決算書や試算表の数字の羅列を見ても、内容がサッパリ頭に入ってこない。
意味がわからなくてイライラする。
頭が痛くなる。あまり見たくない・・・。
そんな方におススメしたいツールがあります。「お金のブロックパズル」です。
Contents
1.「お金のブロックパズル」とは
「お金のブロックパズル」は、西順一郎氏の「戦略会計 STRACⅡ」のSTRAC表をベースに、経営コンサルタントの和仁達也氏が考案した図です。たとえば、こんな感じです。
売上から費用を引いて、利益が計算されるまでを四角形の図で表し、利益からキャッシュへの転換を利益の右側に追加して表しています。以下などの特徴があります。
お金のブロックパズルの特徴
1.費用を変動費と固定費に分けることで、売上や粗利率、経費の変化が利益に与える影響を直感的に把握しやすい。
→ 業績改善施策と連動させた損益計画のシミュレーションに使いやすい。
2.固定費を人件費とその他に分けることで、粗利と人件費の関係(労働分配率)が直感的に把握しやすい。
→ 利益を確保しつつ、人件費にも配分して、会社全体で目標に向けて行動するための社内の合意形成に使いやすい。
3.利益の使途が直感的に把握しやすい。
→ 利益の使途(借入金返済・設備投資など)をもとに逆算で売上目標を立案しやすい。
「お金のブロックパズル」は、決算書や試算表の数字をもとに作成できます。ただし・・・。
決算書や試算表には、変動費や固定費という項目はありません。粗利という項目もありません。
2.「お金のブロックパズル」は管理会計
なぜかというと、変動費や固定費、粗利という用語は、管理会計の用語なのです。管理会計というのは、社長や社員が会社のお金の流れを把握し、業績をよくするために使う会計です。
決算書や試算表は、管理会計ではなく、財務会計の考え方で作成されています。財務会計の目的は、銀行や取引先などに会社の状況を説明したり、税務申告の元情報とすることです。
目的が違うから、形式や用語が違うんですね。
財務会計である決算書や試算表では、費用を「売上原価」と「販売費及び一般管理費」に分けます。「お金のブロックパズル」では、費用を「変動費」と「固定費」に分けます。
「お金のブロックパズル」が管理会計である理由は、「お金のブロックパズル」を作成する目的が、
・社長や社員が会社の現状のお金の流れを見える化したり、
・業績向上のヒントを見つけたり、
・目標売上の検討したり
することだからです。
財務会計から管理会計への組み替えは、慣れていないと、ちょっと時間がかかるかもしれませんね。
3.「お金のブロックパズル」作成テンプレート
そこで、「お金のブロックパズル」がカンタンに作成できるエクセルのテンプレートを作成しました。
決算書の数字を入力するだけで「お金のブロックパズル」が作成でき、理想形のシミュレーションもできるエクセル様式のダウンロードはこちらからどうぞ。↓
ダウンロードできましたか?
(1)「お金のブロックパズル」作成テンプレートの使い方
では、使い方を説明します。まず、エクセルを開くと以下のような画面になっています。
まずは、「● 決算数字 入力フォーム」に数字を入力します。
決算ではなく、試算表の数字でも構いません。損益計算書は今期の数字、貸借対照表は、前期と今期の二期分が必要です。
黄色のセルには計算式を入力しています。白いセルにだけ入力してください。
入力に関して注意事項がいくつかあります。
(1)「お金のブロックパズル」作成テンプレートの使い方
では、使い方を説明します。まず、エクセルを開くと以下のような画面になっています。
まずは、「● 決算数字 入力フォーム」に数字を入力します。
決算ではなく、試算表の数字でも構いません。損益計算書は今期の数字、貸借対照表は、前期と今期の二期分が必要です。
黄色のセルには計算式を入力しています。白いセルにだけ入力してください。
入力に関して注意事項がいくつかあります。
はい。これで、変動損益計算書の数字とキャッシュフロー計算書の数字をもとに「お金のブロックパズル」が自動的に完成しました。パチパチパチ・・・。カンタンだったでしょ。
(借入金の返済よりも新規借入額が多い場合や、設備投資額よりも固定資産などの売却額が多い場合、所要運転資金が減少したりしている場合は、図の修正が必要になります)
(2)「お金のブロックパズル」の見方とチェックポイント
自社のお金のブロックパズルを見ながら、まずは以下をご確認ください。
お金のブロックパズルの見方とチェックポイント
・売上高から変動費を差し引くと、粗利が計算できる。
(変動費は原材料費や外注加工費など。業種によって異なる)
・粗利から固定費を差し引くと、利益が計算できる。
(固定費は地代家賃やリース料など)
・売上高に占める粗利の割合のことを粗利率と言う。
→ 粗利率は満足できる水準か?
・固定費は、人件費とその他に分けられる。
・粗利に占める人件費の割合のことを労働分配率と言う。
→ 労働分配率は適正な水準か?
・利益に減価償却費を足し戻すことで、キャッシュが計算できる。
(簡易キャッシュフローと言う)
→ 簡易キャッシュフローはプラスを確保できているか?
・簡易キャッシュフローは、借入金の返済原資となるほか、設備投資資金にもなる。
・また、所要運転資金が増加すると、その分キャッシュが減少する。
(所要運転資金は、売上債権や棚卸資産の増加、または仕入債務の減少によって増える)
→ 最終的に、キャッシュフローはプラスかマイナスか?
そしてそれは意図した結果だったか?
いかがでしたか?
自社の現状のお金の流れは、自社の経営ビジョンを実現するために満足できる状態でしたか?
(3) 所要運転資金とは
所要運転資金の話が少しわかりにくかったかもしれないので、補足します。企業間取引では通常、現金取引ではなく、与信取引となります。
・現金取引 : 納品時に商品と引き換えに代金をいただく取引
・与信取引 : 納品後に請求書を発行して代金をいただく取引
与信取引において、販売代金の回収よりも、仕入の支払いのタイミングが早い場合、一時的に立て替えが必要となってしまいます。これが所要運転資金です。
売上が増加すると、立替金額も増加します。なので、売上増加時には通常、資金繰りが厳しくなります。売上増加時に所要運転資金が増えることを増加運転資金と言います。
また、在庫を維持するにも所要運転資金が必要です。
商品を仕入れたり、製品を製造するときには費用が発生します。仕入れた商品や製造した製品が売れるまでには、かかった費用は立て替えしているような状態です。
製品を製造するときに、まとめて大きなロットで生産すると、一個当たりの製造コストは低くなりますが、売れるアテがないのであれば、生産した製品の多くは在庫になり、資金繰りを悪化させてしまいます。
販売の予定もないのに、「そのうち売れるだろう」という安易な考えで、大ロットで生産し、在庫することは資金繰りの観点から考えると、リスクが高いです。
所要運転資金は以下のように計算します。
所要運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
(4) お金の流れの理想形のシミュレーションをしてみよう!
現状のお金の流れが理解できたところで、次に理想形を考えるためにシミュレーションをしてみましょう。
「● 理想形 シミュレーション入力フォーム」欄に売上高、粗利率、労働分配率、その他固定費をどう変化させるかという計画を入力してみましょう。
来期の検討に使う場合は、借入金返済額、設備投資予定額がわかっているのであれば、その数字も入力してみましょう。
「● 理想形 シミュレーション入力フォーム」に入力した数字の結果が「● 会社のお金の流れを表す「お金のブロックパズル」(理想形シミュレーション)」に反映されます。
現状の「お金のブロックパズル」の状態よりもずっと、経営ビジョンの実現につながる経営数字の状態が見える化できたのではないでしょうか。
この理想形を実現するには、どのような打ち手によって可能かについてのアイデアもメモしておきましょう。
いかがでしたか?
「お金のブロックパズル」が現状の会社のお金の流れの把握や理想形のシミュレーションに使えることがイメージできたのではないでしょうか。
※エクセルの入力方法や使い方などで不明な点がありましたら、以下のフォームからお問合せください。使用した感想などもご連絡いただけると嬉しいです。 > お問合せフォーム
※「お金のブロックパズル」についての詳しい説明については以下の記事をご参照ください。
> 会社のお金の流れを見える化する「お金のブロックパズル」でできること
※また、減価償却費についての詳しい説明については以下の記事をご参照ください。> キャッシュフロー計算書で減価償却費をプラスする理由は?