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自社の独自の強みに注目する「知的資産経営」が組織活性化につながる5つの理由とは

自社の独自の強みに注目する「知的資産経営」が組織活性化につながる5つの理由とは

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  2018年2月10日

組織活性化

知的資産経営とは、自社の独自の強みに注目して業績向上を図る経営手法です。知的資産経営の取り組み方法をもとに、知的資産経営が組織活性化につながる5つの理由について説明します。

知的資産経営とは

「知的資産」とは「企業の競争優位の源泉となる無形の(目に見えにくい)経営資源」を言います。

もう少しわかりやすく説明すると、「顧客から選ばれることにつながる、他社との違い」です。

具体的には、経営理念、人材、技術、技能、組織力、顧客とのネットワーク、知的財産(特許・ブランド等)など、決算書に現れない自社独自の強みのことを言います。

「知的資産経営」とは、知的資産を意識的に活用・強化・育成することで業績向上を図る経営手法なのです。

知的資産経営の取り組み方法

知的資産経営の取り組みで真っ先にするのが、自社の知的資産の洗い出しと、そのつながりを表した価値活用ストーリーの作成です。

なぜ、最初に洗い出しが必要かと言うと、自社の独自の強みが自社に根づいたもので、自社にとって当たり前なものであるほど、ふだんは強みと意識されないことが多いためです。

氷山は、水面上に見えている部分が、全体の1割しかなくて、9割は水面下に隠れているそうです。

氷山

知的資産も同じように、ほとんどがふだんは水面下に隠れています。その隠れている知的資産をまず洗い出します。

そして、この洗い出しの作業は、実はとても楽しいのです。

仕事において、問題点や課題を考えることはあっても、自社のいいところを探すような機会はあまりないのではないでしょうか。

自分たちのいいところを探したり、お互いに口に出すことで、
「ウチの会社っていい会社なんだ」と改めて見直すことになり、モチベーションが高まったりします。

また、このいいところ探しの時に、社員の方に考えてもらったり、意見を出してもらうことで、
「自分は意見を求められている。意見を言ってもいいんだ」という意識が芽生え、それがふだんの仕事でも改善策を考えるなどの主体的な行動につながったケースもあります。

ですので、知的資産経営に取り組む時は、できるだけ経営者お一人でされるのではなくて、社員の方を巻き込んで、いっしょに取り組みをすることが望ましいです。

また、ふだんの仕事では、部署別に仕事が進められていて、社内で情報が十分に共有されていない会社も多いです。

社員の方に集まっていただいて、話し合っていただくことで、いろんな情報が共有化されます。その結果、業務改善につながることもあります。また、経営者と後継者の間で考えのすり合わせがなされるといったケースもあります。

ですので、知的資産経営は、組織の対話とか、組織活性化といった面でも、非常に有効です。

実際の知的資産の洗い出しにはやり方がいくつかあるのですが、大き目のポストイットを用意して

・自社のいいところ
・他社に勝っているところ
・自慢できるところ
・特に工夫しているところ
・お客様に褒められるところ
・ありがとうと言われるところ

を社員の方々に書き出していただくというのが一番シンプルな方法です。

みんなで書くと同じ内容がたくさん出てきて、
「これはみんな同じ認識ですね」と確認し合ったりできます。

また、独自の切り口で意見を書く社員がいることもあります。

そんな場合は
「これはどういう意味ですか」と確認しながら進めることで、お互いが日頃感じていることが共有できて、楽しく進められることが多いです。

書き出したポストイットは、類似の内容ごとにグルーピングしていきます。その後、

・この強みは何によって生み出されているのか。
・この強みがあることでどんな成果を生み出しているのか。

を考えて、前後関係を整理していきます。

前後関係がある強み同士は矢印でつなぎます。強みを矢印でつないでいって、最後に顧客提供価値までつながったものが価値活用ストーリーです。

矢印でつないでいくというのがミソで、矢印がうまくつながらない時があります。

つながらない時は、何かを見落としているということなので、「何を見落としてるんだろう?」と考えることが新たな強みの発見につながることがあります。

また、つないでいく中で、たくさんの矢印の起点になる強みが見つかり、それが自社のコアな強みとわかることもあります。

また、この関連付けの作業と並行して、知的資産の分類もします。

知的資産の分類

分類としては、人的資産、組織資産、関係資産などがあります。

人的資産とは

人的資産とは、経営者や特定の社員に依存している強みを言います。たとえば、社長のリーダーシップ、社長の顔の広さ、ベテラン社員の勘や経験などです。

中小企業の場合は、社長が一番の強みという会社も多いです。また、会社にノウハウがあると言いながら、よくよくお聞きすると、特定の個人の話だったりします。人的資産は、その強みの持ち主が退職すると会社から消えてしまう強みですので、共有や継承の取り組みが必要です。

組織資産とは

組織資産とは、会社の「しくみ」として定着している強みと言います。社内文化、社内風土、習慣、技術、データベース、マニュアル、システム、ルールなどです。組織資産は、人的資産とは異なり、社長や特定の社員が退職したからといって会社からすぐに失われることはありません。

関係資産とは

人的資産と組織資産が会社の内部の強みであるのに対して、社外との関係性により築かれている強みのことを関係資産と言います。独自の仕入ルートがある、技術力の高い協力会社がある、顧客との信頼関係が強い、同業者とのネットワークで情報収集できるなどです。

知的資産に分類があることで、社内の共通言語ができるというのも知的資産経営の面白いところです。

「当社のベテラン職人のノウハウは人的資産」という言い方をすることで、みんなで共有していかないといけないという意識が生まれることがあります。

「当社は関係資産に支えられている」という言い方をすることで、感謝の気持ちが生まれることもあります。

知的資産経営の本質的意義

知的資産経営の本質的意義というのは、言葉の力で現実を再構成することです。

言葉と思考は表裏一体です。言葉がないことは考えられません。言葉があることで、初めて考えることができるようになります。

自社の独自の強み、それまで意識していなかった知的資産を言葉にすることで、初めて会社にとって何を大事にするべきか、何に取り組むべきかがよく見えてきます。

それが見えると、焦点が絞られます。中小企業の場合、ヒト、モノ、カネといった経営資源に制約のある企業がほとんどです。どこかに集中投下しなければ、なかなか成果を得ることもできません。

知的資産経営に取り組むことで、経営の焦点がはっきりします。そうすると、判断基準ができます。自社の大事な価値観や方向性がはっきりして判断基準ができると、意志決定もしやすくなります。

経営者と話をしていて、お聞きするお困りごとの一つに、経営者の方と社員の危機意識のずれといったお話があります。

経営者は「今のままではいけない」、「もっと次のステージに会社を成長させていきたい」と考えておられるのに、社員さんがついてこない。

社員がついてこないので、会社をステップアップさせていくことができずに、フラストレーションがたまる。そんなお話です。

知的資産経営では、社員とともに取り組みを進めることで、社内の意識合わせができますし、共通言語もできます。

知的資産経営に取り組まれた感想として
「会社の方向性が明確化できたことはもちろんよかったが、一番よかったのは、社員みんなが、なぜそれをしなければならないのかという根本を共有できた。それが一番よかった」
とお聞きしたこともあります。

知的資産経営は、知的資産という考え方で会社を整理し直して、焦点をはっきりさせ、判断基準を明確化し、社内の意識合わせをすることでコミュニケーションの土台を作る。

そんな経営の手法なのです。

知的資産経営が組織活性化につながる5つの理由まとめ

1.自社のよいところに着目することで、社内にポジティブな雰囲気ができる。
2.取り組みの過程で対話することで、社内のコミュニケーションが活性化する。
3.取り組みの過程で対話することで、部署間など社内での情報共有が促進される。
4.社員に意見を求めることで、社員が自分で考えるようになり、社員の主体性や自立心が育つ。
5.自社の価値観や方向性を明確に言語化することで、社内の意識合わせができ、共通言語ができる。その結果として、コミュニケーションの土台ができる。

※価値活用ストーリーの詳しい説明については以下の記事をご参照ください。

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この記事を書いた人

キャッシュフローコーチ®。経営数字と理念の専門家として、経営数字の見える化による意志決定支援と、社員が自律的に動き、成果が生まれるしくみ作りに取り組んでいる。 https://www.officeair.net



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