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顧客が自社を選ぶ理由は?経営戦略を立案するときに考えるべきこと

顧客が自社を選ぶ理由は?経営戦略を立案するときに考えるべきこと

投稿者
  2018年2月10日

ビルディング

経営戦略を立案するときには、自社の現状分析が必要になります。この記事では、知的資産経営において自社の現状分析をどのような切り口で行っているかについて説明します。

自社のビジネスモデルを整理するための4つの質問

経営戦略を立案するには、まず現状分析が必要になります。たとえば、次の4つの質問に答えることができるでしょうか?

1.顧客が自社を選ぶ理由は何か?
2.自社の強みは何か?
3.自社の強みをどのように活用しているか?
4.今後、自社の強みをどのように活用して、顧客に価値を提供するか?

この4つの問いは、自社の事業の根幹に関わる問いです。ビジネスモデルそのものとも言えます。

いくら優れた技術や商品があったとしても、この4つの問いの答えが明確でない場合、自社の強みを十分に活かせないこともありえます。

日本の製造業について「技術で勝っても事業で負ける」などと言われることがありますが、その意味は、この4つの問いに答えられない。つまり、自社のビジネスモデルが十分整理されていないということではないかと考えられます。

また、自社のビジネスモデルの整理が十分にできていない場合、外部環境の変化に十分対応できなくなるという場合もあります。

以前に、こんなご相談をお受けしたことがあります。ある地方都市の専門小売店さんからのご相談です。

数年前まで、近隣には競合他社がなく、そのお店は非常に儲かっていたそうです。ところが、あるとき、同業の大手チェーン店が商圏内に進出してきました。

当初、その小売店さんは「この近隣はすべて自社のお客様なので、そのチェーン店は入り込めないだろう。遠からず撤退することになるだろう」と考えておられたそうです。

実際にどうだったかと言うと、お客様が一人減り、二人減りして、すっかりお客様がそのチェーン店に移ってしまったということでした。

ショップ

つまり、そのとき、有力な競合他社がいないなどの事業環境に助けられて、自社の事業が好調であったとしても、自社のビジネスモデルを正しく把握し、強みを意識的に育て、活用するということをしなければ、弱いビジネスモデルになってしまう恐れがあります。

そしてその結果として、大手の出店のようなリスク、外部環境の変化に対応できなくなってしまうとことではないかと考えています。

知的資産経営では、知的資産経営報告書作成の取り組みを通じて、この4つの問いへの答えを明らかにしていきます。

知的資産経営に取り組むと、この4つの問いに答えられるようになるということです。では、この4つの問いに答えられると、企業はどうなるんでしょうか。一つ一つご説明します。

顧客が自社を選ぶ理由を把握することの意味

まず、顧客が自社を選ぶ理由が何かがわかるとどうなるのでしょうか。

顧客が自社を選ぶ理由が何かがわかると、自社の価値を訴求できるようなります。自社の価値を訴求できるようになると、自社の価値を理解してもらえるようになるので、結果的に企業ブランドが向上します。

「知的資産経営報告書」には、自社の価値や取り組みが伝わるように作成します。ある企業では、作成した「知的資産経営報告書」を新規の引き合いがあった時や展示会出展時などに、自社の会社案内として活用されています。

ユニークで魅力ある価値を記載した「知的資産経営報告書」を活用することで、得意先を増やし、新聞などに記事として取り上げてもらうことに成功されています。

自社の企業ブランド向上に知的資産経営を活用されている一つの例です。

自社の強みを把握することの意味

次に、自社の強みが何かがわかるとどうなるのでしょうか。

自社独自の強みが何かがわかると、自社の強みを活用したり、強化したり、育成できるようになります。

ある企業では、多くのことに取り組んだ結果、業務が個別化し、煩雑化してしまっていました。この企業は、知的資産経営の取り組みの中で、経営者と社員が自社の強みが何であるかについて徹底的に議論されました。

その結果、自社の業務を見直し、社員の業務負荷の軽減を図ることにしました。この企業では、コアな強みに絞り込んだ結果、自社の特徴がお客様にとっても理解されやすくなり、業績も改善することができました。

自社の強みの活用を把握することの意味

3番目に、自社の強みをどのように活用しているかが明確になるとどうなるのでしょうか。

社員が自分の仕事の意味を理解できるようになります。

経営者の方とお話していますと、社員のモチベーションをあげたいというご相談をお受けすることがあります。

社員のモチベーションはどんな時に上がるのかについては、いろいろあるとは思いますが、お客様に「ありがとう」と言われることほどモチベーションが上がることはないのではないかと思っています。

以前に、ある卸の会社でお聞きした話です。

得意先が商談に来られたときに、たまたま倉庫の方にご案内されたそうです。そのとき、得意先のお客様が、倉庫の担当者に「いつも無理を聞いてくれて、ありがとう」と声をかけてくださったそうです。

それを聞いた倉庫担当者は、かつて見たこともないような満面の笑みで、とても嬉しそうであったとのことです。お客様に「ありがとう」と言われることは、自分の努力が認められた実感が得られ、とても嬉しいものなのです。

倉庫

ところが営業の方であれば、お客様に「ありがとう」と言われる機会もありますが、内勤の方はなかなかそのような機会を持つこともできません。

知的資産経営では、社員全員で、会社全体の業務のつながりを整理していきます。それを見ることで、社員の方が業務全体の中での自分の関わり、立ち位置がわかります。

顧客に提供している価値に自分がどう関わっているのかが理解できるようになります。そうすると、モチベーションが高まります。自分で判断して動けるようにもなります。

実際に以前に知的資産経営に取り組まれた社員の方が
「自分の一つ前の工程と一つ後の工程のことは知っていたけれど、業務全体を見たことは初めてです。全体を知ったことで、自分の仕事がどのような位置づけかがわかり、モチベーションが高まりました」という感想を口にされていたことがありました。

自社の強みをどのように活用しているかという全体像を知ることは、社員のモチベーション向上にも役立つものなのです。

今後、自社の強みをどのように活用して、顧客に価値を提供するかを把握することの意味

最後に、今後、自社の強みをどのように活用して、顧客に価値を提供するかが明確になるとどうなるんでしょうか。

自社の強みをどのように活用して、顧客に価値を提供するかが明確になると、自社が進むべき方向や、やるべきことが明確になります。これは、知的資産経営に取り組まれた企業のほとんどが言っておられることです。

その中である製造業の話をご紹介します。

この企業は、現社長が苦労して今の会社の形を作ってこられた企業です。今は業績も好調で安定されています。社長は、業績が安定して好調なタイミングで事業承継を進めることを考えられました。

事業承継の準備として、後継者への事業ノウハウの引継ぎのために、知的資産経営の取り組みを開始されました。

打ち合わせ

ところが、社長と後継者の方とで、知的資産経営の取り組みを進めるうちに、社長の考えが変わっていかれました。今まで苦労して蓄積してきた、仕事の進め方のノウハウのすべてが知的資産、つまり自分たちの独自の強みであることに気がつかれました。

そして「仮に今、倒産して財産のすべてを失ったとしても、この知的資産だけは誰にも取られない。これがある限り何度でもやり直せる」と話されるようになりました。

そして、もともとは事業承継の準備として知的資産経営に取り組まれたのですが、
「このノウハウ=知的資産を活用すればまだまだできることがある。まだ守りに入るときではない」と言われて、新分野での商品開発をスタートされるに至りました。

自社の強みの活用が明確になると、やるべきことが明確になる一つの例です。

知的資産経営での現状分析

知的資産経営では、冒頭の4つの問いに対する答えを考えていきます。このビジネスモデルを知るための4つの問いの答えには実はそれぞれ名称があります。

1.顧客提供価値

顧客が自社を選ぶ理由を「顧客提供価値」と言います。

人が何かを買うときにモノそのものがほしくて買うことはほとんどありません。通常は、モノを通じて得られるメリットを求めてモノを買います。そのモノを通じて得られるメリットのことを顧客提供価値と言います。

私には数年前から愛用している歯ブラシがあります。その歯ブラシは軸に酸化チタンという素材を使用しています。酸化チタンの光触媒の働きで歯垢を効果的に除去するのだそうです。実際にその歯ブラシで歯を磨くと、歯がツルツルになります。

歯がきれいになるので、虫歯予防・歯周病予防になります。使っているとブラシ部分が摩耗します。ブラシ部分は交換できる作りですので、スペアブラシを購入して使いつづけています。

では、私がスペアブラシというモノそのものがほしくて買っているかというと、そうではなく、ほしいのは歯の健康が続くことです。私はスペアブラシというモノを通じて、歯の健康を買っています。

この「ずっと健康な歯でいられること」が愛用している歯ブラシの顧客提供価値です。

また、ある研修講師の方からこんなお話を聞いたことがあります。

「研修を発注する企業は、研修を受けたいわけではない。社員のスキルアップや意識向上を期待して研修を発注している。研修を受けることで社員や組織がどうなれるか、なりたいか。それが研修を発注する企業の求めていることである」

つまり、モノを買うことで得たい自分の将来像、なりたい明日の姿を顧客提供価値と考えることもできます。

2.知的資産

自社の独自の強みのことを「知的資産」と言います。よく知的財産権と間違われますが、知財ではありません。目に見えにくい、自社の独自の強みのことを知的資産と言っています。

3.価値活用ストーリー

自社の強みをどのように活用しているかを視覚的に表したチャートを「価値活用ストーリー」と言います。

4.将来の価値創造プロセス

今後、自社の強みをどのように活用して、顧客に価値を提供するかを視覚的に表したチャートを「将来の価値創造プロセス」と言います。


冒頭のビジネスモデルを知るための4つの問いに関して、もう一つ考えておくべきことがあります。それは、経営者の方がこの4つの問いに答えられたとしても、社員がみんな同じ認識とは限らないということです。

経営者の方がいくら素晴らしい優秀な方であっても、社員の方の認識がそれぞれ違っていては、その企業が力を発揮することは難しいです。

知的資産経営の取り組みをすることで、上記の4つを明確にすることができます。明確にすることができれば、社内共有できるようになります。これが知的資産経営に取り組むことの大きな意義の一つです。

「知的資産経営」とは、経営者の方はもちろん、社員の方全員がこの4つの問いに答えられるようになる経営の手法なのです。

※なお、価値活用ストーリーの詳しい説明や知的資産経営報告書の活用方法については以下の記事をご参照ください。

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この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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