消費者の選択行動の結果が市場規模を決定する
失われつつあるというものの、食べ物にはやはり季節感があります。
年末年始の食べ物と聞いて、何を一番にイメージするでしょうか。いろいろありますが、関西人にとっては、千枚漬けも年末年始らしい食べ物の一つです。
昨年末はその千枚漬けの生産数量が半減したそうです。
今年の夏は雨が多く、秋には大型の台風到来もありました。その影響で蕪の生育が遅れ、千枚漬けの生産が間に合わず、漬物業界では打撃を受けたそうです。
このように供給数量が市場規模に影響を及ぼすことがあります。
また、技術革新による新製品投入が市場拡大の起爆剤となることもありますが、原則としては消費者の選択行動の結果が市場規模を決定します。
消費者のライフスタイルや意識の変化により、市場規模が拡大する商品もあれば、市場規模が縮小する商品もあります。
市場規模が年々拡大するヨーグルト。減少する漬物
食品の中では、たとえばヨーグルトの市場規模は年々拡大しています。乳酸菌摂取の意識が高まっていることがその背景にあります。
同じ加工食品でも、漬物の市場規模は減少傾向にあります。これは日本人の食生活の変化によるところが大きいのでしょう。
このような市場環境下で、ある漬物会社がユニークな試みを始めています。業界6社で連携してのカテゴリーマネジメントです。
コンセプトは、「漬物市場の規模拡大によって、ヨーグルト市場に勝つこと」だそうです。業界内連携の中心になっているのは、天政松下(大阪市西淀川区)という会社です。
漬物業界で業界内連携が必要になった理由
同社は、それまで活用されていなかったPOSデータを活用して市況分析を行うことを考え、独自に分析システムを構築しました。
ところが、システム構築後に問題に行き当たります。
漬物市場のメーカー数、アイテム数の多さから、自社アイテムだけでは十分な市況分析ができなかったのです。
漬物のアイテム数がどれくらい多いかというと、ヨーグルト900アイテムに対して、漬物はなんと7,000アイテムです。
そこで考えたのが、漬物の分野ごとのリーダー企業5社との連携でした。連携により、より多くの情報を分析できるようになり、より正確な市況分析が可能になると考えたのです。
同社が主導している、6社連携グループの名称を「カテゴリーマネジメントリンクス」(CML)といいます。
漬物業界の業界内連携の成果と今後
取り組みを開始したのは二年半前です。
市況分析をもとに行ったカテゴリー提案を導入した店舗では、実際に売上増加という実績が出ているそうです。
カテゴリーマネジメントリンクスでは、また6社でのマーケティング勉強会を定期的に開催し、事例やマーケティング手法の共有を行っています。
今後は、合同での商品開発を計画している他、市況分析をもとにした52週MD(マーチャンダイジング)企画と棚割提案、シズル感あるPOP提案などに注力していく計画です。
目指す先は、スーパーなどの店頭での漬物売場の拡大です。
打倒ヨーグルトなるか?
今後の動向を注目したい興味深い取り組みです。