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有事のときに考えてほしい5つのこと-新型コロナウイルスの影響に苦しむ経営者の方へ

有事のときに考えてほしい5つのこと-新型コロナウイルスの影響に苦しむ経営者の方へ

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  2020年5月18日

有事のときに考えてほしい5つのこと

「今まで経験したことがない事態。どう対応すればいいのか」
「考えるべきことが様々あって、考えがまとまらない。どう整理すればいいのか」
「 売上が下がっている中、今後、給与を払い続けることができるのか不安 」
「今の状況下でどのように社員のモチベーションを維持していけばいいのか」

これらは、2020年4月7日の緊急事態宣言発令以降、経営者の方々からお聞きした言葉です。

緊急事態宣言が発令され、日本全国で休業や営業自粛、外出自粛が行われる。
これは、今生きている人が誰も経験したことがない事態。まさしく有事です。

有事において、どのように考え、行動すればいいのか。

2020年4月7日の緊急事態宣言発令以降、経営者の方々にお伝えしたことを整理してみました。

(制度については大阪中心に書いています。制度変更も多いので、概要理解のための参考資料としてお読みいただき、詳細については、最新情報のご確認をお願いします)

1.手元資金の確保

2020年4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、政府は特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令。対象は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県。4月16日には緊急事態宣言が全都道府県に拡大されました。

新型コロナウイルスの感染拡大による休業や営業自粛等による売上低下で多くの企業が苦しまれています。飲食店、宿泊業などが大きな打撃を受けていますが、今後、他業種にも影響が波及していくことが予想されます。

足元で売上が低下し、先々の見通しも不確実な状況です。
このような状況下でまず必要なことは、手元資金の確保です。

理由は、いざというときに会社を守ってくれるのは、キャッシュであるからです。

また、資金繰りの不安から解放されて、冷静に対応策を検討できる状況を維持するためにも、十分な手元資金の確保が必要です。

では、手元資金をどのように確保すればいいのでしょうか。

◆ 利益創出と資金調達

手元資金確保の方法は大きく分けると2つに分かれます。
1つは、利益を創出して貯めていくこと。もう1つは、資金調達です。

最も一般的な資金調達方法は、銀行からの借入です。
ただし、資金調達手段は借入だけではありません。

たとえば、売掛金の早期回収や在庫の売却、非事業資産等の売却、支払いの繰り延べ、増資なども資金調達の手段です。


< 貸借対照表を元に資金調達方法を考える >

現金・預金 ↑ 買掛金   → 支払いの繰り延べ
売掛金   → 早期回収 借入金   → 新規借入
在庫    → 売却 資本金   → 増資
固定資産  → 非事業資産等の売却 利益剰余金 → 利益創出

先の見通しの見えないときには、不要な資産などはできるだけ換金し、キャッシュにしておくことが望ましいです。

◆ 給付金・支援金・助成金・補助金はどう違うのか?すべてもらえるのか?

資金調達方法のメインは銀行借入です。ただし、不透明な経営状況の中、借りても返せるのか。借入に躊躇される経営者も多くおられます。

そのようなケースでの質問が「もらえるお金には何があるのか?」です。

返済不要の「もらえるお金」には、給付金、支援金、助成金、補助金などがあります。
それぞれ趣旨が異なりますが、混同されているケースもあるので、概要を簡単にご説明します。

(1)持続化給付金

もらえるお金の代表が「持続化給付金」です。2020年1月から12月までの1か月間の売上が前年同月の売上よりも50%以上減少している企業が対象です。お金の使い道は指定されておらず、返済の必要もありません。

ただし、法人で200万円。個人事業主で100万円が上限です。

(2)休業要請支援金など

支援金と名のつく制度は「休業要請支援金」など。都道府県別の制度です。

(3)雇用調整助成金など

「助成金」には「雇用調整助成金」や「小学校休業等対応助成金」などがあります。これらは厚生労働省管轄の制度です。

もらえるお金ではありますが、手続きが煩雑なことがネックとなっています。支出したお金を後で補填してくれる制度です。

(4)小規模事業者持続化補助金など

「補助金」には「小規模事業者持続化補助金」、「IT導入補助金」、「ものづくり補助金」などがあります。これらは経済産業省の管轄です。

給付金、支援金、助成金は要件を満たせば、受け取れるお金です。「補助金」がそれらの制度と大きく異なるのは、必ずもらえるとは限らない点です。

「補助金」は、公募期間中に提出された申請書を審査し、高得点の企業が受け取れるお金です。予算内の競争ですので、必ずもらえるとは限りません。

また「補助金」は、困っている企業を支援する制度というよりは、前向きに事業に取り組む企業の費用を一部、補助する制度です。

「小規模事業者持続化補助金」を略して「持続化補助金」という場合があります。

「持続化給付金」と名称が似ていることから、混同されているケースがありますが、趣旨がまったく異なる制度です。

◆ 新型コロナウィルス対応の融資制度

「もらえるお金」としては、給付金、支援金、助成金、補助金があることをご説明しました。「もらえるお金」は金額が小さかったり、必ずもらえるとは限らなかったりします。
必要な金額の確保のためには、やはり借入が必要です。

新型コロナウィルス対応の融資制度として、知っておきたいのは、主に以下の2つです。

保証協会付融資「新型コロナウイルス感染症対応資金」(保証料等補助型)
日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

(1)保証協会付融資と日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

保証協会付融資「新型コロナウイルス感染症対応資金」(保証料等補助型)と日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」はどちらも無利子などの公的な制度です。下表に概要をまとめています。

種別 保証協会付融資 日本政策金融公庫
名称 新型コロナウイルス感染症対応資金
(保証料等補助型)
新型コロナウイルス感染症特別貸付
融資対象 セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証の認定を受けた方 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
融資限度額 3,000万円 3,000万円+3,000万円
融資期間 10年以内 設備資金 20年以内
運転資金 15年以内
据置 5年以内 5年以内
資金使途 運転資金・設備資金 運転資金・設備資金
融資利率 年1.2%(固定) 1.36%
※3,000万円以内は、当初3年は0.46%
無利子の要件 ・小規模個人事業主 売上高▲5%以上
・中小企業者    売上高▲15%以上

※当初3年間無利息

・小規模個人事業主
・小規模法人 売上高▲15%以上
・中小企業者 売上高▲20%以上
※当初3年間は、3,000万円以下は無利子
担保 無担保 無担保
保証料 0.85%(経営者保証免除対応適用の場合は0.2%上乗せ)
※ 売上高▲15%未満の方は保証料1/2
※ 売上高▲15%以上の方は保証料0
※ 売上高▲5%以上の個人事業主は保証料0
実施期間 令和2年5月1日から令和2年12月31日までに保証申込受付、かつ令和3年1月31日融資実行分まで。

上記の保証協会付融資は、大阪府の場合です。他の都道府県の制度は、名称と金利、保証料は異なるものの、同様の制度があります。

セーフティネット保証4号、セーフティネット保証5号、危機関連保証の違いについては下表の通りです。

(2)セーフティネット保証4号・5号・危機関連保証とは

認定 セーフティネット保証4号 セーフティネット保証5号 危機関連保証
対象者 最近1か月の売上高が前年同月比で20%以上減少。かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期比で20%以上減少が見込まれる方 最近1か月の売上高が前年同月比で5%以上減少。かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少が見込まれる方 原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少。かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少が見込まれる方
保証枠 セーフティネット保証枠 セーフティネット保証枠 危機関連保証枠
融資限度額 2億円
(うち無担保8,000万円)
2億円
(うち無担保8,000万円)
2億円
(うち無担保8,000万円)
融資期間 7年以内 7年以内 10年以内
資金使途 運転資金・設備資金 運転資金・設備資金 運転資金・設備資金
金利 1.2%固定 1.2%固定 1.2%固定
保証料 0.90% 0.80% 0.80%

もともとは、セーフティネット保証4号は地域指定、セーフティネット保証5号は業種指定でしたが、セーフティネット保証4号が全国、セーフティネット保証5号が全業種となったため、売上減少幅の違いだけの制度となっています。

(ただし、セーフティネット保証4号と危機関連保証は100%保証ですが、セーフティネット保証5号は80%保証という違いはあります)

◆ 生命保険・セーフティネット共済・小規模企業共済の貸付も検討しよう!

銀行借入以外の資金調達手段としては、生命保険、セーフティネット共済、小規模企業共済の契約者貸付も利用が可能です。

たとえば、小規模企業共済の「特例緊急経営安定貸付」は、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した契約者へ資金を貸付する制度で無利子です。

小規模企業共済「特例緊急経営安定貸付」
対象者 1か月の売上が前年または前々年比較で5%以上減少した、貸付資格を有する契約者
借入額 50万円~2,000万円(掛金納付月数に応じて掛金の7~9割)
借入期間 借入額が500万円以下の場合は4年。借入額が505万円以上の場合は6年
(いずれも据置期間1年を含む)
利率 0%(無利子)
返済方法 据置後、6か月毎の元金均等払い

小規模企業共済の「特例緊急経営安定貸付」
https://www.smrj.go.jp/kyosai/info/disaster_relief_r2covid19_s.html

◆ いくら借りればいいか?

上記で制度の概要をお伝えしました。上記は大阪府の場合であり、制度変更も多いので、概要のご紹介に留めます。詳細は最新情報を一次情報にてご確認ください。

上記でわかることは、新型コロナウイルス対策として、当初3年は、無利子、保証料0。しかも据置期間(元金の返済が不要な期間)が最長5年という、有利な融資制度が用意されているということです。

では、上記の制度を利用して、いくら借りればいいのでしょうか。
「お金のブロックパズル」で説明します。

通常月の収益構造が下図の企業の例で考えてみます。売上100、変動費40、粗利60、固定費50で経常利益が10とします。経常利益の10はそのまま、借入の返済に充てているとします。(実際には、法人税なども考慮する必要があります)


< 通常月の収益構造 >

売上高
100
変動費 40
粗利
60
固定費
50
人件費
30
その他
20
経常利益 10 返済 10

上記の企業が新型コロナウイルスの影響により、売上が50%減少したとします。
「お金のブロックパズル」の形は以下のように変わります。


< 売上が50%減少したときの収益構造 >

売上高
50
変動費 20
粗利
30
固定費
50
人件費
30

不足額
30
その他 20
返済 10

売上が50%減少したことにより、粗利が50%減の30になり、固定費50を賄えずに、20の損失となります。さらに借入の返済が10必要なので、月に不足するお金は、20に10を足して、30です。

仮に、売上が50%減少する期間が半年とすると、30×6か月=180 が必要な資金額となります。

上記が基本的な考え方です。ただし、どれくらいの期間、どれくらいの売上減少が継続するか、状況が不透明で見込めないということも多いと思います。

その場合は、1年間、仮に売上がなくとも、固定費と返済が可能な金額を確保することをお勧めしています。上記企業の場合は、以下になります。

(固定費50+返済10)×12か月=720

必要な資金額 720 から現時点で保有している現預金を差し引いた金額が借入金額となります。

手元資金を確保した後に実施する事項は下記の3点です。
・ビジネスモデルの再検討
・固定費削減
・数値計画・行動計画の立案・実行

2.ビジネスモデルの再検討

ビジネスモデルの再検討とは、売上が大きく低下している場合、新たな収益確保の方法を考えることです。たとえば以下などです。

① 商圏や顧客層を変更する。
② 提供方法を変更する。
③ 商品を変更する。(新商品企画・新商品開発など)

3.固定費削減

資金調達により、資金確保しても月々のキャッシュアウトの金額が大きいと、先々の資金の枯渇を招きます。資金確保をすると同時に固定費削減策を考える必要があります。たとえば以下などです。

① 広告宣伝費など戦略経費の見直し
② 役員報酬などの減額
③ 家賃交渉


< 売上50%減少後、新たな売上を追加し、固定費削減したときの収益構造 >

売上高
50→60
変動費 20→24
粗利
30→36
固定費
50→40
人件費
30→25

不足額
30→14
その他 20→15
返済 10

4.数値計画・行動計画の立案・実行

そして、必ず必要なことが、数値計画と行動計画の立案と実行です。

「このような不透明な経営状況の中、先の計画は立てられない」
そんなご意見をお聞きします。

逆に、今のような不透明な経営状況だからこそ、計画を立てる必要があります。
平時は、平時は前の年の数字を見ながら、ある程度、経営できます。
今は、前年比なんて数字を見ても意味がない状況です。
平時に増して、計画を立てることが重要と言えるでしょう。

計画がある方が、状況が変化したときに、計画をベースに修正もしやすくなります。

なお、ビジネスモデルの再検討、固定費削減、数値計画・行動計画の立案・実行は、順に行うのではなく、並行実施されることお勧めします。

5.理念の再確認

「有事のときに考えてほしい5つのこと」の5番目は理念の再確認です。
このような有事において、理念を考える必要があるのか。
そう思われる方もおられるかもしれません。

ただ、このような先の見えない状況の中で、大事なことは、判断の質とスピードです。
なぜなら、迷いは何も生み出さないからです。
実行するからこそ結果を生み出すことができます。

何が正解か不正解かわからない状況の中で、判断の質とスピードを上げるには、自分が何を重視するのか。自分の中の優先順位を明確にする必要があります。

つまり価値観や理念です。
有事において、判断の質とスピードを上げるために、自分は何を重視するのか。
改めて再確認されることをお勧めします。

投稿者

この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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