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知的資産経営に取り組む企業の商品開発事例-「お花のレースサブレ」

知的資産経営に取り組む企業の商品開発事例-「お花のレースサブレ」

投稿者
  2021年7月25日

お花のレースサブレ

京都府木津川市で「お花のレースサブレ」というお菓子を作られている企業があります。
その企業とは「r&」(アール・アンド)さん。
森田浩司と森田理恵子さんのご夫婦でされています。

「お花のレースサブレ」は、サブレの上にアイシングでレースを描き、その上に一つ一つ手作業で、エディブルフラワー(食用花)を飾りつけた、美しく目を楽しませてくれるサブレです。

開発者の森田理恵子さんは「花を贈るようにお菓子を贈ってほしい」という気持ちで「お花のレースサブレ」を商品開発されたそうです。

お二人は、もともとはカフェを経営されていました。

カフェをされていたお二人がどういう経緯で「お花のレースサブレ」を作られるようになったのか。その過程には、知的資産経営(知恵の経営)の取り組みがありました。

(京都府には「知的資産経営」を「知恵の経営」として認証し、支援する制度があります)


1.カフェ開業と物販事業の立ち上げ

お二人が木津川市の住宅地にカフェレストランを開業されたのは2007年。
開業当初は、お客様で賑わう繁盛店だったそうです。

ところが開業して年数が経つにつれ、外部環境の変化から売上が低下。
お二人は、売上の補完のために2016年に物販事業を開始されます。

お二人が物販事業として選んだ商品は、完全手作りのベルギーワッフルでした。

物販事業としてベルギーワッフルを選んだ理由は、森田浩司さんの製パン技術を活かせることや、いろいろな種類を作ることができて、見た目が可愛いことなどがあったそうです。

お二人は、開発したワッフルを京都市内のイベントなどに出店し、ファンを増やしていかれました。

そのような取り組みの過程で、2017年に知的資産経営セミナーに参加され、「知恵の経営報告書」を作成されました。

2.知的資産経営の取り組みを通して得たこと

森田浩司さんは2016年にも知的資産経営セミナーに参加されていたそうです。
翌年の2017年の知的資産経営セミナーでは、理恵子さんとともにお二人で参加。
私は2017年の知的資産経営セミナーの講師を務めていました。

セミナー構成としては「知的資産経営とは」という単発の啓発セミナーを開催し、ワークショップの参加者を募集。

ワークショップは5回シリーズで、5回を通じて知的資産経営に取り組んでいただく内容でした。

5回シリーズのワークショップに参加されて得たものは何だったかとお聞きすると
「それまでは漫然とやっていた。いろんなところに出店していた。
『知恵の経営』の取り組みで、お菓子の贈答の需要とSNSの力を認識した。
『知恵の経営』で方向性がきっちりできた」
とのことです。

この取り組みを通じて、お二人は、カフェとワッフル事業を行う「café R+Rワッフルファクトリー」という企業名で「知恵の経営」の認証を取得されました。

3.知的資産経営の取り組み後の軌跡

では、知的資産経営の取り組み後、どのように「お花のレースサブレ」の商品開発に行きつかれたのでしょうか。

「café R+Rワッフルファクトリー」さんの販売されていたベルギーワッフルにはいくつもの種類がありました。 その一つが「ロリポップワッフル」という棒付きのワッフルで、インスタ映えする可愛らしい商品でした。

ところが、森田浩司さんはワッフル作りが大変で楽しくなく、限界を感じていたそうです。
そんな時に森田理恵子さんが開発したのが「お花のサブレ」。

「お花は自分がもらったら嬉しい。自分が好きなものをあげたい。
お花をあげるようにお菓子を上げる。そんなお菓子を作りたかった」とのこと。

売れるかどうかはわからなかったが、自分がワクワクできることをしようと思って開発。

その様子を見たお嬢さんの「お母さんが好きなんだったら、こればっかりやったら?」という言葉も理恵子さんを後押ししたそうです。

その、売れるかどうかわからなかった、「お花のレースサブレ」に手応えを感じたのは、2019年9月の「地方銀行フードセレクション」に出展したときのこと。

出展内容は「お花のレースサブレ」一品のみ。これが、とても反応がよかった。 とにかくバイヤーが本気。名刺交換は100社以上。

当時、エディブルフラワーのお菓子はなかったことも大きかったそうです。

2020年にはルピシアの「母の日カタログ」に採用されます。
この後、ワッフルをやめてサブレ一本に絞ることを決意されました。

「café R+Rワッフルファクトリー」という企業名は「r&」(アール・アンド)に変更。
カフェとワッフルをなくして「&」を追加。「&」は関わってくださった方々とのことです。

r&森田浩司さん・森田理恵子さん

4.商品開発の秘訣は

「お花のレースサブレ」開発者の森田理恵子さんに商品開発の考え方をお聞きすると

「今までにないものを作らないといけない。ただし流行を作っても長くもたない。
飛び過ぎて、今までにないもの過ぎてもいけない。イメージが湧きつつ、今までにないものであることが必要。こんな味だろうとイメージしつつ、あげたら喜ばれると思えるもの」
とのことです。

そして、「ワッフルがなかったら、この商品は生まれなかった」とも言われます。

たとえば、阪神百貨店やルクアからは「ワッフルで出店してくれませんか」との声がけがあり、
「これも並べていいですか」とサブレを一緒に並べたそうです。

最終的にワッフルはやめてしまわれましたが、一つの物事を追求する中で、新たな知見やノウハウ、人脈が得られ、それが次の商品につながることはよく見られることです。

5.本当に強い「強み」とは

なお、知的資産経営の取り組みでは、自社の強みを棚卸ししていきます。

当時、作られていたベルギーワッフルは、見た目が可愛く、ファンの多い強い商品でした。
当時の「café R+Rワッフルファクトリー」さんにとってのベルギーワッフルは「強み=知的資産」の一つです。

ただし、目に見える「強み」は環境の変化とともにいつかは失われます。

本当に強い「強み」とは、新たな強みを作り出すことのできる、その人の考え方や発想力、着眼点、情報感度などであったりします。つまりは「強み」を生み出す本質的な力です。

ワッフル事業を通じて、お二人の知見やノウハウ、人脈が拡張し、次の「本当に作りたい商品」の実現につながったということではないかと思います。

事業継続に必要なことの第一は、顧客に「選ばれ続ける」ことです。

「選ばれ続ける」ために今後とも知的資産を進化、活用していかれるのを楽しみにしています。

お花のレースサブレ

※知的資産経営の詳細については以下の記事も合わせてご参照ください。

「事業性評価融資とは?ローカルベンチマークとは?経営力向上計画とは?」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

「顧客が自社を選ぶ理由は?経営戦略を立案するときに考えるべきこと」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

「会社の強みの全体像を視覚化する価値活用ストーリーとは」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

「自社の独自の強みに注目する『知的資産経営』が組織活性化につながる5つの理由とは」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

「採用ツールとしても使える!自社の価値を見える化する
 『知的資産経営報告書』の5つの活用方法とは」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

「知的資産経営を成果につなげるための6つのポイントとは」
https://vision-cash.com/chiteki/points-for-achievements/

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この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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