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「ものづくり補助金」の採択率は?採択に必要な3つの力とは?得られる真のメリットとは?

「ものづくり補助金」の採択率は?採択に必要な3つの力とは?得られる真のメリットとは?

投稿者
  2019年2月7日

ものづくり補助金

今年も「ものづくり補助金」の公募があるようです。

「ものづくり補助金」についてよくご存じで、すでに応募を考えておられる企業もあるでしょう。一方で「ものづくり補助金って何?」という方もおられるかもしれません。

「ものづくり補助金」とはどういうものか。やや偏った個人的な意見かもしれませんが、これまでに申請書作成をサポートした経験から感じるところをお伝えします。

1.ものづくり補助金とは

「ものづくり補助金」をざっくり説明すると、設備投資に対して、1,000万円までのお金を補助しましょう。という制度です。

設備投資の金額の2/3という要件があり、企業が一度、支払いを済ませた上での後払いでの精算です。(補助率は、2018年度から原則1/2となっています)

過去に何度か、この補助金の申請書の作成をサポートしたことがあります。

その関係で
「また手伝ってもらえませんか?」 というお声がけをいただき、今年も公募されることを知りました。

…という、個人的にはわりと消極的な姿勢です。

なぜかというと、補助金には、通る企業、通らない企業があるからです。

2.ものづくり補助金に「通る企業」、「通らない企業」

ものづくり補助金の採択率は、ざっくり4割程度です。1万社が応募して、そのうちの 4,000社程度が採択されるというイメージです。

※ ものづくり補助金の採択率

過去6年間で、ものづくり補助金には、177,975件の申請があり、そのうち、73,706件が採択されています。通算で 41.4%の採択率です。


< ものづくり補助金の申請数・採択数・採択率 >

年度 補助金名称 予算額 補助上限額 公募 申請数 採択数 採択率
H25年度 平成24年度補正
ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金
1,007億円 1,000万円 1次/1次締切 1,836 742 40.4%
1次/2次締切 10,209 4,162 40.8%
2次公募 11,926 5,612 47.1%
H26年度 平成25年度補正
中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新補助金
1,400億円 1,500万円 1次/1次締切 7,396 2,916 39.4%
1次/2次締切 15,019 6,697 44.6%
2次公募 14,502 4,818 33.2%
H27年度 平成26年度補正
ものづくり・商業・サービス革新補助金
1,020億円 1,000万円 1次公募 17,128 7,253 42.3%
2次公募 13,350 5,881 44.1%
H28年度 平成27年度補正
ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金
1020.5億円 3,000万円 1次公募 24,011 7,729 32.2%
2次公募 2,618 219 8.4%
H29年度 平成28年度補正
革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金
763.4億円 3,000万円 1次公募 15,547 6,157 39.6%
H30年度 平成29年度補正
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金
1,000億円 1,000万円 1次公募 17,275 9,518 55.1%
2次公募 6,355 2,471 38.9%
H31年度 平成30年度補正
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
1,000万円 1次公募
(1次締)
14,927
(1,111)
7,468
(332)
50.0%
(29.9%)
2次公募 5,876 2,063 35.1%
合計 177,975 73,706 41.4%

採択率がざっくり4割程度ということから、通る企業、通らない企業があるというのは、一見、当たり前な話に聞こえます。では、何が言いたいのか。

ここからは極めて、主観的な内容になります。偏った、個人的な意見と言ってもいいかもしれません。

何かというと、そもそも国が採択したい企業と、そうでない企業があるのです。

ある製造業さんは「ものづくり補助金」に過去3度採択されています。

採択されたときに社長に
「先生さすがですね」と言っていただきました。

どんな製造業さんかというと、技術力があり、ニッチ分野ながら、大手企業から継続受注されている企業さんです。日本のモノづくりを陰で支えている、多くの中小企業の一社といっていいでしょう。

ものづくり企業

別の小規模企業さん。こちらの企業さんは「ものづくり補助金」と「小規模持続化補助金」、両方を合わせて、これまでに3度採択されています。

こちらの企業でも
「先生!また通りましたね。さすがですね」 と喜んでいただいています。

この企業は、ニッチ分野において、国内で先駆的な存在であり、オンリーワンの商材を持っている企業さんです。

採択されて、喜んでいただくのは嬉しいことですが、私に対する褒め言葉については、私は内心「ちょっと違うかも…」と思っています。

何が違うかというと、どちらも「通る企業」さんなんです。必ずしもすべて私の力というわけではないのです。

3.ものづくり補助金に採用されるための3つの力

では、「通る企業」とはどんな企業でしょうか。

ものづくり補助金に採択されるかどうか。これについては、私は3つの力が必要と感じています。

(1) 企業の事業展開上の優位性
(2) 補助金申請する事業計画の実現性・妥当性・事業上の優位性との一貫性
(3) 申請書の書き方

(1) の企業の事業展開上の優位性とは、たとえば
・技術力と優良な売り先があり、設備投資による業績の伸長が見込める。
・独自性や差別化された事業戦略があり、設備投資による業績伸長の見込みがある。
などです。

財務基盤がしっかりしているというのもプラス点になります。

どういうことかというと、

「補助金」というのは、困っている企業を「補助する」制度ではないのです。

「救済策」ではありません。

では何かというと、政府による景気活性化のための「投資」です。

投資

考えてみれば、当たり前の話ですね。補助金の出元は、税金です。なぜ、国民や企業が納めた税金から、特定の企業にお金を供与するようなことができるのか。

派生効果で景気が活性化することを期待しているのです。
つまり、

  • その企業が補助金を活用して設備導入することで、設備会社が儲かる
  • その企業が設備導入して、生産キャパやスペックの制約から、それまで販売先から求められながら、できなかったことができるようになれば、販売先の業績向上に貢献できる
  • その企業が導入した設備を活用して、業績が伸びれば、仕入も増える。仕入先も儲かる
  • その企業の業績が伸びれば、新たに人を雇用することになり、雇用も増える
  • その企業の業績が伸びれば、給与を上げることも可能になる。社員の給与が上がると消費活性化につながる

というようなことが補助金効果として期待されています。ここは、何度言っても言い足りないくらい重要なポイントです。

これが私のいう「通る企業、通らない企業がある」の言葉の意味です。

(1) 企業の事業展開上の優位性
(2) 補助金申請する事業計画の実現性・妥当性・事業上の優位性との一貫性

の観点で厳しい企業さんの場合に「申請書の書き方」で何とかする、ということはできないのです。

はい。すみません…。あ、もちろん、

(1) 企業の事業展開上の優位性
(2) 補助金申請する事業計画の実現性・妥当性・事業上の優位性との一貫性

が一定以上の場合には、「申請書の書き方」が結果を大きく左右するのは言うまでもありません。

4.補助金と助成金の違いとは

念のために、補助金と助成金の違いもご説明します。

補助金は、経済産業省の制度です。補助金の場合は、応募された申請書を採点して、申請書ごとに採択する、不採択にする、を決定します。

公募期間は、1~2か月程度なので、その期間内に申請書を作成することになります。

時間と手間をかけて、申請書類に取り組んでも「不採択」という結果であれば、かけた時間と手間がムダになります。

一方、助成金は、厚生労働省の制度です。原則として、要件に合致したら、お金をもらえます。

金額は、一般に補助金の方が高額ですが、確実にもらえて、リスクが少ないという観点から考えると、助成金の方がトータルの負担感がなく、取り組みやすいかもしれません。

5.補助金申請で得られる真のメリットとは

ただし、時間と手間ひまをかけて、補助金の申請書類に取り組むメリットがまったくないわけではありません。

補助金の申請書類に、自社の事業概要や今後の計画を書くに際しては、自社の事業の強み、課題に向き合う必要があります。

また、今後どのように自社の業績を伸ばしていくかについて、第三者が読んでも理解できるように、整理する必要があります。

この一連のプロセスがそのまま事業計画立案なのです。

過去3度「ものづくり補助金」に採択された前述の製造業の社長さんも、私が質問を投げかけながら、申請書作成に取り組むことで
「考えを引き出してもらい、整理される感覚があった」と仰っていました。

ミーティング

補助金はありがたい制度ですが、まず
・自社の事業の強みや課題について向き合う時間を取ること。
・そこから将来の事業計画を考えること。
を続けることで、強い事業構造を構築していくことの方が重要です。

補助金申請に取り組むことで、そのきっかけが得られるとしたら、そちらの方が真のメリットと言えるかもしれませんね。

※ ものづくり補助金の実施スケジュール

補助金は、公募期間中に申請し、交付決定後、事業完了期限までに事業を完了して、ようやく補助金を受領できるという制度です。

参考までに、ものづくり補助金のこれまでの実施スケジュールをまとめておきます。


< ものづくり補助金の実施スケジュール >

年度 補助金名称 予算額 公募 公募開始日 公募締切日 審査結果発表日 事業完了期限
H25年度 平成24年度補正
ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金
1,007億円 1次/1次締切 2013/3/15 2013/3/25 2013/4/30 2014/5/31
1次/2次締切 2013/3/15 2013/4/15 2013/5/31 2014/5/31
2次公募 2013/6/10 2013/7/10 2016/8/30 2014/8/15
H26年度 平成25年度補正
中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新補助金
1,400億円 1次/1次締切 2014/2/17 2014/3/14 2014/4/28 2015/4/30
1次/2次締切 2014/2/17 2014/5/14 2014/6/27 2015/6/30
2次公募 2014/7/1 2014/8/11 2014/9/29 2015/9/30
H27年度 平成26年度補正
ものづくり・商業・サービス革新補助金
1,020億円 1次公募 2015/2/13 2015/5/8 2015/6/19 2016/6/30
2次公募 2015/6/25 2015/8/5 2015/9/30 2016/9/15
H28年度 平成27年度補正
ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金
1020.5億円 1次公募 2016/2/5 2016/4/13 2016/6/6 2016/12/31
2次公募 2016/7/8 2016/8/24 2016/10/20 2016/12/31
H29年度 平成28年度補正
革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金
763.4億円 1次公募 2016/11/14 2017/1/17 2017/3/17 2017/12/29
H30年度 平成29年度補正
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金
1,000億円 1次公募 2018/2/28 2018/4/27 2018/6/29 2018/12/28
2次公募 2018/8/3 2018/9/18 2018/10/29 2018/12/28
H31年度 平成30年度補正
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
1次/1次締切 2019/2/18 2019/2/23 2019/3/22 2019/12/27
1次公募 2019/2/18 2019/5/8 2019/6/28 2019/12/27
2次公募 2019/8/19 2019/9/20 2019/11/5 2020/1/31

※ 中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金)で1,100億円


※ 参考資料
「ものづくり・商業・サービス 補助金について」
(平成30年6月 中小企業庁 技術・経営革新課)
http://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2018/kokai/r4.pdf

※ この記事は、2019年2月7日に公開し、2020年4月22日に加筆しています。

投稿者

この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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