります。固定費はさらに人件費とその他固定費に分けました。これは、人件費配分を考えるためです。
お金のブロックパズル
人件費が粗利に占める割合のことを労働分配率と言います。労働分配率について経営者と社員が合意しておくことで、粗利を意識した働き方を促すことも可能になります。

これで、売上高の変化や費用構造の変化のシミュレーションができるようになりました。次にキャッシュフローを計算します。

キャッシュフローを計算する理由は、損益計算書だけではわからないキャッシュの動きを把握することです。当期純利益は損益計算書の一番下の数字です。

会社のお金の流れを把握していない場合、当期純利益を会社に残ったお金と勘違いしてしまうことがあります。当期純利益は、支払いを済ませて、最後に会社に残ったお金を表しているわけではありません。

当期純利益から更に、借入金の返済や設備投資などを行います。借入金の返済や設備投資をしたことによって、キャッシュフローがマイナスになることはよくあることです。

利益が出ていても、資金ショートして支払いができなくなれば、倒産の危機です。そのようなことにならないためには、利益とともにキャッシュフローを把握しておくことが重要なのです。

上記の損益計算書と貸借対照表をもとに作成したキャッシュフロー計算書を以下に示します。(キャッシュフロー計算書の作成には二期分の貸借対照表が必要です)

【キャッシュフロー計算書】(単位:千円)

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー
  当期純利益 11,162
  減価償却費 3,895
  売上債権の増減額 △ 1,888
  棚卸資産の増減額 △ 1,485
  その他の流動資産の増減額 372
  仕入債務の増減額 △ 939
  その他の流動負債の増減額 413
  その他の固定負債の増減額 △ 1,823
  営業活動によるキャッシュ・フロー 9,707
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー
  土地の増減額 221
  建物の増減額 △ 2,281
  構築物の増減額 △ 8
  機械及び装置の増減額 △ 537
  工具、器具及び備品の増減額 △ 69
  リース資産の増減額 △ 790
  ソフトウェアの増減額 △ 1,810
  投資活動によるキャッシュ・フロー △ 5,274
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー
  短期借入金の増減額 △ 550
  長期借入金の増減額 △ 919
  リース債務の返済による支出 △ 239
  財務活動によるキャッシュ・フロー △ 1,308
Ⅳ 現金及び現金同等物の増減額 3,125
Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高 49,533
Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高 52,658

キャッシュフロー計算書を見ると、当期純利益は 11,162千円ですが、そこから設備投資し、借入金を返済し、また所要運転資金が増えたことで、キャッシュフローとしては、3,125千円にとどまったことが確認できます。

先ほどの変動損益計算書の図にキャッシュフロー計算書をプラスするとこうなります。(図をわかりやすくするために経常利益から右は拡大して描いています)

お金のブロックパズル

当期純利益 11,162千円にまず減価償却費 3,895千円を足し戻します。減価償却費が支出を伴わない費用であるためです。ここから、

・所要運転資金の増加などで 5,350千円マイナス、
・設備投資で 5,274千円マイナス、
・借入金の返済で 1,308千円マイナス、

その結果、キャッシュフローとしては、3,125千円にとどまったことが把握しやすくなりました。

この図を使うことで、会計に慣れない人でも会社のお金の流れがイメージできるようになります。この図のことを「お金のブロックパズル」と言っています。

この図で表された、利益からキャッシュを減らす要因のうち、借入金の返済額は事前にわかっている数字です。また設備投資額は、経営ビジョンをもとに計画的に立案できる数字です。

ということは、会社の費用構造がわかり、借入金の返済額がわかり、経営ビジョンに基づいた設備投資計画を立案できれば、逆算思考で必要な目標売上高を設定できるようになります。

打ち合わせ

つまり、目標売上高などについて根拠ある意志決定ができるようになり、社員が納得できるような説明ができるようになるということです。

6.キャッシュフロー経営で得られる成果とは

キャッシュフロー経営とは、利益だけを注視するのでなく、キャッシュフロー(資金の流れ)についても重視して経営を行うことを言います。

「お金のブロックパズル」を活用したキャッシュフロー経営は特にこのような経営者に向いています。

・会計が得意ではなく、会社のお金の流れが把握できていないことがストレスに感じる。
・根拠ある売上目標を設定して、社員とともに目標達成にむけて取り組んでいきたい。
・努力した社員にはボーナスなどでしっかり報いつつ、会社の利益も増やしていきたい。

「お金のブロックパズル」を活用したキャッシュフロー経営で得られるメリットとしては、以下が挙げられます。

・会社のお金の流れが把握できないストレスから解放されて事業に専念できるようになる。
・逆算思考で計画的に経営を行えるようになり、経営品質が向上する。
・目標と実績の検証を定期的に行うことで、会社にPDCAサイクルが定着し、取り組みの実効力が高まる。
・粗利と人件費のバランスを意識することで、社員に報いながら会社の利益を増やせるようになる。

その結果、経営ビジョンが実現できることがキャッシュフロー経営の最大の成果と言えるでしょう。

5.ビジョンを実現するキャッシュフロー経営とは

「お金のブロックパズル」を使って、会社のお金の流れを確認するのは、会社を存続させ、会社の経営ビジョンを達成するためです。

「お金のブロックパズル」を使うことで、お金の流れが漠然としていることの不安が解消され、本業に専念できるようになります。

また、経営数字を把握した上で、KKD(勘と経験と度胸)ではなく、判断基準や根拠をもとにした経営上の意志決定ができるようになります。

キャッシュフロー経営は目的ではありません。キャッシュフロー経営は、あくまでも経営ビジョンを達成するためのツールです。

だから、「ビジョンを実現するキャッシュフロー経営」なのです。

※なお、「お金のブロックパズル」についての詳しい説明については以下の記事をご参照ください。

投稿者

この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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