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会社のお金の流れを図式化する「お金のブロックパズル」でできることとは

会社のお金の流れを図式化する「お金のブロックパズル」でできることとは

投稿者
  2018年1月16日

お金のブロックパズル

「お金のブロックパズル」とは、会社のお金の流れを図にすることで見える化し、会計的にはたった2割の知識で、経営判断に必要な8割のことを理解できるようになる経営ツールです。

「お金のブロックパズル」でできることは何でしょうか?
「お金のブロックパズル」とは何かについて解説していきます。

お金のブロックパズルとは

お金のブロックパズルというのは、西順一郎氏の「戦略会計 STRACⅡ」のSTRAC表をベースに、和仁達也氏が考案した図です。

西順一郎氏のSTRAC表は、会社の費用を変動費と固定費に分けて、会社の収益構造を図式化したものです。会社の戦略によって、会社の損益がどのように変わるかをシミュレーションし、戦略を立てるために活用する図です。

STRAC表

和仁達也氏は、その図に減価償却費などの概念をプラスすることで、会社の利益がどのように使われるかまでを視覚的に理解できるようにしました。

お金のブロックパズル

また、固定費を人件費とその他固定費に分解したことで、人件費の配分について、社長が考えを整理したり、社員との意識合わせにも活用しやすくなっている点も特徴です。

社長は、会計の詳しい知識がなくても、この図を書くだけで、会社の収益構造とお金の流れが俯瞰的に把握できるようになります。

これが、「会計的にはたった2割の知識で、経営判断に必要な8割のことを理解できるようになる」という言葉の意味です。

なお、会計の詳しい知識のない社長が会社のお金の流れを俯瞰的に把握するために重要なポイントがあります。それは会計の細かいルールにこだわり過ぎないということです。

会計的な正しさにとらわれ過ぎると、会社のお金の流れを大局的に把握することの妨げになります。コツは“脱完璧主義”です。

お金のブロックパズルの構造

お金のブロックパズルは、7つのブロックからできています。売上高、変動費、粗利、固定費、人件費、その他固定費、利益の7つです。順に説明します。

売上高は、その会社の年間や月間の合計の売上高です。変動費は、売上の増減に伴って変動する費用です。

何が変動費かは、業種によって変わります。卸売業や小売業などでは、売上と仕入代金の増減はほぼ連動します。ですので、仕入代金が変動費です。損益計算書の売上原価の金額が変動費と考えてほぼ問題ないでしょう。

製造業や建設業では、売上高と売上原価は必ずしも連動しません。理由は、製造原価に含まれる、労務費や経費です。

労務費や経費は売上と比例して、増えたり減ったりするわけではありません。ということは、労務費や経費は変動費ではありません。製造業や建設業では、労務費や経費を変動費から除く必要があります。具体的には、製造原価報告書の原材料費と外注費の合計が変動費になります。

売上高から変動費を差し引くと、粗利になります。粗利は、その企業が生み出す付加価値の金額です。売上高に占める粗利の割合を粗利率と言います。

粗利率は、業種によって大きく異なりますし、同じ業種でも、企業によっても違いがあります。

固定費は、売上の増減に影響を受けない費用です。たとえば、社員の人件費、事務所などの家賃、水道光熱費、リース料などがあります。実務的には、費用合計から変動費を差し引いて計算します。

粗利から固定費を差し引いた金額が利益です。

なお、固定費は、人件費とその他固定費に分けておきます。人件費には労務費を含めます。その他固定費とは、人件費以外の家賃、水道光熱費、リース料などです。

1. 売上高 : その会社の年間や月間の合計の売上高です。
2. 変動費 : 売上の増減に伴って変動する費用です。
3. 粗利 : 売上高 - 変動費 で計算します。
4. 固定費 : 売上の増減に影響を受けない費用です。
5. 人件費 : 人件費+労務費
6. その他固定費 : 固定費-(人件費+労務費)で計算します。
7. 利益 : 粗利-固定費で計算します。

ここまでが、基本の7つのブロックです。

お金のブロックパズル

なお、粗利のうち、いくらを人件費に配分したかを労働分配率と言います。

労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利 × 100

上の図では、粗利が70万円、人件費が35万円ですので、

35万円 ÷ 70万円 × 100 = 50%

となることから、労働分配率は50%です。労働分配率について予め社内で合意しておくことで、目標売上高がどのように社員に還元されるかが社員にも理解しやすくなります。

お金のブロックパズルでなぜお金の流れがわかるのか

お金のブロックパズルでは、費用を変動費と固定費に分解します。費用を変動費と固定費に分解することで、売上高の増減によって、利益がどのくらい変わるかというシミュレーションがしやすくなります。

ここまでは、西順一郎氏のSTRAC表と同じですね。違うのは、利益がどのように使われるのかを示すところにあります。

利益について、社員が抱きやすい“誤解”の一つに、“利益とは、売上高から費用を差し引いて残った、余ったお金である”という考え方があります。利益とは、そのような会社に残った、余ったお金なのでしょうか。

利益は、そのような、会社に最後に残った、余ったお金ではありません。なぜならば、利益から支払わなければならないモノがいくつかあるからです。

まずは法人税などの税金です。税金は必ず納めなければなりません。仮に赤字であったとしても、均等割の法人住民税を支払う必要があります。

次に、借入している企業であれば、借入の返済が必要です。借入の返済は、費用ではないので、変動費や固定費には含まれないからです。利益から返済することになります。

さらには、将来の売上を作るための投資として、設備投資も必要です。設備投資のための大きな金額は、そのすべてが費用にできるわけではありません。設備投資のための投資も変動費や固定費には含まれないのです。(ただし、その期の減価償却費は固定費に含まれます)

また、翌期への繰越金も必要です。企業を取り巻く経営環境は常に一定ではありません。たとえば、経営環境が大きく変わって、それまでの売上を維持できないようなことも起こりえます。

売上の多くを依存する得意先の業績悪化によって受注を失うようなこともありますし、台風で床上浸水になって、しばらく営業できないというようなこともあります。

売上がなくても固定費の支払いは必要です。支払いができなくなったために倒産するようなことがあっては困ります。ですので、万が一のために手許にキャッシュを残しておくことも必要なのです。

お金のブロックパズルの大きな特徴は、7つの基本ブロックにプラスして、キャッシュの動きを示していることです。

お金のブロックパズル

具体的には、利益に減価償却費を加算して簡易キャッシュフローの大きさを示した上で、そのキャッシュの使い道を示すように描きます。

「お金のブロックパズル」とは、変動損益計算とキャッシュフロー計算を合体させて、わかりやすく視覚的に示したものです。

変動損益の要素にキャッシュフローの要素を加えることで、お金の流れが把握できる図となっているのです。

なお、利益額をベースにキャッシュフローの金額を把握するためには、減価償却費以外にも、実際は在庫や売掛金、買掛金の増減なども考慮する必要がありますが、図では示しにくいために省略されています。

会計的な正しさよりも、大局的にお金の流れを把握することを優先しているのです。これが“脱完璧主義”です。

お金のブロックパズルを使ってできること

では、「お金のブロックパズル」はどのように活用するものなのでしょうか。

お金のブロックパズルは、会計の知識がない人や決算書の見方が分からない人でも、会社の収益構造やお金の流れを直感的に理解できる点が大きな特徴です。

ですので、まずは、現状の可視化に使えます。お金のブロックパズルを描くことで、数字が羅列された決算書や試算表よりも自社の収益構造が理解しやすくなります。

過去数年の決算書をもとに、それぞれのお金のブロックパズルを描き、自社の収益構造がどのように変化してきたのかを把握することも可能です。

次に、売上高や粗利率、固定費が変化したときに、どのように利益が変化するかというシミュレーションに使えます。売上高をどの程度伸ばすと、利益がどれくらい増えるか、また、スタッフの増員などによって利益がどのくらい影響を受けるのかを事前に把握することで、損益計画の立案に使用することができます。

また、必要な借入返済額、設備投資額などをもとに、必要な利益を算出し、その利益から必要な目標売上高を算出することにも使えます。多くの企業が利益を売上高から費用を差し引いて残る、結果の数値としてしまっています。お金のブロックパズルを使うことで、必要な利益から逆算思考で、根拠ある目標売上高が算出できるようになるのです。

お金のブロックパズル

さらには、直感的にわかりやすい「お金のブロックパズル」を使うことで、社長と社員の立場の違いからの意識のズレを縮めることにも使えます。

「お金のブロックパズル」は決算書の知識のない社員でもわかりやすいので、「お金のブロックパズル」を社内の共通言語とすることで、自社が掲げる目標利益が必要である理由や、自分たち社員の働き方で粗利が左右されることが社員にも伝わりやすくなるのです。

会社の損益状況についての認識が共有化できれば、目標売上高や目標利益の達成のために、どのように行動するかについての議論を深めることにも活用できるようになります。

「お金のブロックパズル」は、企業のお金の流れをわかりやすく視覚化することで、現状分析や目標立案をしやすくし、キャッシュフロー経営を企業に根づかせ、社長と社員の意識のズレを縮める経営ツールなのです。

お金のブロックパズルを使ってできることのまとめ

・会社の収益構造やお金の流れを直感的に理解できる。
・損益のシミュレーションと損益計画の立案に活用できる。
・逆算思考で目標売上高を算出できる。
・「お金のブロックパズル」を社内の共通言語とすることで、社長と社員の立場の違い
からの意識のズレを縮めることができる。
・自社の損益状況を把握することで、目標売上高、目標利益の達成のためにどう行動
するかを考えることができる。

なお、決算書の数字を入力するだけで「お金のブロックパズル」が作成でき、理想形のシミュレーションもできるエクセル様式をご提供しています。以下のページからダウンロード可能です。

また、「お金のブロックパズル」の詳しい使い方は、和仁達也氏の「お金の流れが一目でわかる! 超★ドンブリ経営のすすめ ― 社長はこの図を描くだけでいい!」に詳しく説明されています。

超★ドンブリ経営のすすめ

※なお、「お金の流れが一目でわかる! 超★ドンブリ経営のすすめ ― 社長はこの図を描くだけでいい!」の本の概要を以下の記事でご紹介しています。

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この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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