メニュー

事業性評価融資とは?ローカルベンチマークとは?経営力向上計画とは?

事業性評価融資とは?ローカルベンチマークとは?経営力向上計画とは?

投稿者
  2018年2月10日

計画立案

知的資産経営とは、自社の独自の強みに注目して業績向上を図る経営手法です。

事業性評価融資、ローカルベンチマーク、経営力向上計画について、最近の国の施策と知的資産の関わりを含めて解説します。

知的資産経営と国の施策の関わり

まずは、話の背景として、知的資産経営と国の施策の関わりについてご説明します。

「知的資産経営」は、経済産業省が特に中小企業に対して推奨している経営手法です。
なぜ、知的資産経営が推奨されているかというと理由は2点あります。

1点目の理由は、
中小企業が業績を向上させていくためには、強みをもっと活用すべきだ
という理由です。

中小企業は一般に、大企業のように費用をかけて、売上向上などに取り組む資金力に乏しいことが多いです。一方で、日本の全企業の99.7%を占める中小企業が元気にならなくては、日本の経済はよくなりません。

中小企業が強みを発揮して業績を向上させるためには、見えない資産である知的資産を活用することが有効という考え方により、知的資産経営が推奨されています。

知的資産経営を推奨する2点目の理由は、
決算書だけを見ていたのでは、その企業の将来性がわからない
という理由です。

どのような時にこれが問題になるかというと、特に融資可否の判断という場面です。金融機関が融資可否を判断する、主要な根拠として、決算書の数字と保証や担保の有無があります。

ですが、このような判断では、事業に強みがあり、将来性のある企業の業績がたまたま悪く、担保がない場合に資金調達できないということになってしまいます。

事業に強みがあり、将来性のある企業が資金調達できないばかりに、事業を発展させていくことができないとしたら、雇用の面、また地域経済にとっても大きなマイナスです。

知的資産経営報告書があれば、決算書には表れない、見えない資産、強みやその企業の将来の経営ビジョンを理解できますので、金融機関にとってその事業の強みや将来性の判断がしやすくなります。

ですので、もともと、知的資産経営報告書には、企業と金融機関の情報共有ツールとして期待されている面があります。ここまでが前提のお話です。

さて、ここでご紹介する国の施策は、ローカルベンチマーク経営力向上計画です。ローカルベンチマークは2016年3月、経営力向上計画は2016年7月にスタートしました。

国の施策というのは、当然に国の意向が反映されたものです。

では、ローカルベンチマークや経営力向上計画に国のどのような意向が反映されているのかを考えてみます。背景にあるのは3つの意向と考えられます。

事業計画を立てることの重要性

1つ目は、中小企業に対する意向で、事業計画を立ててくださいということです。

事業計画を立てようとすると、自社の現状分析や、事業環境分析が必要になります。立ち止まって、自社の現状や事業環境をふり返り、どのような方向を目指すのかを考え、事業計画に落としていくことが必要になります。

ところが、多くの中小企業が事業計画を立てていません。

特に小規模事業者で、事業計画を作成したことがある企業は全体の53.0%に留まっており、約半数の小規模事業者が経営計画を作成したことがないという調査結果があります。(出典:中小企業庁:小規模企業白書(2016年版))

経営計画の有無

一方で、同じく2016年版の「小規模企業白書」に掲載された「経営計画の作成有無と売上高の傾向」というグラフを見ると、経営計画を「作成したことがある」企業は、「作成したことがない」企業に比べて売上高が増加傾向にある企業が多いことがわかります。

経営計画の有無と売上高の傾向

ですので、国の意向として、日本の経済全体をよくするために、日本の全企業の99.7%を占める中小企業を元気にしたい。そのために、事業計画・経営計画を立ててほしいと国は考えているということです。

なお、2014年から継続して実施されている補助金に「小規模事業者持続化補助金」という制度があります。

この補助金は、小規模事業者であっても事業計画を立ててほしいという意図の補助金です。審査項目を見ると、はっきりわかりますが、

・自社の経営状況分析の妥当性、自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。
・経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
・対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。

を審査するとはっきり書かれています

補助金という制度を使って、小規模事業者に事業計画を立てさせようとしているのが小規模持続化補助金と言えます。

こうしたことからも、国の意向として、自社の現状や事業環境を踏まえた事業計画の策定を促進するということが施策の背景にあると考えることができます。

事業性評価融資とは

次は二つ目の背景です。

国の意向は3つあると書きましたけれど、実は2つ目の意向と3つ目の意向は表裏です。

2つ目の意向は、中小企業に対するもので、
自社の事業内容・事業の特徴や今後の見通しについて金融機関によく説明しましょう
ということです。

3つ目の意向は、金融機関、特に信用金庫や地銀などの地域金融機関に対するもので、中小企業への融資に際しては、決算書の内容や担保・保証だけで判断するのではなく、
事業内容や成長可能性を適切に評価する必要がある
ということです。

この、決算書の内容や保証・担保だけではなく、事業内容や成長可能性等も評価して行う融資のことを「事業性評価融資」といいます。

従来、金融機関は、借入の申込を受けると、決算書の内容や保証・担保の有無をもとに判断していました。それはなぜかというと、金融機関を監督する金融庁の従来の方針が不良債権を増やさないことを重視していたためです。

貸したお金が返済されないと、不良債権になってしまいます。

金融庁は、金融機関の経営の健全化のために、不良債権を増やさない点をかつて重視していました。つまり、返済できないような企業には貸してはいけないという方針だったということです。

この方針が大転換されました。理由は、アベノミクスです。

平成26年6月にアベノミクスの具体策として閣議決定された「日本再興戦略」というプランがあります。ここに事業性評価融資が盛り込まれました。

そして、それを受けて平成26年9月に金融庁が発表した基本方針にも

「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる」

と明記されました。

金融機関を監督する金融庁の方針が従来とは大きく変化したということになります。

このように金融庁の方針は、不良債権を出さない融資から、事業性評価融資の促進に大きく変わりました。ところが、金融庁が方針を大転換しても、不良債権を出さないという長年の方針が金融機関には浸透してしまっています。

また事業性評価のノウハウを持たない金融機関もあるようです。経営者側からも、金融機関の取引姿勢に従来との変化が見られないという声も聞かれます。

そこで、方針転換を現場に浸透させる具体策・ツールとして、スタートしたのがローカルベンチマークであり、経営力向上計画であると考えられます。

ローカルベンチマーク(ロカベン)とは

ローカルベンチマークは、企業の現状診断ツールです。経済産業省のサイトからダウンロードできます。エクセルで作られており、三期分の財務データを入力すると、財務分析結果がレーダーチャート形式で表示されます。

ローカルベンチマーク

「会社が病気になる前に」というキャッチコピーがつけられています。企業の健康診断ツールという位置づけです。

注目いただきたい点は、財務シート以外に、2種類の非財務ヒアリングシートが併用されている点です。非財務情報というのは、決算書に表れない情報です。つまり見えない資産である知的資産です。

つまり、ローカルベンチマーク自体が、実は、知的資産経営の考え方をベースに作成されています。ローカルベンチマークは、企業の経営状態を財務と非財務の両方から把握し、経営者と金融機関が対話し、事業性評価に役立てるという趣旨で作られているもので、その根底には知的資産経営の考え方があります。

ローカルベンチマークは言葉が長いので、略して「ロカベン」と言います。ロカベンで現状認識した企業に、国が次にしてほしいことは経営計画策定です。

経営力向上計画とは

経営計画ということでは、経営革新計画という国の制度が以前からあります。

ところが、経営革新計画は、新しい取り組みをすることが承認要件になっているので、ハードルが少し高いです。すべての企業が取り組めるわけではありません。

また、経営革新計画は、都道府県知事の承認を得る制度で、事前のヒアリングがあるなど手続きも少し煩雑です。

それに対して、どんな企業でもチャレンジできる、ハードルが低い新しい制度として作られたのが、この経営力向上計画です。

経営力向上計画の趣旨は、今まで国の事業・制度を何も活用していなかった企業であっても取り組んでほしい。そういう趣旨で制度設計がなされています。

ですので、新しい取り組みのような要件もなく、手続きも郵送でできます。非常に取り組みやすい制度です。

国は、この経営力向上計画を広めたい考えで、国のいろんな補助事業の入り口、パスポートとして使うという説明をしています。実際に、補助金の審査において、経営力向上計画の認定企業には加点措置などの優遇が行われています。

最後に補足です。

金融庁からは事業性評価融資が求められるようになってきていますが、企業の事業の強みをしっかり目利きできる金融機関はまだあまり多くありません。

逆に言うと、企業側から、しっかり自社の事業内容・将来性をアピールすることができると、融資において非常に有利です。

知的資産経営は、国の施策のベースにもなっており、事業性評価融資という観点でも非常に有効な取り組みであると言えます。

※なお、知的資産経営の取り組み方については以下の記事をご参照ください。

投稿者

この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



カテゴリー

自社の強みを活かす知的資産経営

よくわかる!キャッシュフロー計算仕事に役立つヒントが見つかる!会社員の体験談