1.「良い戦略、悪い戦略」(リチャード・P・ルメルト著)
良い戦略とは何か、悪い戦略とは何かを事例をもとに説明した戦略書です。
著者が考える良い戦略とは、
「ほんとうに重要な問題を見極め、最も効果の上がるところに持てる力を集中投下すること」です。
しかし、同時に、これは非常に厳しいことだとも説明します。
“何かに集中すれば、それ以外を捨てることになるからだ。”
日本の多くの組織が良い戦略を立案できないのは、「捨てる」ことができないからではないでしょうか。
特に外よりも内を向いている組織では、組織内調整が重要事項であって、関係者の全員が合意することが何よりの重要課題であったりします。
こんな組織では、「捨てる」なんてことはなかなかできません。
2.「悪い戦略」の事例
著者は、この本で「悪い戦略」の事例を上げて、このように説明しています。
“この社長が抱えていたのは、製品開発や競争ではなく、根本的には組織の問題だった。…(中略)
どれほど複雑な状況であっても、必要とされる行動は意外にシンプルなものだ。ただ多くの場合、それをやらずに済ませたい、済ませられるだろう、という希望的観測が邪魔をする。
おそらく大勢の人が、対立や矛盾を鮮やかに解決できる魔法のような方法がきっとあるにちがいない、と考えているのだろう。”
おそらく、実効性の高い戦略の多くには痛みが伴います。
それを避けて、関係者が賛意を示すことに価値を見出すのか、組織の成果を高めることに戦略の価値をおくのかを著者は問うています。
“矛盾する目標を掲げたり、関連性のない目標にリソースを分割して配分したり、相容れない利害関係を無理に両立させようとしたりするのは、資金も能力もあるからこそできる贅沢である。だが、それらはどれも悪い戦略だ。
にもかかわらず、多くの組織が的を絞った戦略を立てようとしない。あれもこれもと欲張りなリストを作成する一方で、リソースを集中投下して組織本来の強みを発揮する必要性に目をつぶっている。
良い戦略に必要なのは、さまざまな要求にノーと言えるリーダーである。戦略を立てるときには、『何をするか』と同じぐらい『何をしないか』が重要なのである。”