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知的資産経営とは、自社の独自の強みに注目して業績向上を図る経営手法です。
知的資産経営では、自社の価値や取り組みをまとめた知的資産経営報告書を作成します。知的資産経営報告書において、自社の経営の全体像を視覚的に表現したチャートのことを「価値活用ストーリー」と言います。
知的資産経営の取り組みで作成する「価値活用ストーリー」とは何かについて解説しています。
価値活用ストーリーとは
会社の独自の強みのうち、特に組織能力や人の能力などに関わる形のない強みのことを知的資産と言います。(たとえば、ノウハウやスキルなどです)
会社の強みである、知的資産はバラバラに存在しているのではありません。つながり合って、お客様にとっての価値を実現しています。
この、顧客提供価値を生み出す知的資産(自社の独自の強み)のつながりのことを価値活用ストーリーと言っています。
ある建設業さんの話です。
建設業さんなので、日中は、社員さんは各現場に出ておられます。現場の仕事が終わると、社員さんは会社に戻り、夕刻からミーティングをされています。
各現場でどんなことがあったのか。問題はなかったか。あったとしたら、なぜその問題は起きたのか。今後、起こさせないためには何に取り組むべきか。
このようなことを社長が指導するのではなく、社員さんに考えさせておられます。そのようなミーティングを続けることで、自分で考えて判断できる社員さんが育っておられます。
社員さんの教育が進むと、会社としての取り組みを徹底することがしやすくなります。この会社が何に取り組まれているかというと「掃除」です。
一日の終わりに現場をきれいに掃除することは当たり前のことですが、この会社では一つの工程が終わるとまずきれいに掃除をされます。現場だけでなく、事務所についても掃除を徹底されています。
掃除を徹底するとまず、何がどこにあるかが把握できるようになりました。そうすると、材料の二重発注のようなムダや、材料の発注漏れがなくなりました。
機械設備についてもきれいに掃除します。そうすると整備不良による突発的な故障がなくなりました。
材料の発注漏れがなくなり、機械設備の突発的な故障がなくなると、工事の納期遅れが起こりにくくなりました。
この建設業さんのお客様はゼネコンさんです。お客様であるゼネコンさんが喜ぶことが何かというと、施主様=クライアントさんの満足度が高いことです。
この会社に仕事を頼むと、社員は礼儀正しく、現場はきれいで納期遅れもないということで施主様の評価が高いです。となると、この会社に頼んだら安心ということで、また仕事を依頼されます。
経営者が、ミーティングの場での社員教育に注力されていることから、自律的に行動できる社員さんが育たれ、そのことが取り組みの徹底につながり、納期遅れのない工事を実現し、お客様から選ばれる理由になっている。
このような強みのつながりのことを「価値活用ストーリー」と言っています。
価値活用ストーリーを明らかにすることの意味
この「価値活用ストーリー」を明らかにすることの意味は2つあります。
一つ目は、つながりで見ると意味がわかるということです。全体像を見ることで、全体の中でのそれぞれの仕事の位置づけを社員が理解できるようになります。大事なポイントも理解しやすくなります。
価値活用ストーリーを描いたときに、ある会社の営業の方がこんなことを言っておられました。
「今までも、客先で自社の強みの説明をしていましたが、『価値活用ストーリー』を描いたことで、初めて自社の強みの全体像が理解できました。これからは今までよりも、もっと深い説明がもっと自信をもってできます」
社員の方が事業の全体像を理解できるようになる。
そういう意味で、わかりやすく腑に落ちる価値活用ストーリーを描くことの意味はとても大きいです。
価値活用ストーリーを描くことの二つ目の意味は、自分たちの根源的な強みが何かを考えるきっかけになるということです。
たとえば、すごく売れる強い商品を持っているとします。ただ商品がいくら強いとしても、将来にわたって、ずっと売れ続けるかというと、それはなかなか難しいです。
競合に真似されてしまうこともあるでしょうし、流行りすたりもあります。大きな業界構造の変化などで、強みであったものが発揮できなくなるということもありえます。
強い商品や強いしくみのような目に見える強さは、いつかは失われる時が来ます。
では、何が本当に強い強みかと言うと、強い商品やしくみを生み出し続けることのできる、組織の力、たとえば、経営者の考え方や意思決定のスタイル、人材やチャレンジする力が一番強い強みではないかと考えています。
つながりで見ることで、自分たちの根源的な強みを認識することができる。
これが、価値活用ストーリーを描くことの意味の二つ目です。
※なお、知的資産経営報告書の活用方法については以下の記事をご参照ください。